WINTERSUN「WINTERSUN JAPAN TOUR 2017 @ 下北沢GARDEN」

WINTERSUNの初来日に行ってきました!

 

■セットリスト
01.Awaken From The Dark Slumber (Spring)
02.Winter Madness
03.Beyond the Dark Sun
04.Death and The Healing
05.Sons of Winter and Stars
06.Loneliness (Winter)
07.Starchild
08.Eternal Darkness (Autumn)

 

En.
09.Time

 

WINTERSUNの前にも2バンドほど出演していたのですが、仕事がおしたためWINTERSUN開始ギリギリくらいに到着。
10分前後の長尺な曲が多いため、曲数は9曲ですが1時間半の充実したセットリストでした。

 

新作アルバムの1曲目からライブもスタートし、いきなりの2曲目で名曲「Winter Madness」。
サビの「Winter!!」での盛り上がりは凄まじく、コーラスも会場での一体感を感じられる合唱となりました。
演奏はとにかく素晴らしいのひとことで、凍えるようなサウンドとリフからの流麗なギターソロには圧倒されっぱなしでした。Winter Madnessのソロもイングヴェイ風の速弾きパートを含んだ複雑なものなのですが、凄まじく粒の揃った切れの良いプレイをきめており、驚くばかりでした。

 

「Sons of Winter and Stars」後半での民族的なツインリードのメロディは是非ともライブで聴きたかったパート。もちろんバッチリと決まっていました。
ヤリはヴォーカルに専念していましたが、朗々としたクリーンと荒々しいシャウトを巧みに使い分け、楽曲の世界を再現していっていました。また、各所で観客を煽り、会場内でのよい相乗効果が生まれていたように感じました。
「Loneliness」でしっとりしたあとは攻撃力の高い「Starchild」「Eternal Darkness」で本編終了。

 

アンコールは「Time」。あっという間のライブでした。
平日ということもあり、直前まで行けるか悩んでいたのですが、結果として行って本当に良かったと思えるライブでした。 

Rhapsody「20th Anniversary Farewell Japan Tour 2017 @ TSUTAYA O-EAST」

Rhapsodyの来日公演に行ってきました!

 

■セットリスト
00.Epicus Furor
01.Emerald Sword
02.Wisdom of the Kings
03.Eternal Glory
04.Beyond the Gates of Infinity
05.Knightrider of Doom
06.Wings of Destiny
07.The Dark Tower of Abyss
08.Riding the Winds of Eternity
09.Symphony of Enchanted Lands
10.Drum Solo(by Alex Holzwarth)
11.Land of Immortals
12.The Wizard's Last Rhymes
13.Bass Solo(by Patrice Guers)
14.Vocal Solo(by Fabio Lione)
15.Dawn of Victory

 

En.
16.Rain of a Thousand Flames
17.Lamento Eroico
18.Holy Thunderforce
19.In Tenebris(Finale)


かつてRhapsody(of fire)にて活躍したメンバーが集まり、名盤の2nd再現をメインに据えたツアーという非常に胸が熱くなる催しでした。やはり見どころはVoのファビオ・リオーネとGtのルカ・トゥリッリのリユニオン。もうこれが本物のRhapsodyってことでもいいんじゃないかな…。

 

仕事終わりで急いで向かいましたが、まずまずの埋まり具合。バックドロップに描かれたドラゴンがかっこよく、期待を煽ります。
2nd再現だけあって、いきなり「Emerald Sword」でスタート。これはシンフォニックメタルの教科書のような楽曲で、いきなりクライマックスのような盛り上がりでした。サビでの「フォーザキーン」の大合唱は心地よかったですね。

 

合間にKnightrider of Doomを挟みながらも一気に2ndを駆け抜けるセットリスト。正直あっという間すぎました。中でも「Symphony Of Enchanted Lands」はとても素敵でした。ファビオの歌唱も好調で、勇者的なカッコいい声色、オペラティックな声色、ガナり声と様々なキャラクターを使い分けながらも常に力強い歌を聴かせてくれました。ギターのルカはとにかく元気で、走り回ったりギターを大きすぎるアクションで弾いたり叩いたりと、観ているこちらも楽しくなりました。

 

演奏自体は同期の音量が大きく、ギターの音量はやや小さめに感じましたが、それがかえってシンフォニックな雰囲気を際立たせていました。ベースのパトリスとドラムのアレックスも非常にうまく、特にパトリスのタッピング、スラップを織り交ぜたテクニカルなフレーズには見惚れました。

 

ドラムソロでは観客の手拍子とドラムのフィルを交互に演奏したり同時に演奏したりというパフォーマンスでしたが、手拍子とドラムが完全にシンクロしていたのは笑いました。みんな訓練されていますね。


再現の後はこれまた名曲の「Land of Immortals」でクサいメロディに悶絶し、続く大曲「The Wizard’s Last Rhymes」ではドヴォルザークのメロディを大胆に取り入れたメロディにこれまたノックアウト。技巧的なベースソロの後はファビオによる「誰も寝てはならぬ」のサビのパフォーマンス。やはりイタリアはオペラの土壌があるからか、こうしたクラシカルなことをやっても自然なんですよね。

 

あれよあれよとアンコール最後の「Holy Thunderforce」まで駆け抜け、まさに夢のような体験でした。
Rhapsody of fireやLuca Turilli's Rhapsodyはあまり聴いていなかったけど、これを機に集めてみようかな。

筋肉少女帯「Future!」

 

Future! (初回限定盤A)

Future! (初回限定盤A)

 

 
01.オーケントレイン
02.ディオネア・フューチャー
03.人から箱男
04.サイコキラーズ・ラブ
05.ハニートラップの恋
06.3歳の花嫁
07.エニグマ
08.告白
09.奇術師
10.わけあり物件
11.T 2

 

再結成してから11年目。精力的に活動してくれている筋少の新作が発売されました。
前作「おまけのいちにち」は昭和感を強く感じるノスタルジックな雰囲気にあふれた名盤でしたが、今回はタイトルが「Future!」ということで、未来へ視線を向けた作品になっています。

 

今年の春に「猫のテブクロ」の完全再現ライブをやった感触がよかったらしく、当初は収録順のまま完全再現できるようなアルバムを、という構想もあったようです。そのかいあってかバラエティ豊かな曲が集まり、起伏に富んだ内容にできたのでカバー曲は入れなかったとのこと。

 

第一印象で感じたのは、「攻めているなあ!」ということ。
特に大槻ケンヂの歌詞には驚きました。ここまで尖った歌詞を出してくるとは。
サイコキラーズ・ラブ」と「告白」は、このテーマで書くとは想像だにしなかったので、衝撃でした。

 

サウンド面では内田さんの楽曲の飛び道具感が増し、アルバム全体の幅を広げているように思います。
エニグマ」はプログレッシブ・ロックからの影響を強く感じさせる楽曲で、楽器隊のテクニカルさ、あえて重ね録りを抑えたライブ感のある音像、意味不明な歌詞とたまらない内容。

 

インストゥルメンタル曲である「奇術師」も聴きどころ。
よくある間奏曲のようなものではなく、がっつりインスト曲というのは筋少では珍しいのでは。
橘高さんのギターの泣きがとにかく素晴らしく、中間部の三柴さんのピアノと相まって感動的な楽曲です。

 

曲順は大まかに本城さん→内田さん→橘高さんの順で構成されており、キャッチー→絡め手→メタルというライブ感ある流れで一気に聴き通せるのもうれしい所。

 

現在のバンドの充実ぶりがあらためて確認できる、最高のアルバムです。
これはライブも観なくては。

 

 

「LOUD PARK 2017 @ さいたまスーパーアリーナ 二日目」

今年も行ってきました、LOUDPARK
2日目について。

 

■10/15(日)
・BLACK EARTH
・APOCALYPTICA
・DEVIN TOWNSEND PROJECT
CRADLE OF FILTH
・MESHUGGAH
・SABATON
・MICHAEL SCHENKER FEST

 

・BLACK EARTH
シークレットアクトがあると発表されたとき、BLACK EARTHでは?という期待の声が飛び交ったものですが、タイムテーブルで朝イチだとわかった時にその期待は半ば諦めに変わっていました。しかし、もしこれでBLACK EARTHだったら一生後悔するな、と思って間に合うように会場入り、アリーナ後方で待機することにしたのでした。
そして期待は現実となり、私はBLACK EARTHを観ることができたのでした。
「BLACK EARTH」のイントロと共にステージにバンドロゴが掲げられていく光景は忘れられません。
セットリストも「Bury Me An Angel」から始まって「Silverwing」、「Diva Satanica」や「Fields of desolation」まで聴きたい曲はすべて聴くことができました。
Voヨハンの声も出ており、Silverwingで空を飛ぶポーズもバッチリ。Fields of desolationではアウトロのアモット兄弟のツインリードに悶絶の涙を流したのでした。ライブ後は緊急サイン会が実施。LOUDNESSを断念し、そちらに参加してきたのでした。

 

 

・APOCALYPTICA
大学の管弦楽サークルでチェロをやっていた頃に知って好きになったバンド。チェロ4人とドラムという変速編成でメタルを演奏している人たちですが、今回はデビューアルバムのメタリカカバーをメインにしたセットリストでした。本音を言うと彼らのオリジナル曲も聴きたかったのですが…。
演奏はすばらしく、チェロらしい摩擦感のあるアタックでゴリゴリと刻まれるリフ、クラシックならではのアゴーギグを聞かせた表現など、メタルとクラシックのいいとこどりといった印象でした。
もともとメタリカは、主題となるリフを軸に変形させたり拡大させたりと、発想がクラシック的な部分があるバンドなので、生で聴くと想像以上にしっくりきていました。
もっと長い時間聴いていたかったですね。また来日してほしいな…。

 

・DEVIN TOWNSEND PROJECT
ご飯を食べたり物販を見たり移動したりしながら観ました。
高クオリティにまとまった演奏でVoのクリーンとグロウルの使い分けも多彩と、面白かったのですが、ちょっと予習不足だったかな…。

 

CRADLE OF FILTH
はじめて聴きました。ジャンル的にはシンフォブラック辺りとのことで、そういうサウンドを想像していたのですが、いきなりのホイッスルボイスに度肝を抜かれました。演奏自体もとても良かったのですが、そのホイッスルに完全に持っていかれました。あんなに高頻度で出しているのに1時間のライブの最後までホイッスルが衰えないのは驚異的です。ちょっとワンマンも観てみたいですね。とりあえず新作のCDを買いました。

 

・MESHUGGAH
とても楽しみにしていました。セットリストは最新作からの曲がやや多め。楽器によってリフの拍子が異なるので聴衆もノリ方が千差万別で面白かったです。またこのバンドでは照明のスイッチングも凄まじく、ギターリフに合わせて点滅したりと、凄いけど情報量がありすぎて飽和するような感覚でした。
必殺のBleedも聴くことができて大満足です。MCは「叫んでみろ」など全編日本語で、嬉しかったです。
しかし演奏が本当にうまいこと!音源を流していると言っても通りそうな精度の演奏でした。

 

・SABATON
2015年もLOUDPARKに出演し、日本での人気に火が点いたバンド。
私はその時はサブステージのAT THE GATESを観ていたため、見逃してしまい悔しい思いをしました。
やっと観ることができて感激です。フロアも尋常でない盛り上がりを見せていました。
いきなり「Ghost Division」で始まり例の拳を振り下ろす動きを生で観ることができたのは感無量でした。
「Swedish Pagans」の前のGtとのやりとりなど、Voのヨアキムはシンガーである以上にエンターテイナーだと強く感じさせるパフォーマンス。後半では「SHIROYAMA」でサイレントヒル山岡晃さんがギターで参加するなどサプライズもありました。
どの曲ものりやすく、コールアンドレスポンスがあり、ライブ向きなバンドですね。楽しかったです。

 

・MICHAEL SCHENKER FEST
去年のライブをおさめたCDの内容がとても良かったので、この日もかなり期待していました。
そして期待通り、いや期待以上の素晴らしいステージでした!
ステージに現れたマイケルは終始ニコニコとしており、ヘッドを客席に向けて狙撃するようなポーズをとりながら弾いたりとサービス精神も抜群。冒頭の「Into The Arena」から異世界に連れて行ってくれました。
生で聴くマイケルの音色は音源で聴くよりもっと暖かく、かつキレのあるサウンドだったように思います。
セットリストは去年の来日時のものとほぼ同じ。まずはゲイリー・バーデンが登場してMSG初期の楽曲が演奏されました。「Cry For The Nations」でのサビを観客に歌わせたりと、ゲイリーがきつそうな分、参加型のライブの様相で、これはこれで一つのありかただなと思いました。マイケルのギターをバックにみんなで合唱なんて、そうそうできませんからね。
次はグラハム・ボネットが白スーツで登場。驚いたのが声量。とにかくハリのあるパワフルな歌声!さすがに最高音はきつそうでしたが、70近いなんて信じられません。「Dancer」ではゲイリーとロビンがコーラスで参加し、真ん中でグラハムが歌うというなんとも幸福な光景を観ることができました。「Assault Attack」中間部の泣きのメロディも絶品。
そして「Captain Nemo」も最高!バンドにぴったり合いつつもゆったりと歌うギター、そして分散和音も完璧に決まり、音源よりも精度が高いのでは?とさえ思える名演でした。
ロビン・マッコーリーはMSG後期とUFOの楽曲。ロビンもとにかく声が出ること出ること。全体としての精度が一番高かったのはロビンのパートでしょう。最後の「Rock Bottom」は特に圧巻で、10分くらいやったのではないかと思われる中間部のソロでは何度も「終わらないで欲しい」と思わされました。
最後はシンガー3人が集まって名曲「Doctor Doctor」で終演。マイケルは最後まで絶好調で、ほんとうに良い物を観ることができました。

 

今年もけっこう知らないバンドもあったのですが、どのバンドも素晴らしいライブで楽しむことができました。
やっぱりラウパは最高ですね!

「LOUD PARK 2017 @ さいたまスーパーアリーナ 一日目」

今年も行ってきました、LOUDPARK
2日券で準備も万端。

まずは1日目について。

 

 

■10/14(土)
・BEYOND THE BLACK
・L.A.GUNS
・ANTHEM
・BRUJERIA
OPETH
・OVERKILL
ALICE COOPER
・EMPEROR
・SLAYER

 

・BEYOND THE BLACK
女性ヴォーカルのバンド。MCでは日本語で「日本、来れて、うれしい」と言っておりほほえましかったです。
へヴィな曲もあり、モーターヘッドカヴァーのピアノ弾き語りありと緩急のついたステージで好印象でした。

 

・L.A.GUNS
つい最近、復活新作アルバムが出たL.A.GUNS。
曲もパフォーマンスもとてもかっこよく、楽しんで観ることができました。

 

・ANTHEM
日本のバンド。さかもとえいぞう在籍時は少し聞いていたのですが、ライブを観るのははじめてでした。
柴田さんの存在感あるベースプレイと、ジャパメタ感のあるメロディは安心感がありましたね。

 

・BRUJERIA
目当てだったバンド。
覆面でマ◯リファナと連呼するという、ともすれば悪ふざけにも見えるコンセプトを高い演奏力と有無を言わせぬ攻撃性で仕上げたようなバンドで、音楽のとっつきづらさの割にはMCや動きといったパフォーマンスにより、はじめて聴いたような人たちにもかなりウケていたように思います。
中でも某大統領を批判する曲については衝撃的なTシャツのデザインも相まって凄い盛り上がりでした。
演奏後は楽しげにマ◯リファナ讃歌を歌って終了。期待通りの素晴らしいライブでした。

 

OPETH
最近の作品はプログレ成分が強いOPETH。セットリストも最新作から数曲ありましたが、後半ではデス成分を含んだ時代の作品も披露。10分越えの曲も多く、持ち時間内では5曲しか演奏できずにちょっと物足りなさを感じました。演奏もすばらしく、いつまでも聞いていたいような心地よさでしたね。ぜひワンマンでも観てみたくなりました。

 

・OVERKILL
スラッシュメタルはけっこう好きなのですが、ほぼ聴いたことがありませんでした。
ギターの音のザクザク感はこれぞスラッシュといった感じで素晴らしく、Voも高精度で感動しました。
疲れていたため、アリーナ後方で座ってみていたためあまりじっくりとは聴けていないですが、このあと音源も掘ってみようと思います。

 

ALICE COOPER
今年69歳のアリス・クーパー。これは見逃せないと思っていました。
音源では少しぬるいなと感じていたのですが、ライブではパフォーマンスと相まって素晴らしいショウを魅せてくれました。
まず目を奪われたのはそのステッキさばき。くるくると回してみたり、振りかざしてみたりとどの動きもキレキレで、まったく歳を感じさせません。また、ライブの合間でタイミングよくメンバーの短いソロタイムが挿入され、そこでアリスの衣装替えが行われるという計算された進行(喉の回復も兼ねていたかも?)。
ギミックも多数あり、ステージ後方のおもちゃ箱からは衣装やドールなどさまざまな舞台装置が飛び出しました。
中でも印象的なのは電気刑とギロチンのギミックでしょう。電気刑に処されたら巨人化して現れたり、ギロチンに処されたら首を持って登場したりと、まさに悪夢の世界観が十二分に表現されていました。
ギロチンに処されるときの表情なども完成されていましたね。とても満足度の高いライブでした。

 

・EMPEROR
2ndアルバムの完全再現に数曲追加したセットリスト。
ちょっと予習が足りていなかったのが悔やまれますが、イーサーンをはじめ気合の入ったプレイで圧倒されました。アリスでなごんだ空気が一気にブラックに塗りつぶされていくのはある種、痛快ですらありましたね。

 

・SLAYER
1日目のトリはスレイヤー。2015年でも一度観ているのですが、そのときは初ラウパで体力を使い切り、スタンド席で半ば寝ながら観ていました。今年は途中での温存もバッチリで、しっかり堪能することができました。
最新作のREPENTLESSで口火を切った後もところどころでWar Ensembleのようなキラーチューンをはさみつつの圧巻のパフォーマンス。ケリー・キングのリフはやはりシビれますね。ゲイリー・ホルトのソロも素晴らしかったです。最後はRaining Blood、Chemical Warfare、Angel Of Deathの必殺の三連コンボ。Angel Of Death冒頭トム・アラヤのの絶叫は、前回もそうでしたがあの高さが今も出ることが驚異ですし感動しますね。ポール・ボスタフもやはり多少足技が弱いと感じたものの、かっこいいアクションのドラミングでした。
いいトリだったと思います。
そろそろ、ゲイリーの音楽性も入れた新曲とか、聴いてみたいですね。

 

観たバンドすべてが楽しく、とてもよい1日目だったと思います。

森下唯「アルカン ピアノコレクション3 《風のように》」

森下さんのアルカンアルバムが今年も発売されました。
今までの「交響曲」「協奏曲」と合わせ、今回の5曲で「すべての短調による12の練習曲」は完結となります。

 

アルカン ピアノ・コレクション3《風のように》

アルカン ピアノ・コレクション3《風のように》

 


まずは「すべての短調による12の練習曲」の第1曲~第3曲。
「風のように」は難易度と指定テンポが相まって、なかなかタイトル通りの表現をするのが困難な楽曲という印象でしたが、森下さんの演奏は早く軽く、なめらかでまさに「風」をイメージさせられました。
「モロッシアのリズムで」は舞曲らしい3拍子。テンポをキープしつつ適度に揺らすという塩梅がとても心地よく、自然です。
「悪魔的スケルツォ」はその名の通り。力強いパッセージはもちろんのことですが、後半での弱音による早いパッセージの連続も聴きどころです。森下さんの演奏は弱音でも神経がいきとどいており、繊細かつ力強い印象を受けます。

 

「悲愴な様式による3つの曲」はアルカン初期の作品ですが、中でも「風」は比較的有名。連なる連符による風の表現と、長い音符で奏されるメロディーの対比が美しい楽曲です。この曲は私も大好きな曲。生演奏を聴いたときにも感じたのですが、森下さんは強弱の描き分けによる声部の立たせ方が絶妙で、聴こえてほしいパートがしっかり聴こえるんですよね。楽曲本来の魅力を伝えたいという気持ちが表れているかのようです。


そして「すべての短調による12の練習曲」の第11曲~第12曲。
「序曲」は14分に及ぶ曲で、オーケストラのような豪華な響きが印象的。演奏も各パートのキャラクターがよく描き分けられていて、楽しく聴くことができました。
最後を飾るのは「イソップの饗宴」。最初に提示される主題が様々に変奏されていく曲で、中には演奏不可能なのではと思えるような難易度の箇所もあるのですが、ここで聴くことができるのは「技巧」ではなく「音楽」であることに嬉しい驚きを感じました。
演奏者の都合などではなく、「どう演奏されるのが最も適切か?」を突き詰めた演奏と思います。そして、それを表現できるテクニック。感動しました。

 

タイトル付きの曲が多いこともあり、もしかしたら3作品の中で今作が一番とっつきやすいかもしれません。アルカン入門に最適の一枚です。ショパンやリストが好きだけどアルカンは知らない…という方はこのアルバムから入ってみては如何でしょうか。

 

 

東京佼成ウインドオーケストラ「第135回定期演奏会」

吹奏楽を聴いてきました。


00.歌劇「リナルド」から「私を泣かせてください」(G.F.ヘンデル / 大井剛史・中橋愛生)
01.モーニング・アレルヤ冬至のための(R.ネルソン)
02.メタモルフォーゼンR.シュトラウス / 中橋愛生)
03.吹奏楽のための天使ミカエルの嘆き(藤田玄播)
04.この地球を神と崇める(K.フサ)

TKWOの定期演奏会に行ってきました。
指揮は正式者の大井剛史さん。今まではTKWOとの定期演奏会では吹奏楽のために書かれた作品を取り上げてきましたが、今回は編曲作品が選曲されていました。

ヘンデルは0曲目の扱いということで、1曲目のネルソンと続けて演奏するため、拍手は遠慮いただきたい旨のアナウンス。
大井さんのアイデアをもとに中橋さんがオーケストレーションしたというヘンデルは各パートに少しずつメロディを受け持たせつつ、穏やかで澄んだサウンド。この重いプログラムにふさわしく、上品なオープニングとなりました。

 

ネルソンのモーニング・アレルヤフレデリック・フェネルが広島での体験をもとに委嘱したという作品。広島という題材から連想されるような直接的な内容ではなく、あくまでフェネルが体験したという朝日の印象が描かれています。後半部でのにぎやかなパートでのきらびやかなサウンドはさすがTKWOといったところで、金管が鳴り響いてもどこか優しさが感じられるのは素敵です。
コンサートマスターの田中さんの入団直後頃に初演された曲とのことで、フェネルのエピソードは11月、冬の始まりであるのに対し、タイトルには冬至のためとある理由について、当時の団員から「昼と夜の長さに関連して」という意図があるらしいと聞いたとか。

 

前半最後はシュトラウスの「メタモルフォーゼン」。30分の大曲です。もとは弦楽器23パートのために書かれた曲ですが、今回は管楽合奏(コントラバス有り)の編成で。もとの編成よりも多彩な楽器の種類があるとはいえ、弦楽器特有の響きであったり奏法でイメージされる楽曲のため、管楽合奏で取り組むのは非常にチャレンジングだったのではないかと想います。実際、編曲に際しても苦労はあったようですが、弦楽器ならではの奏法(トレモロやピッチカート)は意外と少なく、そういった意味では音楽的な要素に正対することができたとの話も(アフタートークにて、中橋さん)。

 

木管楽器主体での序盤ではテナーサクソフォンの松井さんの上行系での音色が印象的。次第に金管楽器も加わり、各種楽器のソロを経由して最後まで、響きがうつろい続ける様は圧巻でした。正直、1度聴いただけでは把握しきれない情報量で、これは録音でじっくり聴きたい所…。音源化、期待したいなあ…。
編曲では金管の意味をどのようにもたせるかという部分に苦心したとのことで、木管のサウンドから始まってシグナルのような音形の部分から金管主体サウンドへの変容、そしてその崩壊というストーリーを想定したとのことです。中間部ではトロンボーンのソロもあり、ここではトロンボーンの宗教的な意味合いにも着目したとのことでした。

 

休憩を経て、後半は藤田玄播さんの名曲「天使ミカエルの嘆き」。曲自体は以前から知っていたのですが、実演を聴くのははじめてでした。CDなどで聴いたときはなかなか弱奏部での響きなどまでは聴き取れなかったりするので、この手の楽曲は実演だと理解のしやすさが段違いです。冒頭でのクラリネット微分音などにはこの後演奏されるフサなどからの影響も感じ取れます。「戦い」のパートでは熱くなりすぎず、神話を聞かされるかのように「天上の戦い」が描かれました。「嘆き」パートではソロが素晴らしく、オーボエソロ、トランペットソロはとても印象的でした。大井さんの音楽は嘆きや祈りといった感傷的なパートでも常にどこか冷静さというか、理性を感じることが多く、そこが魅力だとも感じています。この日も基本的にはそのとおりで、楽譜に忠実であるという「らしさ」は保っていたのですが、やはり思い入れと言うか、メッセージ性のようなものをいつもより強く感じたように想いました。

 

最後はカレル・フサの「この地球を神と崇める」。
曲は3つの楽章からなり、1楽章の「Apotheosis」では微分音などの特殊奏法、打楽器などの効果により不安定な響きが描かれます。宇宙空間をイメージしたサウンドということで、木管低音群の不穏な音色が効果的に使われます。バスサックス、コントラバスクラリネットコントラファゴットなど。シロフォンの活躍も全楽章通してすばらしかったです。


2楽章の「Tragedy of Destruction」はまさに圧巻。人間の蛮行によって地球が破壊されていくという衝撃的な描写がなされる楽章ですが、ここでの打楽器群による行為はまさに「破壊的」。TKWOでこのような強烈なエッジの音を聴いたのははじめてです。合奏体がまさに一体化したかの如くの音圧、そして一糸乱れぬ音形からは並々ならぬ気迫を感じました。そしてこれが長いこと!このテンションを10分近くも保ってしまうのはもはや驚異的です。聴いているだけで消耗するくらいですから、演奏にあたっても相当、消耗されたことでしょう。


3楽章「Postscript」では破壊後の地球が描かれます。ここで感じられるのは虚無感です。
静かで暗い響きの中、「this beautiful earth」という言葉が2回つぶやかれ、曲は終演となります。1回目の「this beautiful earth」はサックスパート等、2回目はこの呟きのためだけに奏者がアサインされていたようでした(ピッコロ奏者が一列目で、女性が望ましい、という指定があるようです)。


演奏後はしばし静寂が会場を包み、そして拍手へ。ここちよい静寂でした。

演奏会全体を通じて「平和への想い」に満ちたとても重厚なプログラミングでした。
ここまで徹底した表現を実現したTKWOと大井剛史さんには敬服しました。
今までも大井さんは吹奏楽の表現がどこまで出来るのかという可能性を聴かせてくれていましたが、今回はさらに吹奏楽でどこまで伝えられるのかという領域までを見せてくれたように感じました。

 

音楽家のメッセージは、やはり音楽でこそ伝わると思います。
今回も演奏することによるメッセージというより、溢れ出るメッセージのようなものを感じました。これは言葉にしてしまえばともすれば陳腐化してしまうようなメッセージですが、音楽なら感情として、あるいは情景として伝わるのだなとあらためて感じました。

 

ヘンデルの曲の冒頭は「A」の音。そしてフサの最後の音も「A」の音で、自然音のAを使って循環した、まるい地球をイメージしたとのことでした。
演奏会自体が作品となった、稀有な体験だったと思います。

 

これだけの演奏会だったのに、観客の入りがあまりよくなかったのはつくづく惜しいと思いました。この日の演奏は記録としての意味合いでも、ぜひ音源化してほしいものです(2枚組になってしまいそうですが…)。