私がトルヴェールの演奏を初めて知ったのはいつ頃だっただろうか。
私がサクソフォンを始めたのは2001年。
今から約15年前になる。
中学時代は小遣いもなく、お手本となる演奏は専ら図書館のCDであった。
私の最寄り図書館は音楽が比較的充実しており、「トゥランガリラ交響曲」やショスタコーヴィチの「第5番」を好んで聴いていたように思う。
その中に「須川展也」のCDも含まれていたはずだ。「ジェンナ」等を聴いた覚えがある。
しかし、当時はそこまでピンとこず、サクソフォン自体にも情熱を注いでいるわけではなかった。
やはり、高校時代に楽器屋で買ったこのベスト盤が事実上のファーストコンタクトだったと言ってよいだろう。
長生淳のややゲンダイっぽい新曲をはじめ、多彩な楽曲が並んだこの盤に、私や同級生たちは虜になった。
特に衝撃的だったのは「デュークス・タイム」や「オレオ」、「アトムハーツ」。
それまでの吹奏楽で体験していたつまらないサクソフォンパートとは全く違う世界がそこに広がっていた。
気心の知れた部内の仲間とカルテットを組んで、色々な曲に挑戦したものだった。
トルヴェールの魅力は、音楽として聴いて楽しいのはもちろんのこと、「自分もやってみたい!」と思わせるパワーにあった。
アンサンブルの名曲を集めたこの作品集は楽譜も入手可能なものが多かった。
今にして思えばなかなか面白い解釈の演奏も含まれているのだが、それこそ飽きるほど聴きこんだものだ。
そして2004年、ついに「リアルタイムでの新譜」を体験する。
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ホルストは好きな作曲家だった。惑星も当然知っていた。
しかし、このアルバムのなんと衝撃的だったことか!
知っているクラシックのフレーズが散りばめられながらも惑星間を飛び回るようなこのCDは、さらに私をサクソフォンに夢中にさせた。
この頃になってくると、各メンバーのことにも興味がわいてくる。
須川さんは知っていたけれど、他のメンバーも個性豊かでソリスティックだということがわかってきた。
さらっとハイテクを吹きこなす彦坂さん、温かい音色と安定感の新井さん、時に秘密兵器も繰り出す田中さん。
そう、私達の世代のサクソフォン奏者にとって、彼らは「アイドル」だったのだ。
その頃のトルヴェールはまさに絶頂期というところだった。
個人的には、遡って買ったアルバムからプログレにハマったり、ラヴェルの良さに気付いたりと、音楽性の面でも相当な影響を受けたと思う。
新井さんのソロアルバムにはぶっ飛ばされた。
なんといってもフィオッコの協奏曲だ。
どうしてこんなに軽々と吹けるんだろう…?
これも友人と感想を言い合いながら何度も聴いたものだ。
彦坂さんと新井さんのデュオアルバムも重要な作品だった。
特にルクレールのソナタはこのアルバム以降、あらゆる人が挑戦したものだ。
その後、しばらくは活動を休眠していたトルヴェールだが、2014年に久しぶりのアルバムが出た。
名曲の再録と新曲の含まれた、充実した内容で、これからもまだまだワクワクさせてくれるのだと嬉しく思っていたのだが…。
たとえ会えなくなっても、音楽家は作品が残る。
残された音楽を聴く時、私達はそれを初めて聴いたあの日にタイムスリップする。
あの日感じたワクワクを、私は今も持ちながら活動できているだろうか。
受け取ったバトンを、落とさないでいられているだろうか。
最大限の感謝を込めて。