Spotifyを使い始めて結構経ちました。クラシック、吹奏楽、サクソフォン関連でもかなりいろいろ聴けるなというのがわかってきたのでおすすめをいくつか紹介します。
■東京佼成ウインドオーケストラ
「吹奏楽極上特盛」
アルバム名が多少痛いですが、近年のTKWOのアルバム群から選りすぐりの演奏が詰められたもの。アルメニアン・ダンスやディオニソスの祭り、フェスティバル・ヴァリエーションズといった大曲だけでなく、スウェアリンジェン「ロマネスク」やコーディル「吹奏楽のための民話」、保科「風紋」などの難易度的にとっつきやすい楽曲も多く配置。組曲ものなどが一部だけの収録になってしまっているのが難点ですが、各演奏会での雰囲気やTKWOの音楽性を知るにはぴったりのアルバムと言えます。
元になったアルバムの中からひとつおすすめを挙げるならこちら。
「ダフニスとクロエ」
通常、管弦楽から吹奏楽へのトランスクリプションものは色彩感が減り、物足りなく感じやすいのですが、TKWOは演奏技術もさることながら大きな音楽づくりで楽器の違いを感じさせない音楽体験をさせてくれます。サブスクには存在しませんがこのほかにも正指揮者の大井さんが指揮をふったアルバム群はいずれも名盤なのでCDも買いましょうね。
■シエナ・ウインド・オーケストラ
「ブラスの祭典3」
佐渡・シエナのブラスの祭典シリーズは私の世代にとってはもうバイブルみたいなものですが、特にこの3は印象的でした。ホルストの「第一組曲」やスミスの「フェスティバルヴァリエーションズ」といった有名曲にルディンの「詩のない歌」を混ぜてくるあたりにセンスが光ります。演奏はシャープでくっきりとした若々しいイメージのもので、中高生が夢中になるようなキラキラしたアルバムです。
「邦人作品集」
邦人作品をコンセプトに取り上げたアルバム。吹奏楽コンクールでも人気な大栗「大阪俗謡による幻想曲」や中橋「科戸の鵲巣」、真島「三つのジャポニスム」といった楽曲が高クオリティの演奏で聴けるのもうれしいですが黛「オール・デウーヴル」や兼田作品、三善作品、藤田作品と日本の吹奏楽史のなかでも非常に重要な作品ばかり。演奏も落ち着いてきてじっくりと楽曲の内面に向き合うことができる好盤に仕上がっています。
■オオサカ・シオン・ウインドオーケストラ
「ギルガメッシュ」
アッペルモントの「交響曲第1番 ギルガメシュ」がメイン。大阪市音楽団はその長い歴史と活動から積み上げられた極上のブレンドサウンドが特徴的ですがここでもその良さが十分に活きています。ギリングハム「ウィズ・ハート・アンド・ヴォイス」は個人的にこの演奏が一番好きです。
「マラゲニア」
バーンズによる自作自演アルバム。作曲者の指定テンポによる「アルヴァマー序曲」で幕開け、「祈りとトッカータ」といった名曲群に加え「交響曲8番」が収録されているのも貴重です。シオンはほかにもスパークやヴァンデルローストといった作曲家を指揮者に迎えた演奏会を積極的に行っており興味深いCDがたくさんあります。
■その他
「アルプス交響曲/マスターズブラス・ナゴヤ」
最近できた名古屋の吹奏楽団。魅力的な楽曲を取り上げたアルバムがリリースされていますが最新作はリヒャルトの「アルプス交響曲」全曲。同曲をオマージュしたチェザリーニ「アルプスの詩」という吹奏楽オリジナルの人気曲も存在しますが、この交響曲のほうを取り上げるのはなかなか珍しいですね。吹奏楽のパワーも活かした表現は面白いです。
「交響曲第9番/ブリッツ フィルハーモニックウインズ」
まさかのベートーヴェンの「第九」を合唱付きの吹奏楽で全曲やってしまうという凄い企画。さらに楽章ごとに編曲者が異なるという挑戦的な作品です。楽団10周年でこれをもってくるのはさすがという感じですね。こういう吹奏楽の枠組みを再拡張しようとするような試みはとても応援したいです。
「風/航空自衛隊中央音楽隊」
自衛隊音楽隊にも素晴らしいアルバムが多数あります。航空自衛隊のこのアルバムは記念演奏会の録音で、「ブルーインパルス」などのらしさあふれる選曲が楽しめます。
「アーネム/陸上自衛隊中央音楽隊」
こちらは陸上自衛隊。自衛隊の演奏するマーチは端正でとても好きですね。「ボギー大佐」などの超有名曲だけでなく、あまり知られていないような楽曲まで幅広い選曲。スーザスタイルの行進曲では特に「行進」という行為をしっかり感じさせてくれる解釈と演奏で素晴らしいです。
「トランスフォーメーションズ/ノーステキサスウインドシンフォニー」
ノーステキサスは昭和ウインドでも振っているユージン・コーポロンによるアルバムが多数出ており、新しい吹奏楽作品の良い楽曲を知りたいときはまずチェックする団体のひとつです。このアルバムはマスランカの「交響曲第7番」をメインに据え、「バリ」など民族的なサウンドの面白い楽曲も含まれています。
「子供の夢の庭/ダラスウインドシンフォニー」
ダラスウインドも高品質なアルバムが多いですがこのマスランカの「子供の夢の庭」は特に有名ではないでしょうか。マスランカの楽曲は非常に宗教音楽からの影響が強く、楽器の限界を要求するような音域の使用による緊張感も魅力です。
「シグネイチャーズ/アメリカ空軍バンド」
アメリカ空軍バンドによるオリジナル曲が集められたアルバム。中でもグレイアム「ハリソンの夢」は印象深いですね。高い技術力とテンションに裏付けされたいいアルバムです。
個人的に印象深いアルバムを取り上げましたが、ほかにも探すといいアルバムがザクザクあります。ただ、インディーズレーベルによるアルバムなどはどうしてもあまり存在しなかったり、あっても単一楽章しか聴けなかったりするので、まだまだ新作チェックはCDも強いな、という印象ですね。