cali≠gari「13」

カリガリのフルアルバムが出ました!
 
13(ジュウサン) 狂信盤(Blu-ray付)

13(ジュウサン) 狂信盤(Blu-ray付)

 

 

フラゲ日に初回版・通常版ともに購入し、聴きまくっています。
第8期の音源はどれも大なり小なりコンセプトがありますが、今作も例に漏れず。
タイトルが「13」ということもあり、不吉さ、暗さを押し出した曲が多くなっています。
サウンドもよりまとまりを増し、この3人+ゲストミュージシャンという編成が完成形に達したように思いました。
 
青さん作の「ゼロサムゲーム」は三拍子と四拍子が共存し、ゲストミュージシャンの即興的なプレイが印象的です。1トラック目の環境音の流れから考えても明らかに社会的メッセージを内包しているのですが、主張でなくあくまで皮肉にとどめるバランス感がこのバンドらしさ。
 
続く「トカゲのロミオ」はキラーチューン。一人だけでもストーリーを持っていってしまうような村井さんの変幻自在のベースプレイや青さんのキレのあるカッティングといった演奏面も素晴らしいのですが、石井さんの曲と歌詞がとても好きです。言葉遊びを交えつつも切ない後味を残す名曲。
 
「汚れた夜」は配信版とは変わってゲストミュージシャンが大量に参加。サクソフォンティンパニがアクセントとなり、配信版よりも明るい雰囲気に仕上がっています。こちらのほうはなんとなく新宿っぽさを感じますね。
 
「トイレでGO!」はマグロや君が咲く山に通じる猟奇ソング。スラップを織り交ぜた明るい狂気が奇形メルヘン音楽隊だったころの彼らを思い起こさせますが、温度感はあくまで現在形。やはり第三者的な皮肉的視線を感じます。
 
「色悪」はある意味、驚きでした。サビがコーラスだけというのもありますが、まるでジャケットのアスタロトを描いたような歌詞の描写力、そしてこんなに描写的な詩を石井さんが出してきたという新鮮さ。耽美的なサウンドでクセになります。
 
「三文情死エキストラ」は村井さんと青さんによるジャズ風の楽曲。アルバムの中では比較的日常風景に近い曲で、歌詞もどこかポジティブ。以前の曲ではこういった別ジャンルへのアプローチにどこか歪さが漂っていてそれも魅力だったのですが、ここではカリガリとして完成された上での表現を感じます。
 
「一切を乱暴に」は直接的で攻撃的。猿シリーズにつながるような言葉遊びもあり、明らかにコールアンドレスポンスを想定したパートもありで、ライブで映えそうです。
 
「ファニソン」は少し落ち着いた雰囲気。一定の温度感とスラップベースの上を「ファニーソング」が綴られていきます。求めないで、こんなファニソンとバッサリする歌詞も印象的ですね。
 
「落花枝に帰らず破鏡再び照らさず」はお洒落なピアノが印象的で、快速なテンポの上でゆったりしたフレーズが流れます。何かの喪失を思わせる切ないような焦るようなサウンド、ライブでどう化けるか楽しみです。
 
 
「深夜、貨物ヤードの裏の埠頭からコンビナートを眺めていた」は青さんによるしっとりした曲。まさに深夜を思わせるような音像や月の照り返しのようなリバーブ、特殊効果が心地よいです。ダークで切れのある曲が多い中、この曲はエンドロールのような役割を果たしているように思えました。
 
合計40分弱というコンパクトさの中に様々なチャレンジや実験が含まれていて、集中したままスルッと聴けます。
音源として完成しているので、これらの楽曲がライブでどのように化けるかも今から楽しみですね。