東京佼成ウインドオーケストラ「吹奏楽燦選/嗚呼!アフリカン・シンフォニー」

たまには吹奏楽の新譜も。
普段、こういった「名曲選」っぽい企画物の吹奏楽CDは買わないのですが(コンピレーションだったりベスト盤と似た匂いを感じるので)、今回はそれでも選曲がかなり好みだったので購入。

全体的に、「TKWO(東京佼成ウインドオーケストラ)があまり積極的には取り上げなそうな曲」が並んでいます。
スウェアリンジェンの「ロマネスク」は演奏難易度が低く、よく普及しているために吹奏楽部経験者にはよく知られた一曲。
美しいハーモニーと息の長い盛り上げ方が学べる良曲ですが、TKWOの演奏は流石で、クラシック音楽として鑑賞に値する一品に仕上がっています。

R.W.スミスの「船乗りと海の歌」もなかなかTKWOのイメージにはない曲。
特殊な打楽器を使用することで有名なこの作曲家、描写的な音楽性とそのフレーズのかっこよさで吹奏楽コンクールの支部大会でよく目にします。
まさにお手本といえる内容の演奏で大満足。

そしてなんといっても樽屋雅徳の「マゼランの未知なる大陸への挑戦」でしょう。
この曲が出てき始めた当時、ちょうど高校生だった私にとって、思い入れの深い曲です。もちろん演奏もしたことがあります。
わかりやすくカッコいい、なおかつちょっと難しくて吹けると自慢できる、というまさに中高生のハートを狙い撃ちにするような楽曲を多く生み出している作曲家ですが、そのスタイルの出世作がこれといえましょう。
オーケストレーションの問題であったり、時に出てくる演奏困難な箇所であったり、曲の構成だったりと当時は賛否両論の趣がありましたが、これだけ愛奏され続ければもはやスタンダードの一角。
正攻法の解釈の参考音源として、今後この作品を取り上げる団体にはマストバイのアルバムになりましたね。

島弘和の「百年祭」がきちんとした録音でリリースされるのも嬉しいですね。
この作曲家はとにかく現場を意識した作品を書く印象ですが、旋律の親しみやすさや音楽としてのクオリティが決して平易にならないところに職人芸を感じます。
小編成のためのレパートリーとして、これからも演奏され続けてほしい曲ですね。

伊藤康英さんの「ラ・フォリア」も面白い内容です。
楽器紹介を兼ねた変奏曲で、作曲者の腕が光っています。
アルバムの趣旨として名曲選という位置づけのため、吹奏楽初心者が手に取ることも多いであろうこのアルバムに、こういった楽器の特性がよくわかる楽曲が入っているのは嬉しいですね。

つらつらと書いてきましたが、全体的に聴きやすい曲がそろっており、演奏レベルも当然のように高いので、特に吹奏楽シーンに多少なりとも関わっている方は聴いて損はないでしょう。おすすめ。