ベストアルバム2019

正直、サブスクで音楽を聴き始めた結果どれを聴いてどれを聴いてないのかいまいちわからなくなってきてしまっているのですが、それでも今年もやります。

 

10.Billie Eilish「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」

メインの守備範囲がメタルとクラシックである私にもこのアルバムは届いてきました。すっきりしたサウンドに見えながらもうごめく低音であったりの歪さに惹かれます。

 

09.Tool「Fear Inoculum」

CDが全然買えないでおなじみのTool。油断してたら初回の映像を映すなにかがおまけでついているタイプのCD買い逃しました。長大な楽曲が並びますが繰り返されるリフに心地よく酩酊していく感覚が味わえます。

 

08.Opeth「In Cauda Venenum」

プログレモードに入ってからの作品の中でも特に良いのではないでしょうか。中期OPETHが醸していたダークな空気感と近年のOPETHが纏っていたプログレッシブロックがきれいに融合し、さらに一歩進んだ印象。ライブでも素晴らしかったですね。

 

07.ドレスコーズ「ジャズ」

毎回いろんなチャレンジを聴かせてくれるドレスコーズの新作は非常に挑戦的なタイトルでしたが、そのままのイメージのジャズというわけではなくもっと深いところでの表現が目指されたもの。いや、確かに楽器はジャズで使われるものも多いですが…。特に歌詞表現などはどんどん深化してきており、恐ろしさすら感じます。

 

06.花譜「観測」

去年から続くVtuberの流れの中でも歌手、アーティストとして軸をしっかりもった活動をしてきた花譜。初のワンマンライブと共に発表されたこの作品は現在のVtuber界の空気をよくパッケージしていると思います。ボーカロイドPであるカンザキイオリによる楽曲群も秀逸。

 

05.長谷川白紙「エアにに」

たっぷり大盛り、なのにさらっと聴きやすい。前作も面白くはあったのですが今作は完全に抜けたなという感じです。ジャズ的なオシャレコードの洪水も聴きどころではありますが、リズムと音の切りによる独特の緊張感の構築に耳を奪われます。到底1回では把握しきれない情報量ですが、聴き込んで理解したくなる名盤。

 

04.Twilight Force「Dawn Of The Dragonstar」

円満とはいえないVoの脱退劇がまだ記憶に残るトワフォですから、新作が出るといってもちょっと乗り切れないな、果たして僕は応援できるのだろうか。そう思っていたことは確かです。しかし人間の意思というものは弱いもんで、アルバムを聴き終わるころには再度トワイライトキングダムの住民としてクサメロの快楽に身をゆだねる自分の姿があったのでした。

 

03.Vltimas「Something Wicked Marches In」

Morbid AngelもCryptopsyも好きなんだけど、最新作はそこまでピンと来なかったんだよな~とさみしい思いをしていたデスメタルリスナー。そこに現れたのがMorbid Angelでかつて邪悪な声を聴かせてくれたデヴィッド・ヴィンセントやCryptopsyで鬼神のごときブラストビートを聴かせてくれているフロ・モーニエらによる新バンド。楽曲がCryptopsyほどプログレッシブではないおかげで、フロのドラムのストレートな暴虐性がより強調され、これが聴きたかったんだよというフレーズが目白押し。もうこのバンドがメインでもいいのよ。

 

02.人間椅子新青年

デビュー30年からの世界的ブレイク。日本のおどろおどろしいメタルが世界に認知されたのは嬉しいことです。Youtubeでバズった「無情のスキャット」も素晴らしいですが、全体的に不協和音のアルペジオが歪んだ鏡の世界をえがく「鏡地獄」など、表現力豊かなギターが炸裂。彼らの作品群の中でもかなりクオリティが高いアルバムに仕上がっています。

 

01.People In The Box「Tabula Rasa」

好きなバンドが期待以上の新作を出してくれる幸福はなにものにも代えがたいものです。去年のKodomo Rengouでは彼らの集大成のような作品と思いましたが、さらに推し進めた内容が出てくるとは。かつてよくあった超絶ギターリフなどはぐっと減り、サウンドや展開の妙で聴かせる楽曲群。特に「いきている」のシンプルながらリズム遊びにあふれた展開は唸りました。「まなざし」に顕著な歌詞の自由さも魅力。

 

10.Billie Eilish「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」
09.Tool「Fear Inoculum」
08.Opeth「In Cauda Venenum」
07.ドレスコーズ「ジャズ」
06.花譜「観測」
05.長谷川白紙「エアにに」
04.Twilight Force「Dawn Of The Dragonstar」
03.Vltimas「Something Wicked Marches In」
02.人間椅子新青年
01.People In The Box「Tabula Rasa」

 

OPETH「In Cauda Venenum Tour in Japan 2019 @ ZEPP TOKYO」

OPETHの来日を観てきました。

 

■セットリスト
01.Livets trädgård
02.Svekets prins
03.The Leper Affinity
04.Hjärtat vet vad handen gör
05.Reverie/Harlequin Forest
06.Nepenthe
07.Moon Above, Sun Below
08.Hope Leaves
09.The Lotus Eater
10.Allting tar slut

 

En.
11.Sorceress
12.Deliverance

 

デス色が弱まり、プログレ色が強かった近年のOPETH作品の中でも、最新作はよりダークな世界観を演出し、デスに頼ることないヘヴィさが極まってきていた印象のOPETH。ライブもその最新作からの曲を多めに含みつつ、中期以降のアルバムから1曲ずつ選曲されたセットリストでした。

 

LOUD PARKで見た時も感じましたが、OPETHのライブはどの曲がいいとかではなく最初から最後までずっと心地よいというのが面白いところです。激しいパートや穏やかなパートが楽曲内でも移り変わるのですが、これが潮の満ち引きを観ているような心地よさを演出します。

 

Reverie/Harlequin ForestやDeliveranceの終盤のキメにつぐキメのリズムの連続は特にライブで映えており、Hope Leavesでのしっとりとした空気からの荒々しいThe Lotus Eaterも非常にかっこよかったです。執拗なほどのリフの反復にもかかわらず、飽きさせず楽しませてしまう演奏力と構築力は凄すぎましたね。照明も天井や壁を照らしたり、灯りのように見せてみたりと見せ方も巧みでした。

 

まだまだライブで聴いてみたい曲は沢山あるので、また来日してほしいですね!

 

 

メダロット「MEDAROCK LIVE 2019 第2部 @ 渋谷ストリームホール」

メダロットのライブに行ってきました!

 

 


メダロットゲームボーイ時代につくられたRPGで、メカものが好きな人種に根強い人気があるシリーズでした。ナンバリングタイトルが9まで発売され、そのあとはグッズやイベントとしての展開に移っていましたが、ここ最近ではスマートフォンゲームの開発がアナウンスされ、もうすぐリリースらしいというタイミング。

 

サウンドトラックもハードロック・ヘヴィメタル的な要素が強くてかっこいいものが多く、特に1~5のサウンドトラックはリリースが切望されていましたが最近アーカイブスとしてまとめてリリースされ、ファンとしては非常に嬉しかったです。

 

そんなメダロットがチャレンジした次の一手はアレンジアルバムとライブ。メダロットの名曲群をボーカルアレンジしたりバンドアレンジしたりという企画盤と、それを再現するライブというセットの企画でした。

 

CDは少し前に届いて聴いていましたが、やはり20年の積み重ねがあるものですから「とはいえオリジナルのほうがなじみ深い…」という気持ちがあったことは否定しません。しかしやはりメダロットの晴れ舞台。これはライブも行っておかなくてはということで聴いてきました。

 

ひねくれた聴き方をしてしまったのが申し訳ないくらいよいライブでした。MCでもメンバーから「プレイしていない身でアレンジをして受け入れられるのかという葛藤があった」などの発言もありましたが、確かにアレンジの印象はその通りのもの。それでも実演に接してみると、各楽曲にメンバーが真摯に取り組み、全力で楽しんでいるさまがよくわかり、ああ、こういった継承のしかたもありなんだと目から鱗が落ちた思いでした。

 

個人的にはインスト楽曲群がとくにツボで、Evil spiritのリフを手拍子として解釈する煽り方も面白かった(煽るあまりキーボードメロディにあわてて入ってたのも面白かった)ですし、魔の十日間のヘヴィさには思わず頭を振りたくなりました。ツーバスもかっこよかったですね。ところどころでのベースソロもスラップなどが絡んで印象的でした。Shout!の熱い演奏も素晴らしく、ギターの刻みが非常にかっこよかったですね。

 

しかしなにより楽しかったのはメダロットが好きという人間があれだけ集まって思い出に浸ることができたということですね。また今後の展開も期待しています!

 

あとメダロットナビのサントラもお願いします!お願いします!!

EMPEROR「Anthems to the welkin at dusk - final japan tour @ TSUTAYA O-EAST」

DeafheavenとEmperorのライブに行ってきました!

 

■Deafheaven
01.Black Brick
02.Honeycomb
03.Glint
04.Dream House

 

Deafheavenは音源の印象よりさらに肉体的というか、人間味あふれる演奏でよい意味で驚きました。特にドラムなどのリズム隊で顕著で、Black Brickなどは音源だとかなりカッチリとしたビートを感じるのですが、揺らぎを持ったパワフルなプレイになっており心地よく聴けました。また、サウンド面においてもバンドサウンドとしての説得力を感じ、シューゲイザー的な轟音のときや甘いサウンドのときは特にすっきりとした魅力が出ていました。これはライブでないと味わえない一面かと思います。やはり4曲では物足りないのでまた来てほしいですね。


■Emperor
01.Alsvartr (The Oath)
02.Ye Entrancemperium
03.Thus Spake the Nightspirit
04.Ensorcelled by Khaos
05.The Loss and Curse of Reverence
06.The Acclamation of Bonds
07.With Strength I Burn
08.Curse You All Men!
09.Towards the Pantheon
10.The Majesty of the Nightsky
11.I Am the Black Wizards
12.Inno a Satana
13.The Wanderer

 

LOUD PARKでも見た2ndの再現ライブ。前回は疲れもあってそこまで堪能できなかったのですが、今回はこれがメインです。たっぷりと堪能しました。Deafheavenとはうってかわって暗黒な空気感の中、名盤2ndが再現されていきます。演奏はすさまじいの一言で、ドラムのタリムは終始乱れのないマシンガンのようなキック。イーサンも絶好調(特に後半はすごかった)で、ギターのキレのよさとシャウトの凶悪さはゾクゾクきました。

 

再現が終わったあとは1stの曲などを、後ろのスクリーンに自然の映像を流しながら披露。最後のInno a Satanaまであっという間でした。楽しかった!

 

Kalmah「PAST AND PRESENT JAPAN TOUR @ The Game」

フィンランドの沼メタル、Kalmahを聴いてきました!

 

■セットリスト
01.Hook the Monster
02.The Groan of Wind
03.Pikemaster
04.Holy Symphony of War
05.The Evil Kin
06.Take Me Away
07.Blood Ran Cold
08.Moon of My Nights
09.Seventh Swamphony
10.Evil in You
11.They Will Return
12.12 Gauge
13.The Black Waltz

 

En.
14.Heroes To Us
15.Hades

 

Kalmahは去年に引き続き観るのは2回目。直前のオーストラリアツアーのセットリストをチェックして行ったのでほぼ想定通りでした。
The Gameははじめて行きましたが、同じ建物にライブハウスが複数入っており入場が非常に混沌としていました…。

 

勢いのよいHook The Monsterで幕をあけ、あとはあっという間。前回観た時も感じたギターのバランスの小ささは相変わらずでしたが、ソロはちゃんと聴こえるしここぞというリフはそれなりに聴こえたので多少脳内補完はいるものの十分なレベル。

 

Pikemasterでのコーラスはとても楽しくてよかったですね。全体的にリフやギターメロディ、コーラスなどを観客が合唱するシーンも多く、とても心地よいライブでした。Vo、Gtのペッカ・コッコも上機嫌でMCも喋る喋る。聴き取りづらかったのもあり終始滑っていましたが楽しそうだったので問題ないでしょう。嵐の話題を入れてきたのは笑いましたね。

 

最新作「Palo」からの曲も3曲。Kalmahは基本的な音楽性が全く揺るがないメロディックデスメタルなので、初期の曲から最新曲まで違和感なくつながるのが素晴らしい。個人的に好きなSeventh Swamphonyを今回も聴けたのは嬉しかったですね。後半では初期の楽曲を連発したあとThe Black Waltzで本編終了。しかしどれもこれも本当に歌いたくなるギターメロディです。今回はGtのアンティ・コッコは不参加のようでサポートギタリストがリードをとっていましたが、楽曲に完全にマッチした最高の仕事でした。

 

アンコールはHeroes to UsとHades。15曲たっぷりでしたが、Kalmahは楽曲がいいのでもっともっと聴いていたかったですね。また来日してくれるのを楽しみにしています。

 

 

People In The Box「One Man Tour 2019『Tabula Rasa』 @ LIQUIDROOM」

PITBの新アルバムリリースツアーに行ってきました!
今年はめちゃくちゃLIQUIDROOMに行ってるな…。

 

■セットリスト
01.装置
02.いきている
03.木洩れ陽、果物、機関車
04.風景を一瞬で変える方法
05.忘れる音楽
06.泥棒
07.まなざし
08.ブリキの夜明け
09.聖者たち
10.2121
11.八月
12.もう大丈夫
13.無限会社
14.ミネルヴァ
15.かみさま
16.懐胎した犬のブルース

 

En.
17.世界陸上
18.スルツェイ
19.ヨーロッパ

 

新作Tabula Rasaを突如配信リリースしてからのツアー。
このアルバムが非常に素晴らしかったので、ライブもとても楽しみにしていました。

 

セットリストはTabula Rasaの流れを軸にしつつ、過去の曲を織り交ぜたもの。Vo波多野さんはギターをぶら下げながらキーボードを弾き、要所要所でギターに持ちかえるというスタイルでした。

 

装置でのこれでもかというような韻の踏み方はライブだとよりリズミカルでふわふわと。そのぶん最後の轟音は利きますね。いきているは特徴的なリズムのリフレインが印象に残る曲ですが、PITBにしては少ない音数の中で、ここまでの構築美を出せるのかという気持ちになります。Dr山口さんはACID ANDROIDでも感じましたがよりタイトに、より抜けのよいショットを放つようになっており、かつてはもっとゴーストを多用していたイメージだったのですが研ぎ澄まされた印象でした。カッコよかった。

 

ある意味で予言めいていた泥棒につづいてまなざしの流れは社会への視線を強く感じさせるもので、そこからのブリキの夜明け、聖者たちの異質感も大変に心地よく聴きました。八月ではキーボードによるアレンジでこれも良かったですね。PITBはいつもライブアレンジが凝っていて最高なので、いつかナンバーガールとかKing Crimsonみたいに記録シリーズとか言ってライブ音源出しまくってほしいな…。

 

Ba福井さんの印象的なイントロからのミネルヴァからかみさまへ。前回のKodomo Rengouツアーでの演奏はドゥームな印象を受けましたが今回はよりロックな方向性で、それでもこの曲の神性というかホーリー感はまったくゆるぐことなく響きました。こちらの涙腺はゆるみました。

 

アンコールでは世界陸上。このリフ本当に複雑ですよね。前回ツアーでは大変そうでしたが今回はむしろ楽しそうで、マジか…となりました。これまたホーリー感の強いスルツェイから、ヨーロッパで終演となりました。

 

本当に素晴らしいライブでしたし素晴らしいアルバムです。Kodomo Rengouで吹っ切れたなと思いましたが、まだまだ進化を止めることはなさそうですね。

 

 

森下唯「ミクロ・マクロ @ 調布市文化会館たづくり くすのきホール」

森下さんのピアノを聴いてきました!

 

■セットリスト
01.6つのバガテル 作品126(ベートーヴェン
02.エスキス 48のモチーフ 作品63/第4巻(アルカン)
03.ピアノソナタ第29番 変ロ長調 作品106「ハンマークラヴィーア」(ベートーヴェン

 

En.
04.スケルツォ(アルカン)
05.幻影(アルカン)

 

アルカン作品を積極的に取り上げてくれる森下さん。今年の演奏会ではアルカン作品に加え、ベートーヴェンの長大なソナタを含む重厚なプログラムでした。

 

6つのバガテルはベートーヴェンの最後のピアノ曲とのことですが、バガテルらしい遊び的な部分や場面転換など、アルカン作品に似た匂いを感じる箇所もあり面白かったですね。特に4が好きなのですが快速でありながら繊細で気持ちよく聴きました。

 

エスキスは楽曲のタイトルを舞台上に映す演出付き。映像的な表現が多いアルカンなので、これは良い試みだったと思います。(パワポだったんですね)録音でも非常によかったのですが、やはり実演だと弱音の響きがしっかり聴き取れてよかったです。「ヘラクレイトスデモクリトス」での場面転換や「小悪魔たち」でのおもしろさ、「夢の中で」で音が静かに空間を満たしていくような様は特に印象的でした。やはり森下さんはダイナミクスの扱いがとても心地よいんですよね。

 

ハンマークラヴィーアは40分ほどにもなる長大な楽曲で、特に第3楽章が長い緩徐楽章です。とても心地よかったのですが、気温的に絶妙にちょっと暑いくらいの環境と薄暗さで、うっかり意識がとびかけました…。しかし森下さんの集中力はすさまじく、4楽章の最後まで端正な演奏を楽しませてくれました。この曲は事前にさらっとくらいしか聞いたことがなかったのですが、4楽章のフーガなど面白いと感じる部分も多々あり、これから掘ってみようかなと思いました。

 

アンコールはエスキスから2曲。超スピードでのスケルツォのあとは染み入るような幻影で終演となりました。

 

アルカンの代表曲はだいたい取り上げてきたかな、という状況で次はどんな手がくるかな、と楽しみです。シューベルトとかリストのソナタとかも凄いことになりそう…。(と思って過去の演奏曲目を調べたら、もうやったことあるんですね。)