雲井雅人サックス四重奏団「Songs For The Coming Day」

現代日本のサックス四重奏団の中で、間違いなく最前線にいるであろう雲カルの新作が発売した。
マスランカ作品は「マウンテン・ロード」、「レシテーション・ブック」に続いて3作目。
さらに雲井雅人ソロでも「サクソフォン協奏曲」、「サクソフォンソナタ」をとりあげており、マスランカの音楽への理解度はかなりのものといってよい。

特に前作「レシテーション・ブック」と今「Songs For The Coming Day」は雲カルによる委嘱作品で、その荘厳な響きを十分に活かしきった作品に仕上がっている。
楽章は9つあり、42分という交響曲にも匹敵する長さの大作。
多くの楽章は「レシテーション」でいうところの「瞑想曲」タイプであり、内向きで静かな音楽である。

教会音楽…まるで聖歌のようにサクソフォンが響いていく様子に、思わず心を洗われるようだ。
と同時に、内包している強烈なメッセージ…それが何だかははっきりとはわからないものの…も強く感じる。

毎回思うのだが、マスランカ作品は他のサクソフォン四重奏曲と全く異なるものだ。
技術的な側面も、はてはメロディまでもが大きな問題ではなくなる。
聴いていて自らを省みたくなるような作品…とでもいえばいいのだろうか。
エンタテインメントという枠ではもはやくくれないと思うのだ。

なんどでも聴いて、かみ締めたい曲である。

Rating:9.6/10.0