復活後のcali≠gariを振り返る

アルバム「17」が発売となった。
復活前は「8」が最後だったので、とっくに復活後のほうが作品数が多くなっている。
それでいて、最新作が最高傑作ではないかと思わせる作品を作り続けているのはさすがとしか言いようがない。

 

私はちょうど復活作の「9」「10」のタイミングでファンになったのだが、この新作発売のタイミングで一度、この間の作品を振り返ってみたい。ひとまずナンバリングタイトルだけ。

 

■「9」

ナンバリングの中でも特殊で、シングルとしてリリースされた。これは再結成にあたり継続的な活動を見込んでいなかったこともあると思われる。休止前のライブ映像が「休」だったこともあり、この数字には特別感がある。

 

楽曲は桜井による「スクールゾーン」と石井による「ー踏ー」で、ボーナストラック違いによる2形態リリース。いずれも今までライブで演奏され続けている名曲だが、ボーナストラックはデモなのか?と思うようなラフさで、そこも面白かった。どちらのボーナストラックも後に再利用されてちゃんとした曲になった(クソバカゴミゲロ、100年の終わりかけ)。

 

■「10」

復活作としてのフルアルバム。非常に完成度が高い。「9」の2曲を軸に、特に石井の色が強く出ており、桜井や他メンバーの楽曲も打ち込みやサウンドメイクで石井色によってまとめられたことで統一感とクオリティを実現。cali≠gariの魅力である雑然とした感じやアンダーグラウンド感はやや後景に退いているが、それがかえって新規リスナーが入りやすい状況につながったようにも感じる。村井のベースも存分に弾きまくっており、タッピングやハイフレットでの和音、スラップ(チョッパー)などが惜しげもなく披露され、それが楽曲の中で有機的に機能している(これだけ弾いているのに「主張しすぎ」にならないところが凄い)。

 

個人的な話をすると、私がcali≠gariを知ったのはここのタイミングであった。ベースマガジンに載っていた村井のインタビューを読んでテクニカルなベースに興味を持ち、ママゴトセンターでの縦横無尽さや飛蝗者読誦でのジャコパスのような速弾きにノックアウトされてファンになった。まだギリギリCD屋で第6、第7実験室およびグッドバイが新品で置いてあるタイミングであり、運が良かったと思っている。

 


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■「11」

11(初回限定盤)(DVD付)

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武道館を経て「消費期限偽装」により活動延長となったあといくつかのシングルを経てリリースされた。やってみたら各々がオトナになっていたことで想定以上にうまくやれそうという感触を得たということだろうが、ファンとしてはありがたい限り。石井作曲に桜井作詞というコラボレーション曲があったりと新たな試みも含みつつ、全体的には桜井の要素が強くなり、実験室的な手触りに。ただし昭和歌謡やフォーク的というよりは都会的、アーバンなテイストであり、そこが復活後らしさにも繋がっている。

 

この後、セルフカバー作などをはさみつつ野音2daysやカリガリランドなど、見せ方を模索していくことになるが、制作面では行き詰まりがあったのか、メンバー変更を迎えることとなる。

 


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■「12」

ドラム武井の脱退を経て、新メンバーを迎えるのではなくゲストとして各楽曲に合う人を割り振るというスタイル(実際はゲストを決めたあと、曲を宛て書きしたようだが)。どのドラマーも個性を発揮しており聴き応えがあるが、特に冒頭のわるいやつらでの上領の超絶ドラムには度肝を抜かれた。後にサポートとして大活躍する中西の参加も重要。各ドラマーにフォーカスしたこともあってかライブで取り上げられる機会が少なめなのは少し寂しいところ。

 


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■「13」

13(ジュウサン) 良心盤

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数字の持つ不吉なイメージをもとにふんわりとテーマを統一したコンセプトアルバム的作品。パーカッションの大家やピアノの林など豪華ゲストの活躍も素晴らしく、ダークな中でバラエティ豊かな曲が楽しめる。ツアーでは発売15周年の配布シングルもあり、私も東名阪をめぐった。ひとつのバンドのツアーに遠征してまでついていく経験をすることになるとは思っていなかったので個人的にも思い入れが強いアルバムだ。今作から最後の楽曲に桜井の重厚な曲が配されるようになる(これまでも最後は桜井曲ではあったが、ここら辺から少しモードが変わったような気がしている)。ビットクラッシャーを使った特徴的なギターの音色も印象的。

 


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■「14」

14 良心盤

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メジャーから離れ再びインディーズでのリリース。そのためか本作はサブスクには登録されていない。だんだんとメンバーたちの初期衝動的なルーツを強く感じさせる曲が増えてきているように感じる。石井の歌詞の方向性がやや変わり始めるのもこの付近で、月白に代表されるように、より平易に伝わるような言葉遣いを含むようになっていく。全体のサウンドとしてはやや分離が悪め感もあり、それも味ではあるのだが多少ごちゃっとした印象を残す。

 


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■「15」

コロナ期間中でもセルフカバーなどを発表し歩みを止めなかった彼ら。なんだかんだ毎年アルバムサイズの作品を発表し続けているのは本当に凄い。この時期のライブでは短めのセットリストで昼夜2回まわしによるツアーというスタイル。定点カメラによる格安配信も行われるなど、製作面だけでなくライブ面でも色々な試みが見られた。桜井と石井の共作となる一つのメルヘンの出来がとにかく素晴らしく、彼らにしかできない世界をまた提供してくれたと感じた。村井の曲の比重が大きくなってきたのもこのあたりからで、ヘルニアで感触を掴んだのか、石井、桜井とのバランスをとりつつ毎回印象的な楽曲を聞かせてくれている。個人的にクロマニヨンズガーゴイルも好きなので、ドラムに桐田が参加したのも嬉しかった。ニンフォマニアックでは超高速のツーバスが聴ける。

 


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■「16」

かつての人気曲リンチからつながる銀河鉄道の夜を軸にしたアルバム。石井楽曲がどんどんバンドサウンドになっていっており、よりBUCK-TICKSOFT BALLETの影響を感じる(カバーもある)うえ、ラフィンノーズや裸のラリーズなどのラフなサウンドさえも想起させる。いっぽうで村井の5弦ベース導入によるシューゲイザー的な音の広がり感であったり赤色矮星でのメタル感、狂う鐫る芥による密室感といった各自の個性がより生っぽく表出しており飽きのこない聴き応えが実現されている。これだけ各自が好きにやりつつも統一感があるのも驚異的で、バンドの状態の良さを感じさせる名作。配布音源として各種補足版も製作された。

 


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