東京佼成ウインドオーケストラ「第151回定期演奏会」

01.吹奏楽のための第一組曲(G.ホルスト)

02.水面に映るグラデーションの空(芳賀 傑)

03.リンカンシャーの花束(P.グレインジャー)

04.吹奏楽のための交響曲 第3番(保科 洋)

05.インテルメッツォ(保科 洋) 

 

吹奏楽のための第一組曲は伊藤康英による校訂版でかなり小さな編成での演奏。各パートの役割がはっきり見え解像度の高い演奏だった。正攻法での美味しさを堪能でき、シャコンヌの最後に至る盛り上がりや間奏曲の可愛らしさ、行進曲での華やかさまで極上のサウンドだった。

 

特に印象に残ったのは水面に映るグラデーションの空。前半の各パートが微妙にずれたりしながらサウンドを重ねてゆく箇所は現場ならではの聴こえ方を楽しんだ。リズムの重なりによるサラウンド効果の中からサクソフォンセクションなどの和音が突き抜けてくるさまは幽玄で、日本らしい響きだとも感じた。今回のために書き足されたというコントラバスクラリネットのソロは想像していたよりもかなりガッツリとしたソロで驚いた。テクニカルではあったが前半の終結部によくあっており、これで音源も残してほしいところ。

 

リンカンシャーの花束はホルストと同じくTKWOによる録音が多数存在する楽曲。メロディの重なりや民謡に合わせた拍子のとり方など、旋律の美しさとは裏腹に難曲であるが楽曲への想いや慈しみを感じるようなあたたかい演奏だった。一部、主旋律より裏が大きくなりすぎていたように感じた箇所もあったが、これは座った座席によるものかもしれない。

 

保科洋の交響曲第3番も面白かった。重厚な響きは期待通りにありつつも、特に一楽章でのキャッチーな楽想には驚かされた。瞬間ごとにキャラクターが交差し吹奏楽ならではの多面性が表れていたように感じる。二楽章は非常に穏やかで心地よく、各楽器のメロディを存分に聴くことができた。三楽章は終楽章らしいテンションの高さで、ゴリゴリとした響きと二楽章でも見せたような甘い響きを行ったり来たりしながら一気呵成に幕となった。保科洋のシリアスな部分とユーモア的な部分がどちらも濃く出た面白い曲になっていたと思う。

 

アンコールはこれも保科洋による「インテルメッツォ」。2017年の課題曲として作曲され、今回と同じく大井、TKWOにより初演された楽曲だ。あらためて聴くと課題曲とは思えないようなロマンティックさとムードをたたえた楽曲であり、しみじみと噛んで含めるように演奏するTKWOの音色が心地よく響いた。

 

演奏会全体としての芯が通った(これは大井による棒のときは特に毎回感じるのだが)とてもよい演奏会だった。来期の予定も発表され、そちらも非常に期待できる内容。今後もできる限り聴きに行きたい。