DIR EN GREY「ARCHE」

UROBOROSでそれまでの総決算を行い、続くDUM SPIRO SPEROでは複雑さの極みへと舵を取っていたDIR。
まるでその揺り戻しのように、今作は歌メロにあふれている。

前作はリスナー側にも理解するのに時間を要するアルバムであったが、バンドにとっても同様だったのかもしれない。
長さも5分以内の曲がほとんどで、とにかくシンプルさが印象的だ。

Voの京は今年、別のプロジェクト「sukekiyo」でもアルバムをリリースしていた。
そちらはシャウト少なめ歌多めの作品だったので、DIRと区別してやっていくのかと思っていたが、どうやら京の現在のモードがメロディ重視ということなのだろう。

バンド感が強く感じられるのも嬉しい。彼らはここ数年は音源を送り合ってこねくり回す作曲法をとっていたはずだが、今年のシングルあたりからプリプロでバンド合わせを取り入れ始めていたようだ。
複雑な音楽性のバンドにとって、コンピュータ上での作曲は欠かせないものであるし、実際それがうまく作用している場合も多々あるのだろうが、ともすれば難解すぎて聴衆を突き放してしまいかねない危険をはらんでいると思う。メシュガーなども最新作では久しぶりにセッションから曲を作った…といった発言をしていた気がするし、そのへんのバランスは難しいところなのだろう。

ともあれ、肉体的で直感的な作品に仕上がったのは個人的には大歓迎だ。
正直、「Sustain The Untruth」がリリースされた時はもう危ういのかと思ったものだが、まったくの杞憂だった。

バンドの底力を感じさせる名盤。これはライブ行ってみたいね。