村松和樹「サクソフォンリサイタル」

CHAPTER_#1
1.自主主題による幻想曲(J.ドゥメルスマン)
2.ファンタジー(H.ヴィラ=ロボス)
3.ヴァカンス(J.M.ダマーズ)
4.プレリュード、カダンスとフィナル(A.デザンクロ)

CHAPTER_#2
5.Waterwings(M.Munce)
6.Grab it!(JacobTV)
7.Concertino_for_524DCA1A.ksh(A.Shoichi,Saitone)

En
8.りす Saitone Remix(P.デュボア/Saitone)

友人である村松さんの演奏会に行ってきた。
たいへん素晴らしい演奏会で、とても刺激を受けた。

CHAPTER_1はサクソフォンのために書かれたクラシック作品。
最初のドゥメルスマンには度肝を抜かれた。
彼は以前この曲でコンクールにも出ていたはずで、もう十八番といったところか。
自然なフレージングや技術の安定感はもちろんだが、後半のサクソフォンに連符が続く箇所。
ともすればサクソフォンをクローズアップしすぎてチャルダッシュのようになりかねない箇所を、見事なバランス感覚でピアノのメロディを立たせつつ演奏していた。
サクソフォンは音量が大きい楽器のため、このようなヴァイオリン的な発想の表現は難易度が高く、また意識もしづらいのだが、完璧と言って良い演奏だった。

デザンクロのPCFも素晴らしかった。
技巧的に難易度が高い楽曲だが、表現したい内容が伝わってくる好演だった。
全体的に言えることだが、村松さんは音楽の「持って行き方」が非常にうまい。
ちょっとした休符のとりかたやその絶妙なマであったり、全体を通しての盛り上がりの構築など、聞き手を飽きさせない音楽作りだ。
ピアノの大嶋さんもさすが。サクソフォンの伴奏を数多く手がけた百戦錬磨の技巧とでも言おうか、独奏者の音楽に同期させるのが信じられない程うまい。

CHAPTER_2は現代音楽作品。
Waterwingsはアンビエント的な浮遊感ただよう伴奏トラックに乗せてアルトサクソフォンが独奏を行った。
ステージ上のライトもほぼ消灯され、譜面台に配置されたライトを中心に瞑想的な空間が広がっていた。
繰り返されているように見えつつも最初と最後のトラックの音型が異なっていたりと、また聴いてみたい楽曲だ。
Grab it!は、もはやこのスタイルのサクソフォニストにとっての登竜門的な楽曲になっているイメージがある。
個人的にはもう少しトラックの音量があってもよいかなと思う箇所はあったものの、特殊技巧もものともしない力演だった。
本日の目玉である委嘱作品「Concertino_for_524DCA1A.ksh」は面白かった!(kshKornシェルか何かかな…?)
舞台左には椅子が置かれ、ゲームボーイに興じる青年…。彼が立ち上がり、天を仰いでOMG!とでも言うようなジェスチャーで画面を顔面に当てたところで8bitによるバグのようなノイズが響き楽曲がスタート(そして青年は退場)。
8bitサウンドとサクソフォンのコラボレーションというのはイメージがわかなかったのだが、クラシカル由来の澄んだサクソフォンの音色は思いの外8bitサウンドと親和性が高く、なおかつ特殊奏法によるパーカッシブさや人間味を付加できるという意味でとても面白いサウンドになっていたと思う。

アンコールはデュボアのりすをSitoneバージョンで。
これまた素晴らしかった!コインの音の模写に続けてあのイントロを流されると、「MOTHER」の戦闘シーンを思い出してしまう。

全体として、村松さんのプロデュース力を強く感じるコンサートだった。
各要素から本人の意思やエゴが感じられたのも良かったし、そのバランス感覚の秀逸さにはただただ圧倒されるばかりだった。
これからもいろいろと面白いことに挑戦していって欲しい。