名取さな「サナトリック・ウェーブ 夜の部 @ EX THEATER ROPPONGI 2024/09/19」

■セットリスト
01.ファンタスティック・エボリューション
02.惑星ループ(ナユタン星人 Cover)
03.ライアーダンサー(マサラダ Cover)
04.私論理(花譜 Cover)
05.夜を待つよ(Midnight Grand Orchestra Cover)
06.オドループ(フレデリック Cover)
07.弱酸性ラジオブレイク
08.おしりぷり音頭
09.ノーゲスト、イン、ザ、テアトロ。
10.アマカミサマ
11.パラレルサーチライト
12.面影ワープnano.RIPE Cover)
13.オヒトリサマ
14.ソラの果てまで
En.
15.さなのおうた。
16.足跡

 

 

いやー楽しかった。
名取さなさんは個人勢のVtuberで、2018年から活動しています。
私は比較的初期から見ているのですが、ネットミームやかつてのニコニコに詳しく、モットーである「ていねいなインターネット生活」のライン引きに共感しつつ応援しています。

 

今までも毎年3月の生誕祭イベントはあったものの、音楽だけにフォーカスした「ライブ」は初。しかも全編生バンドとあって、期待値はとても高かったです。

 

名取さんの強みとしては明瞭な発声と強靭な喉が挙げられますが、ライブ会場でもその特性が生きていました。EX THEATER ROPPONGIはかつて筋肉少女帯でも来たことがあったのですが、空間の広さもあり音像がやや飽和しがちな印象があり、今回もベースとドラムが強くでて強力なバンドサウンドが響いていました。その中でも埋もれることなく突き抜けてくるボーカルは声量もさることながら声質、発声の素晴らしさが大きく、「はじめて聴く新曲なのに歌詞がバッチリ聞き取れる」というのは稀有な体験でした。

 

ステージは通常の舞台にバンドメンバーが陣取り、名取さんは上部に設置されたスクリーン部分にて歌う形式。この配置はVtuberならではの強みだなとうならされました。スクリーン部もレイヤーが2枚あったように見え、背景との奥行まで感じられて「そこにいる」感が強く、かなり良かったです。

 

セットリストは今回のライブに合わせて制作された「Sanatric Waves」収録の新曲5曲を軸に、過去曲のバンドアレンジやカバー曲を追加したもの。特にカバー曲群は名取のこれまでの活動でも取り上げられたものであったり、これまでに関わりのあったVtuberの楽曲だったりと文脈が感じられる曲が多めでした。

 

中でも印象的だったのはやはり「惑星ループ」で、最初の歌ってみた動画曲でもありました。ニコニコのイベントに出演したときにも取り上げられた楽曲で、その時は左右に動く「アイドルステップ」で乗り切ったことがしばらく語り草になっていましたが、今回もそのステップを軸にしたパフォーマンスで、かなりエモを感じられました。

 

中盤のハイライトは「弱酸性ラジオブレイク」。楽曲の中盤で強引に「おしりぷり音頭」が接続され、和太鼓まで登場するというカオスっぷりは思わずにやけてしまいました。X JAPANのライブでドラマーがピアノに移動するのは観たことあるけど、ドラマーが和太鼓に移動しておしりぷり音頭が始まることってあるんだ…。

 

ここまでもかなり満足度が高かったのですが、続く新曲「ノーゲスト、イン、ザ、テアトロ。」からさらにギアが一段上がった感。スクリーンの映像表現が増し、先日のMETA=KNOTも思い起こさせるような没入感のある、空間全体を支配するような視覚表現に圧倒されました。楽曲自体も素晴らしく、場面転換しつつしっとりと歌い上げるさまに感動しました。

 

過去楽曲のバンドアレンジ版も面白く、「パラレルサーチライト」は「Sanatric Waves」にもバンド版として収録。原曲から高音がすごいイメージがありましたが見事に再現できておりスゲエ…となりました。本編最後の新曲「ソラの果てまで」もかなり印象的で、「鈍色」という単語がここまで印象的に響くというのもなかなかないな…などと思いながら聴いていました。そこはかとなく薫るシューゲイザー感。

 

アンコールは「さなのおうた。」で、MVを後ろに流しつつ、時にMVと同じポーズをちりばめつつのステージングでさすがに感動的。コールアンドレスポンスも最高潮でしたね。なお、コーレスは全編通して絶好調で、よく見るライブではバンドからの問いかけに対しファンが「群」として答える(イエーイとか、わーとか)タイプが多いのですが、名取のライブではファンがそれぞれ「個」として答えようとしており、名取も面白いコメントを拾って答えようとしている感があってここも配信っぽさを感じさせとても良かったです。だからこそ、楽曲のなかで「群」として掛け合いをするところが心地よいのかもしれませんね。

 

最後は「足跡」。ぼざろ的リードギターやDjent的オシャレアレンジが印象的な曲です。これをやったら終わってしまう、と名残惜しそうでしたが新曲群の中でも特にエモーショナルなこの曲で締めるのは最高に決まっており、今後への希望も持たせた最高の1stライブだったと思います。

 

昼公演、夜公演ともに配信チケットも買っているので、このあとじっくりと噛みしめながら見直したいと思います。

 

全体的に、「名取さな」のこれまでの総括でありつつも今後への期待を感じさせる内容だったと思いますし、さらにはVtuber文化を追ってきた人にも様々なことを思い出しつつ見ることができる多層的なライブだったと思います(ライブで新曲を多数放り込んでくるところなんかも、花譜さんのファーストライブを思い出したりしました)。さまざま告知もありましたし、これからの活動にも期待です。