トベコンチヌエド。

CDやコンサートの感想を主に書いています。

2025年ベストアルバム

今年も面白い作品が多数ありました。
いわゆる新しい試みであったり、多層的であったり、ハイコンテクストであったりの素敵な作品も色々あったのですが、とはいえ年末に振り返りとして挙げるのならば自分の身体に染み込んでくれた、馴染んでくれた作品にするべきでしょう。
というわけで私の今年の10枚はこれです。

 

 

1. Vildhjarta - + där skogen sjunger under evighetens granar +
2. cali≠gari - 18
3. Steven Wilson - The Overview
4. ザ・クロマニヨンズ - JAMBO JAPAN
5. 明日の叙景 - Think of You
6. downy - 第八作品集『無題』
7. Dream Theater - Parasomnia
8. 聖飢魔II - Season II
9. ART-SCHOOL - Dreams Never End
10. Beat - Live

 

■コメント

1. Vildhjarta - + där skogen sjunger under evighetens granar +
今年知ったバンド。とにかくdjentを経由しつつもさらに独特なリズムセンスに脱帽。様々な要素を詰め込みまくりつつもなぜかキャッチーという印象に落ち着かせるあたりも恐ろしく、聴きやすいバランス感だと思います。個人的にはこれくらいの複雑さまでがギリギリ気楽に楽しめるレベルで、これ以上難解になられるとちょっと修業が必要になってくるよなという感触。

 

2. cali≠gari - 18
期待していたバンドが期待通りのものを仕上げてくれるという幸福。ここ数年のcali≠gariはあきらかにゾーンに入っていて、リリースペースとクオリティを両立させた精力的な活動をしてくれています。近作では彼らの影響元のミュージシャンの逝去などを思い起こさせるしっとりとした感触もあったのですが、今回はそれらを一旦置いて、かつての実験室と銘打ったアルバムタイトルにしていた頃のようにそれぞれのメンバーの実験を盛り込んだ感じ。打ち込み多用をやり尽くしてきた石井によるバンドサウンドへの傾倒、テーマやストーリーを生成AIとの対話で練り込んだ桜井による世界観、プログレな楽曲をプログレさを保ったままアレンジされた村井曲など、まだまだ新要素は打ち出せるぞという気概を感じます。

18「良心盤」 - cali≠gari

 

3. Steven Wilson - The Overview
キングクリムゾンやイエスでのエンジニアとしての仕事も有名ですし、数年前のバンド再始動でのポーキュパイン・ツリーも素晴らしかったですが、やはりスティーブン・ウィルソンのコアはソロワークなのかなと思います。かつての昔懐かしいプログレを踏襲したレイヴンや、その後、本来のプログレッシブを探求し電子的な処理なども取り入れたアルバムなどを経由した今作は大曲2曲だけという極端さ。これまた昔懐かしの大艦巨砲主義的なプログレかと身構えてしまいますが、どちらかというとサウンドトラック的な聴き方ができる構成になっており、クラシック的な言い方をすると交響曲でなく交響詩という感じ。現れる場面場面で彼の魅力…じっとりとした歌心やアグレッシブなバンドサウンドを堪能でき、たいへん聴き心地がよいです。

 

4. ザ・クロマニヨンズ - JAMBO JAPAN
もうとっくにクロマニヨンズが一番長いんですよね。ブルーハーツよりも、ハイロウズよりも。かねてから何をやるかよりどうやるかに重きを置いてきた彼らですが、今作は何かが今までとは違うような…。いや、モノラルからステレオに戻ったんだねとかそういうことも言えなくはないのですが、作品全体がまとう空気感が何か吹っ切れたようなものを感じるのですね。久しぶりに真島ボーカル曲があるのも嬉しいところ。何度も聴きたい、好きなアルバムです。

 

5. 明日の叙景 - Think of You
前作アイランドで飛躍を遂げた彼ら。あれ以上のものを作るのは相当なハードルだったかと思いますが大健闘。前作はポストブラックメタルとしての特徴が強く出ていましたが、さらにそこから日本の大衆音楽的要素…ポップス的であったり、ヴィジュアル系的であったり、アイドル的であったり…を大増量。和音階を使ったりしているわけでもないのにどうしようもなく日本的というたいへん個性的なサウンドです。これはメンバーたちの旺盛な好奇心がなせるものといえ、貪欲に吸収を続ける彼らの今後が気になりますね。

Think of You

Think of You

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6. downy - 第八作品集『無題』
彼らへの印象といったら正直なところ複雑、難解。今作でもそういった要素は多々あります。リズムや拍子は把握しづらく、メロディもふわふわととらえどころがない。しかし今作が今までで一番リラックスして聴けるのはどこか作品全体を包み込む慈しみのようなものが感じ取れるからなのではないかと思います。切れ味の鋭さより染み入るような拡がりを。ひりつきこそ薄まったものの世間がひりついている現在にあたってはたいへん心地よく響きます。感謝。

 

7. Dream Theater - Parasomnia
オリジナルドラマーのマイク・ポートノイの復帰。期待通りの味を提供してくれるというところはさすがです。テクニカルなプログレメタルの代名詞とでもいうようなバンドではありますが、もう彼らはそこでの競争からは降りていて、よりテクニカルにという欲求より、より自分たちの描きたい世界観をという方向に完全にシフトしているように感じます。それでもマンジーニ在籍時は複雑なリズムの絡み合いなどが他の追随を許さない感はあったのですが、ポートノイはよりシンプルでわかりやすく、しかしだからこそパンチ力があるという作品に仕上がっています。個人的にはマンジーニ期にもかなり思い入れがあるので複雑な心境ですが、とはいえ素直に楽しめる強力なアルバムであることも事実。復帰体制が落ち着いた後の次作の方向性が気になります、

 

8. 聖飢魔II - Season II
コロナにより5年周期の再集結サイクルが崩れた結果、普通に活動再開して大経典(アルバムのようなもの)も2枚目が出た聖飢魔II。信者(ファンのようなもの)としては純粋にうれしい誤算。ミサ(ライブのようなもの)ではサポートを入れていることなどからもわかる通り、ルークの曲ではいわゆる速弾きのようなものこそ見られなくなっていますが、ヨーロピアンなルーク、アメリカンなジェイルという2人のギタリストの曲の味わいの違いも楽しく聴けます。また、闘病を経て復帰したデーモンの歌唱が凄まじく、年齢を感じさせないシャウトのキレっぷりには圧倒されました。ここからがシーズン2というのもやる気が漲っていて素晴らしい。

 

9. ART-SCHOOL - Dreams Never End
ART-SCHOOLのトリビュートアルバム。私は彼らの熱心なファンだったというわけではないのですが、手練のバンドたちに再構成された楽曲を聴くことで、翻ってART-SCHOOLの曲の素直な良さに気付かされました。あらためてしっかり掘ってみようと思えた素晴らしい企画だと思います。色々な楽曲のフレーバーを盛り込んだアジカンや、原曲の味そのままに毒をひとつまみしたピープルあたりがとくにお気に入り。

 

10. Beat - Live
キング・クリムゾンディシプリン期の楽曲をメインに演奏するバンドのライブ盤。というとカバーバンドのようですが、ギター・ヴォーカルのエイドリアン・ブリューとベースのトニー・レヴィンが当時のメンバーなので、ほぼセルフカバーと言えるでしょう。当時の複雑な楽曲をヴァイ、ダニー(TOOL)といった凄腕を迎えて切れ味鋭く再現。クリムゾンのファンとしてはロバート・フリップの偏屈な香りがないので完全に別物ではあるな、という感じもありつつ純粋にあの時代の楽曲たちの新解釈は面白く、かなり楽しめました。フリップがフルピッキングでこなしたフレーズをタッピングにしたりというヴァイの翻案がやはり見どころですし、トリプルドラムクリムゾンでも取り上げられていなかった楽曲などが聴けるのも嬉しいところ。いっそこのままオリジナル曲に発展してみるのもアリなのでは?と思いますが、どうなるやら。