People In The Box「15th anniversary - People In The Boxの正弦定理(追加公演) @ 渋谷CLUB QUATTRO」

People in the boxのライブに足を運んだ。コロナ以後、ライブそのものにほとんど行けていなかったうえ、行けていたものも昼夜2回の昼だけ、のような行き方であったので、夜のライブに参加するのは本当に久しぶりだった。

 

紙のチケットいらずのスマチケを使って入場し、物販では棒を買って中へ。床にはマス目状にテープが貼ってあり、感染対策を感じさせはするものの人の入りはかなり以前に近いところまで戻っている印象。

 

いつものジム・オルークが流れるとPITBのライブに来たという実感が湧いてくる。今回のツアーはCDデビューから15周年を記念したものであり、選曲も幅広い時期のものが期待された。

 

それにしてもいきなりのAliceには度肝を抜かれた。波多野の歌い方はとても優しい。昔の楽曲のオリジナルにあった切羽詰まったような感じは薄れ、お伽話を読み聞かせるような余裕を感じさせるあたたかい演奏で、それは続く日曜日などでも同じ印象を残した。ギターは昔の曲ではカポを採用することが多かったようだ。

 

ベース福井は5弦を使った音域を縦横無尽に駆け巡るプレイを今日も確認できた。ギターの薄くなる箇所でベースが和音を奏でるところは何度聞いてもその絶妙さにため息が出てしまう。町Aでのころころと動き回るベースの心地よさも印象的だった。

 

ドラム山口も素晴らしく、特に今回はacid androidでの経験値がPITBの演奏に惜しみなく注ぎ込まれていると感じることが多かった。ちょうど柱をはさんだところで観ていたため視覚的には確認できていないが、タムを絡めた高速のフィルであったり、4つ打ちの人力再現のような表現など自由自在だった。

 

バースデイは今まで聞いてきた中でも特に素晴らしい演奏で、途中でギターのアドリブっぽいフレーズがはいったりと自由なやりとりを楽しんだ。

新曲も2曲披露。民族感を感じさせる5音音階っぽいフレーズを軸にした曲もありなかなか面白い。どちらの曲も音源としてはやく楽しみたいものだ。

 

物販紹介を挟んでからのはじまりの国から最後までのセクションは今まで観てきたPITBの中でもトップクラスに美しい時間で、自然体ながらも音のテクスチャを変化させるギターにはじまり、金曜日でのまるで演劇を見るかのような空気感の切り替わりとコントロールには舌を巻いたし、聖者たちのイントロで4つ打ちからビルドアップしてブレイクとともにAメロに入る構成はヤバすぎて興奮しっぱなしであった。

 

最後のJFK空港も会心の演奏で、前の曲の余韻の中からベースのノイズが聞こえてきての曲の入りや、要所要所での楽器間の絡みによるサウンドの厚さのコントロール(やはりスリーピースとは思えないサウンドが鳴る!)は見事。ポエトリーは前半はややつっこみ気味で入って後半になるにしたがって音程を持たせていくあたりは聴いていて新しい感触もあった。「見て 晴れた空から 降ってくる」のあと、ギターの響きが完全に消えるのを待ってからの観客の拍手も得難く美しい瞬間だったと思う。

 

やはり生で演奏を聴くと感じ取るものが多い。新曲もありまた活動に意欲的そうでもあったので、また彼らの音楽に驚く日々を再開できそうで嬉しい。まだまだ頑張って生きないととポジティブな元気を貰えた夜だった。