Morgaua Quartet「Tributelogy」

 モルゴーア・カルテットのプログレアルバム新作がリリースされました。

Tributelogy

Tributelogy

 

 

モルゴーアは東京フィルのコンサートマスターである荒井英治さんをはじめとした腕利きのプレイヤーたちによる弦楽四重奏団で、ショスタコーヴィチの四重奏曲など多彩なレパートリーを持っています。

 

彼らのレパートリーの中でも特徴的なのがプログレッシブ・ロックのカバー作品群です。

1998年の「ディストラクション」ではイエスやキング・クリムゾンなどの名曲をカバー。しばらく間があいて2012年、2014年に2枚のプログレカバーアルバムをリリースしました。

 

そして今回はエマーソン・レイク&パーマー関連の作品のみで構成されたカバーアルバムです。

エマーソンはもともとクラシックから多大な影響を受けたミュージシャンでした。美しいメロディ、複雑な構成、テクニカルなパッセージは弦楽四重奏に置き換えても違和感がありません。むしろハーモニーや旋律のもつ力がより強調されているように感じます。

 

このアルバムの特に素晴らしいところは原曲への愛と敬意があふれていること。吉松版のタルカスカバーをはじめ、この手のカバー企画はけっこうな数ありますが、正直言ってロックの外面にとらわれてエマーソンの上品さを損なっているような演奏も散見されたものでした。しかしモルゴーアはまさに完璧。EL&Pの、そしてファン達のツボをしっかりと把握したうえで、トランスクリプションとアレンジメントを使い分け、巧みな編曲と演奏でプログレの世界を表現してくれています。

 

最近の作品である「After all of this」はエマーソンの葬儀でも流された編曲。元がピアノとオーケストラのための曲だけに、よりシンプルな編成で旋律が楽しめます。

「タルカス」は間違いなくEL&Pの代表曲。冒頭のリフも流すことなくゴリゴリとした演奏は好印象。 交響詩、あるいは劇伴のように感じるほど描写的なこの曲ですが、モルゴーアのキレのある演奏は場面ごとのキャラクターを巧みに描き出しています。

「Still...you turn me on」は原曲からかなり大胆なアレンジが加えられており、サティの面影が強くちらつきます。この曲はレイクを意識したもので、アルバムの中でひとときのオアシスのように作用しています。

「Trilogy」は以前のアルバムからの収録。動機が変容しながら展開していくさまはまさにクラシック的。リフを続けつつも上でインプロ感あふれるメロディが飛び交うサウンドは刺激的。

「The Sheriff」はユーモラスな小品。ピアノの音色が印象的な楽曲ですが、モルゴーアはピッチカートを効果的に使用し、一味違ったサウンドを作り上げています。

なんといっても圧巻が「Karn Evil 9」です!30分の大曲で、第1印象~第3印象まであるうちの第1と第3印象、そして即興的な第2印象の代わりに「Take a pebble」をモチーフにした間奏曲が挿入されています。もっともキャッチーな第1印象のパート2での浮遊感、第3印象での狂いっぷりには驚愕で、「そこまでやるか…!」と思わされました。第3印象のラストまで完全再現しているのは聴いていて思わず笑ってしまったほど。

 

プログレファンも納得の出来であるとともに、代表曲が集められていることから入門としても最適なアルバムと言えるでしょう。

ここまでのものを作ってくれたことに感謝したいです。

 

2016年にエマーソンとレイクは亡くなりましたが、その作品群はいつまでも色あせずに愛され続けていくのだと強く感じました。