King Crimson「MUSIC IS OUR FRIEND @ 東京国際フォーラム 2021/11/27」

King Crimsonの来日ツアー初日を観てきました。

 

 メンバーから「最後の来日になるだろう」という発言も多く、決定事項という言い方ではないものの可能性は高いという雰囲気でしたので、観に行けてよかったです。

 

■セットリスト
01.The Hell Hounds Of Krim
02.Pictures Of A City
03.The Court Of The Crimson King
04.Red
05.One More Red Nightmare
06.Tony Cadenza
07.Neurotica
08.Indiscipline
09.Islands

10.Drumzilla
11.Larks' Tongues In Aspic Part One
12.Eptitaph
13.Radical Action II
14.Level Five
15.Starless

16.21st Century Schizoid Man

 

 セットリストはまるでベスト盤のような構成で、それこそ「クリムゾンキングの宮殿」から、トリプルドラムならではのDrumzillaまで盛りだくさん。

 

 最後になるかもしれないということでしたので、ロバート・フリップを目に焼き付けよう…という気持ちで行ったのですが、実際に見てみるとトリプルドラムを含めたバンド全体としてのエネルギーが凄くて、そちらに圧倒されました。ただ、席が2階の後方で目を細めながら見たというのと、直近の仕事の疲れが蓄積していたというのもあり睡魔に襲われることもあったのが個人的な反省点でした…。

 

 2018年の来日も見に行ったのですが、それからポーキュパイン・ツリーを聴くようになったこともありギャヴィン・ハリソンを含むトリプルドラムをより面白く感じられました。「The Hell Hounds Of Krim」からもう凄くて、ビートをパワフルに主導しつつトリッキーな拍子を入れ込むギャヴィン、飛び道具的な音響を入れてくるパット、ベーシックなビートでどっしりしたジェレミーと個性豊かなメンバーなのに、キメになると完全にシンクロして超強力なビートを実現していました。

 

 初日だからか音響バランスや演奏前後のアナウンスもちょっとミスらしきものが目立ったのですが、「The Court Of The Crimson King」のコーダでのフリップの即興不協和音がとても大きいバランスになっていて「崩壊」感みたいなものが醸し出されていて逆に面白かったりしました。「Red」「One More Red Nightmare」もカッコよかった。このへんのヒリヒリした時期の楽曲は緊張感としてはやはり当時の音源のほうがあると思いますし、最近の録音を聴いても大人な演奏かな、とは思っていたのですが、実際に現地で聴くと音圧とリズム隊のグルーヴによって全くぬるい感じはないというか、メンバー同士の鍔迫り合いのようなものをリアルで感じられました。これはやはり現地なり映像付きでみないとわかりづらいところですね。

 

 前半の白眉は「Indiscipline」。決まったパルスの上で即興的な技が入り乱れる難曲ですが、特にドラム3人のバトルが凄かったです。パットが短いフレーズを演奏するとすぐにギャヴィン、続いてジェレミーが山彦のように同じフレーズを演奏して大きなフレーズを構築していくというもので、この日一番の緊張感があったと思います。なにより各メンバーのドラムのサウンドが本当にすばらしくて、歌舞伎の見栄のようというか、バシッ!と言い切るような歯切れのよいフレーズの連続はとにかく痺れました。

 

 後半も素晴らしく、個人的にこれは見ておきたいと思っていた「Larks' Tongues In Aspic Part One」でのフリップのギター独奏のフレーズを聴くことができて感無量でした。アレンジが前回来日時とは異なり、メル・コリンズのソロはなかったですね。

 

 「Level Five」「Starless」で本編終了。前者は記憶より滑らかなサウンドでちょっと驚きました。スターレスでのフリップのギターメロディはやはり最高で、幽玄というか空間を感じさせられるような時間でした。後半のテンポアップのパートではそれまで青系統だったステージの照明が赤くなり、ライブの終わりを強く感じさせながら一気呵成に駆け抜けていきました。ここまで特に記載していませんでしたが他のメンバーもいつもどおりの安定感で、ジャッコのVoはもはや何の違和感もなくクリムゾンのサウンドとして溶け込んでいますし、トニーのチャップマンさばき、メルのサクソフォンも期待以上の素敵さでした。

 

 最後は「21st Century Schizoid Man」。前回来日時はやらない日もあったと思うので、生で見ることができて本当によかったです。メンバーが楽しそうに(遠かったので表情はわからないのですが…)演奏するさまを観られてこちらも楽しかったです。中盤のギャヴィンのソロは今回もものすごくて、バスの連打を絡めた最後の畳みかけはもう引くほどヤバかったですね…。キメでのお約束の掛け声も客席からけっこう飛んでいて、以前のようなライブ空間が戻ってきつつあるのかな…と(複雑ながらも)感じました。

 

 全編通じて、やはりクリムゾンは今でも実験的精神を持ち続けているバンドだと感じました。やっている曲こそ60年代の曲であったりはしますが、その演奏方法を毎回アップデートさせてその時その時でできるさらによいサウンドを追求していることがよくわかりましたし、実際にトリプルドラムをはじめとしたキレキレの演奏でそれが実現できているとも思えました。まだまだ限界は感じないので、諸々の都合が許すなら、最後なんて言わずにまた来日してほしい…と強く思います。いいコンサートでした。