東京佼成ウインドオーケストラ「第152回定期演奏会」

 

01.「グレの歌」のモチーフによるファンファーレ(A.シェーンベルク)
02.吹奏楽のための「幻想曲」ーアルノルト・シェーンベルク讃ー(尾方凛斗)
03.映画の一場面への伴奏音楽(A.シェーンベルク/大橋晃一)
04.ミス・サイゴン(シンフォニック・ポートレイト)(C.M.シェーンベルク/J.デ・メイ)
05.ラ・マルセイエーズ(C.J.R.ド・リール/大橋晃一)
06.「レ・ミゼラブル」セレクション(C.M.シェーンベルク/大橋晃一)

 

 今回のTKWO定期はシェーンベルク姓を持つ2人の作曲家にスポットを当てた企画。
かたや現代音楽、かたやミュージカルというかなり振れ幅の大きくなりそうな企画ですが、A.シェーンベルクが映画を想定して書いた楽曲を入れてみるなど統一感もあり面白かったです。

 

 前半はA.シェーンベルク。ファンファーレは2分ないくらいの短い作品ですが3つのモチーフが登場。TKWOの金管セクションはいつも通りの上品な響きで、コンサートの開幕にふさわしい演奏でした。特に冒頭のホルンはバッチリきまっていて痺れました。

 

 次はA.シェーンベルクのOp.47を下敷きに作曲された2020年(および2021年)の吹奏楽コンクール課題曲5番。こういった現代音楽の作品は現場で聴いてこそわかるものが多く、不協和音のヴェールの中から印象的な旋律が浮かび上がってくるような様はとても綺麗でした。川瀬氏の棒は情熱的ながらも非常に明快で、場面の展開があざやか。後半のテンポが速くなった箇所はとくに見事でした。

 

 映画の一場面への伴奏音楽は「迫りくる危機」「破局」「不安」のシーンを想定して書かれたものらしく、確かにそれらの緊張感あるシーンはA.シェーンベルク向きかもしれません。メロディらしいメロディはないとはいえ十分に和声的で、身構えていたよりすんなり聴けました。劇伴ということもあり弱奏でこまやかな表現が求められる箇所が多かったですがTKWOはさすがの集中力。

 

 ミス・サイゴンは7分程度の宍倉版がよく吹奏楽コンクールで演奏されていましたが、今回はデ・メイ版の20分程度のアレンジ。使われるモチーフは近いもののこちらは1曲に割かれる時間が多く、よりたっぷりと原曲のメロディを楽しむことができました。

 

 ラ・マルセイエーズはフランス国家。今回はレ・ミゼラブル前奏曲として3分程度にアレンジされたものでそのままレ・ミゼラブルに入る演出。薄めのサウンドから始まって盛り上がるさまは単品で聴いたとしてもかなりよさそうな感触でした。

 

 そしてメインのレ・ミゼラブル吹奏楽シーンではオペラやミュージカルを取り上げられることは多いですが、今回のように1つの作品に40分も割ける企画は初めて見たかもしれません。もとが歌の曲を管楽器向けにアレンジするので、その過程で「歌詞」は失われることになります。その結果、歌詞が変わる、いわゆる「2番」のような箇所が管楽器だと「繰り返し」になってしまい、メドレーにする際などは省略されることがよくありますし、確かに理屈はわかります。しかし、実際にたっぷり時間を使った編曲として聴いてみてわかりましたが、たとえ歌詞がなくともメロディが繰り返されることにはやはり意味があるし、長い時間をかけるということは実は大事なのだな、と感じました。もちろん編曲もただ繰り返すわけではなくメロディの担当が変わったりと趣向が凝らしてあるので飽きるというわけではありません。オペラやミュージカルの編曲ものは今までパフォーマンス重視の少し軽めなもの、という認識でしたが、こういった取り組みであればもっと聴いてみたいと思わされました。

 演奏も素晴らしく、特に各ソロは最高でした。ソプラノサックス、トロンボーンは特に印象的でしたね。ここでも川瀬氏は情熱的かつスタイリッシュな演奏。特にトゥッティでの強奏でのあおりっぷりはものすごく、TKWOがここまで音量を出しているのは久しぶりに聴いたかもしれません。

 

期待していたよりさらに濃厚なよい演奏会でした。
次回の定期は4月末の予定。こちらも楽しみです。

Sound Horizon「絵馬に願ひを!」が凄い

Sound Horizonの新作「絵馬に願ひを!」が凄い。

とにかく今回も情報量が多いため、まだ味わい尽くせてはいないのだが、私が感じた「凄いポイント」について書いてみる。

 

■前提条件

・ネタバレを含みます。

・筆者は「イドに至る森に至るイド」からのいわゆるメルヒェン新規ローランです。

・絵馬については楽曲はすべて聴いたと思いますが視聴できる可能性が低い何かについては未遭遇です。 

 

 

 

 

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今年聴いたメタルとか

自分のツボにジャストではなかったためベストトラックやベストアルバムには入れなかったものの面白かったアルバムというのがたくさんあったので記録しておきます。

 

どれも面白いのでオススメです!

 

抜粋版こちら 

 

 勇壮なジャパメタ。

 

フィンランドの重鎮ブラックメタル

 

メシュガー的なリズムとクリーンな女性Voが錯綜するモダンなメタル。

 

とにかく攻撃的でパンチがあるデスメタル

 

Queen的な要素を入れたシネマティックな良盤。

 

聖飢魔Ⅱ初期の楽曲を担ったダミアン陛下による新作。

 

クリストファー・アモットらを加えた新体制。

 

シューゲイザーブラックメタルのライブ盤。

 

渋さが光る日本発デスメタル

 

Djentの流れを汲んだV系メタル。

 

ケニア発のグラインドコア

 

非常にかっこいいラップメタル

 

芳醇なプログレ要素。

 

安心のフォークメタル。とにかく楽しい。

  

 

 

筋肉ギターでおなじみ。

 

 

サン・ラーのような混沌としたサウンドがくせになる。

 

壮大な音世界は健在。

 

 

 

 

インド発ブラックメタル。クラシカルな音世界が素敵。

 

 

CDに付属のDVDが非常に素晴らしかった。

 

 

 

来日公演を思い出して最高。

 

アンドロメダの破壊力。

 

いつもより短い尺の楽曲で聞かせてくるスタイル。

 

泣きのギターメロディ…。

 

 

2020ベストトラック

今年も選びました。

Anaal Nathrakh「Endarkenment」

DIMLIM「MIST」

Steven Wilson「PERSONAL SHOPPER」

大槻ケンヂと絶望少女達「あれから」

THE NOVEMBERS「理解者」

寺尾紗穂「やくらい行き」

John Petrucci「Terminal Velocity」

宇多田ヒカル「誰にも言わない」

長谷川白紙「シー・チェンジ」

波多野裕文「継承されるありふれたトラの水浴び」

 

 

Anaal Nathrakh「Endarkenment」

アルバムに先駆けてリリースされたこの楽曲のサビの破壊力には悶絶させられました。今までのような暴力性もありつつ、さらに泣きのフレーズが強力になるとは…。

 

DIMLIM「MIST」

メタル的な音像が主流になっていたヴィジュアル系においてDjentの流れを汲みCHONPolyphiaといったインストの流行りなども感じさせるハイセンスな音像に移行。組み合わせの妙というか新たな方向性の1ページになったように感じます。

 

Steven Wilson「PERSONAL SHOPPER」

プログレ大御所との仕事に加え自身のソロワークでも良質なプログレッシブロックを制作し続けているSWの新作。アルバムは来年に延期されましたが先行シングルとしてこれがリリースされました。4つ打ち的なビートに乗せて展開される世界は今までのプログレ路線からは明らかに別世界。新たな挑戦に期待が広がります。

 

大槻ケンヂと絶望少女達「あれから」

さよなら絶望先生は特撮による楽曲群がいずれもハイクオリティで、もはや特撮の名盤としての扱いにしてもよいくらい素晴らしいものでしたが、10年経ってこんな最終章が追加されるとは。当時に追っていた人間には響きまくる内容でオーケンには感謝しかありませんね。

 

THE NOVEMBERS「理解者」

ノベンバーズ新作はyukihiro氏を迎えとてもインダストリアルで硬質なサウンドに。これがまたハマっていて非常にかっこいいんですね。これと今までのバンドサウンドを踏まえた次の一手にも期待してしまいます。

 

寺尾紗穂「やくらい行き」

シンプルな楽曲ながらも心に残る寺尾のアルバムから。綺麗なホーンの音色が染みます。シンプルに大好き。

 

John Petrucci「Terminal Velocity」

ペトルーシの新作はまさかのポートノイ参加。そして名盤です。ポートノイのいい具合でのラフなドラムが楽曲へのダイナミズムを与え、ペトルーシのギターもメロディを大事にしつつ弾きまくっています。

 

宇多田ヒカル「誰にも言わない」

宇多田の新曲はこれとTimeがありましたが、個人的にはこちらを推します。浮遊感のある譜割りのメロディにどこか無常観を感じさせるサウンドは中毒性がありますね。

 

長谷川白紙「シー・チェンジ」

長谷川白紙の新作は弾き語り。名曲のカバーの見事さ、特に高速ビートなどを弾き語りで表現してしまうアレンジも最高でしたがオリジナル曲での抒情性も素晴らしく印象的でした。

 

波多野裕文「継承されるありふれたトラの水浴び」

ライブハウスのクラウドファンディングのリターンとしてリリースされた楽曲。波多野ソロ作品を踏襲したサウンドではあるのですが、歌詞はより生活に密着したというか耳に痛いという内容で刺さりました。

2020ベストアルバム

今年も選びました。

Anaal Nathrakh「Endarkenment」

BUCK-TICK「ABRACADABRA」

BORISNO

GEZAN「狂(KLUE)」

DGM「Tragic Separation」

Phew「Vertigo KO」

アーバンギャルド「アバンデミック」

須川展也「バッハ・シークェンス」

米津玄師「STRAY SHEEP」

SLAVE.V-V-R「EDEN of SLAVE」

 

 

Anaal Nathrakh「Endarkenment」

 

毎回奇怪なブラックメタルを届けてくれるAN。ハイテンションで狂ったような激しいパートとサビでのクリーンボイスによるエモーショナルな歌い上げが持ち味ですが、今回は激しいところはさらに激しく歌い上げはさらに泣きのメロディを入れてきています。歌詞や楽曲の説明がブックレットに明記されているのも今までと異なる点で、これまでは総合的なサウンドとしての主張だった社会への批判的な目線がよりわかりやすく提示されているように感じました。

 

 

BUCK-TICK「ABRACADABRA」

 

制作の終盤からCovid-19が猛威を振るい始め、どうなるかわからない空気の中で完成されたアルバム。この状況になってから作られたのは「ユリイカ」のみですが偶然にもアルバム全体のテーマが「逃避」であり、今年の空気感をパッケージした作品にしあがりました。ここ数作での彼らの作品に比べ、歌詞もより現実世界に近い描写がされており、より幅広い層に共感しやすい内容になっています。B-Tに興味はありつつもハマりきれていなかった私にもこのアルバムは強く刺さりました。

 

 

BORISNO 

NO

NO

  • アーティスト:Boris
  • 発売日: 2020/11/11
  • メディア: CD
 

 

ノイズにまみれた強烈なサウンドのイメージであったBORISの新作はこの情勢を受け、より肉体的というか直感的なサウンドに。

いろいろな実験的要素を経過してきたうえでの直感的でメタリックなサウンドはただひたすらにカッコよく痺れました。

 

 

GEZAN「狂(KLUE)」

 

奇しくもCovid-19以前までの閉塞感のようなものを切り取ったスナップショットとしての見え方もできるアルバムになりました。ほぼ一定のテンポで進みつつ「今」に最大限にフォーカスした詩をつづっていく様はヒリヒリとリアルです。

 

 

DGM「Tragic Separation」

 

イタリアのプログレメタルの最新作。もともとDream TheaterSymphony Xのいいとこどりをしたようなテクニカルさ、ヘヴィさが好きなバンドでしたが、今までよりアルバム全体としてのクオリティがさらにグッと上がってきたなという印象。シモーネのギターメロディもよりオリジナリティが増し、サウンドもアリーナを思わせる壮大なものに。これからも楽しみなバンドです。

 

 

Phew「Vertigo KO」

 

かつてアーント・サリーVoをつとめたPhewの新作は朝から夜への一日を思わせるアルバム。楽曲自体はいろいろな時期につくったものをまとめたもののようですが、近年のPhew電子音楽や声だけのアルバムのような挑戦的な表現のうちの濃い部分がうまく切り取られているように思いました。テレワーク期間ではこういったアンビエント的な音像を聴くとなぜか落ち着いたんですよね。

 

 

アーバンギャルド「アバンデミック」

 

なんと今年2枚目のアルバム。前作はメンバー脱退を受けての現状把握的なアルバムでしたがこちらは世情を受けての非常にハイテンションな楽曲群が並びます。2011年のガイガーカウンターカルチャーしかり、世間への批評的な目線が必要になるときに彼らは真価を発揮するのかもしれません。状況に怒るのでもなく諦めるのでもなくポジティブにネタとして昇華していく姿勢は素晴らしいと思います。

 

 

須川展也「バッハ・シークェンス」

 

サクソフォンでやる必然性が見つかるまでは…と今まで手を出していなかったバッハに須川がついに挑戦。無伴奏のサックス一本によるアルバムであり、これもCovid-19時代のひとつの回答といえるでしょう。須川の音色はもちろん今まで通りの「須川の音」なのですが、こう歌うのだという確信を持った音楽の推進力が耳を奪います。

 

 

米津玄師「STRAY SHEEP」

 

やはりこれを外すわけにはいきませんでした。そこまで熱心なリスナーというわけではないのですが、パプリカをはじめ海の幽霊、Lemon、感電といったここ数年を代表する名曲が複数収録。ミドルテンポの曲が多くなっていてかつての高速な楽曲群が恋しい気持ちもありますが、これらの不思議なコード感を無意識に聴きながら育った世代がどうなるのかという点にも期待がふくらみます。

 

 

SLAVE.V-V-R「EDEN of SLAVE」

 

楽曲を発表するたびに引退するのでおなじみのボーカロイドPによるサブスクリプション形式のアルバム。月額支援を行うとアルバムを聴くことができるのですが、毎月数曲が追加されるため理論上は永遠に完成しないアルバムになっています。月額支援のリターンとして楽曲をリリースするだけであればありがちなのですが、あくまでもアルバムの一部が拡張するという扱いにしたところに個性が光ります。楽曲間での世界観は共有されており、架空の惑星に生息するキャラクターたちを描いたコンセプトアルバム的な聴き方が可能です。さらにブックレットにもこだわりが詰められており、自身で作成した3Dモデルのキャラクターを使用した一枚絵や地図なども存在。キャラクターがだいぶ増えてきたのでここからキャラクター間の絡みなどにも発展できそうでとても可能性を感じます。月間少年漫画雑誌として聴ける音楽アルバムとしておすすめ。楽曲としてはジャズやロックを素地にしたポップソングで、ジャズからのオシャレコードとロックからの攻撃力、ボカロ文化からのキメやポップネスが融合している感じ。特に語感を最大限に生かしたキメの作りこみは独特の中毒性を生んでいます。

Trouvère Quartet「トルヴェール・クヮルテット ライブ&オンライン ハイブリッドコンサート」

トルヴェールの配信を観ました。

 

■セットリスト

01.アメリカより第1楽章

02.トルヴェールの惑星より「木星

03.アヴェ・マリア須川展也)

04.「このかけがえのない日々へ」より君からのプレゼント(彦坂眞一郎)

05.カルメン・ラプソディー

06.「トルヴェールの四季」より春 第1楽章

 

01.アメリカより第4楽章

02.モーツァルトはなべてこうしたもの

03.ロンドリデリーの歌(神保佳祐)

04.チャルダッシュ(田中靖人)

05.トルヴェールの惑星より「地球」

06.G線上のアリア

 

トルヴェール・クヮルテットは日本を代表するサクソフォン四重奏の一つ。今回は1時間程度のステージを2回まわし、ただし完全に別プログラムという構成でした。

 

第1部はドヴォルザークアメリカから。この楽曲はかつて私も編曲・演奏したことがあるのでよく知っているのですが、弦楽器の音域を忠実にトレースし、各奏者の技量が発揮されるような編曲になっていたと思います。続く「木星」は名盤「トルヴェールの惑星」から。さすがに手慣れたもので、編曲の遊びを最大限に引き出しつつも上品さを失わない絶妙な演奏でした。

 

ソロパートは須川、彦坂による演奏。須川はグノーのアヴェ・マリアで、彼の持ち味である音色を存分に堪能できる選曲でした。これは現地で聴いたら素晴らしかっただろうなと。彦坂は自身のソロアルバムから「このかけがえのない日々へ」というオリジナル曲の一部を演奏。佐橋俊彦による楽曲で、さまざまなスタイルでの演奏を行う彦坂らしい選曲。特に後半の盛り上がりは胸が熱くなる名演でした。

 

カルメン・ラプソディーでは遊び心を爆発。レコーディングも2回されている十八番といえる楽曲ですが、編曲にほどこされた仕掛けをさらに増幅しより面白く仕上げようとする心意気はさすがです。「サンタルチア」部分では楽器を置いてマスクを着用の上サンタルチアするというウケ狙いも披露。こういった宴会芸タイプの遊びはやはり小編成で映えますね。アンコールは四季より春でさわやかに終演。

 

第2部はアメリカの4楽章。こちらも1楽章と印象は同じでしたが、フラジオやダブルタンギングといった技を遠慮なく使えるというのはやはり強いですね。続く「モツなべ」ではカルメンに増して遊び心満載。遊びすぎて奏者が笑ってしまう部分もありましたが、彼らの「とにかく楽しいようにやる」というプレイスタイルがよく表れている瞬間になっていたかと思います。

 

ソロパートでは神保、田中による演奏。神保はロンドンデリーの歌を真島俊夫編曲で。オシャレなコードの上でふくよかなテナーの音が楽しめる時間でした。チャルダッシュは田中の十八番。非常にテンションの高い演奏でバリトンの機動力を堪能しました。

 

トルヴェールの地球は「トルヴェールの惑星」の終曲。それまでの惑星のモチーフが顔を出したりと非常に内容が濃く難易度も高い楽曲ですが集中力の高いよい演奏でした。中間部のアルトからテナー、そしてソプラノへの受け渡しは絶品。最後の第一組曲への盛り上がりも圧倒的でした。アンコールはG線上のアリアでしっとりと。

 

トルヴェールの音色、技巧、遊び心といった要素を詰め込んだ内容でとても良かったと思います。現メンバーになってからの音源もリリースを期待してしまいますね。

「カプースチン追悼コンサート 20201106」

カプースチンの追悼コンサート配信を観ました。

 

■セットリスト

01.「8つの演奏会用エチュード」より5番(紀平凱成)

02.「24の前奏曲」より11番、24番(紀平凱成)

03.「8つの演奏会用エチュード」より1番、3番、7番(角野隼斗)

04.「24の前奏曲」より1番、9番、12番、17番(The Rev Saxophone Quartet)

05.連弾のためのカプリッチョpiaNA

06.2台ピアノのためのディジー・ガレスピーのマンテカによるパラフレーズpiaNA

07.「フルートとチェロとピアノのための三重奏曲」Op.86 第2,3楽章(大塚茜、金子鈴太郎、川上昌裕)

08.「ピアノ五重奏曲」第1楽章、第4楽章(クインテット・ディ・ピアノフォルテ・ラ・スペランツァ

09.「ヴァイオリンソナタ」op.70 第1楽章(坂口弦太郎、川上昌裕)

 

カプースチンの楽譜出版に大きく貢献し、自身も演奏活動を通じてカプースチン作品を広めているピアニスト川上さんを中心にカプースチン演奏を行っている演奏家が集まっての演奏会でした。

 

まずは紀平凱成。若いながらも安定した技術とはつらつとした表現でカプースチンの音楽の楽しさを引き出した演奏でした。24の前奏曲からも難しい楽曲がセレクトされ聴きごたえがありました。

 

角野隼斗はyoutubeでの活動も活発(以前、「蠍火」の演奏動画をみておどろいたことがあります)。ここではカプースチンの代表曲「8つの演奏会用エチュード」に即興演奏をまじえての疲労。流れるような華麗な演奏が印象的でした。ダイナミクスのメリハリも含め、楽曲を自分のものにしていました。

 

The Rev Saxophone Quartetは「24の前奏曲」をサクソフォン四重奏用に編曲したものから数曲をセレクトして披露。メンバーによる編曲とのことですがサクソフォンの音色の強みを活かした面白い仕上がりになっていたと思います。管楽器らしいアタック感を出したかと思えばホーンセクションのようにきれいに和音を組んでみたりとカラフルでした。

 

piaNAカプースチンに委嘱したという楽曲を含めた連弾用の2曲を演奏。特に2曲目の「マンテカによるパラフレーズ」はもともと2台ピアノのために書かれたものですが1台ピアノで再現。曲芸のようなくぐりぬけなどを含んだ演奏でLes Frèresを彷彿とさせました。演奏技術も素晴らしく、まさにパフォーマンスといった内容でした。

 

大塚茜、金子鈴太郎、川上昌裕による三重奏は演奏しなれたメンバーというだけあり安定したサウンドカプースチンは自身もピアニストであったことからピアノの比重が高いかと思いきや、三者が対等なバランスで書かれており、チェロがウッドベース的なフレーズを弾いたりと変幻自在さが面白かったです。

 

クインテット・ディ・ピアノフォルテ・ラ・スペランツァはピアノ五重奏。こちらもピアノと弦楽のやりとりを面白く聴きました。ピアノの打鍵音をアクセント的に使ってビート感を演出していて、とてもキャッチーで聴きやすいサウンドに仕上がっていましたね。

 

最後は坂口弦太郎、川上昌裕によるヴァイオリンソナタ。演奏開始直後に弦が緩んで仕切り直しになるハプニングもありましたが、逆に会場の空気もあたたかくなってよい雰囲気での演奏だったように思います。

 

カプースチンへの想いの詰まったとても楽しい演奏会でした。演奏難度が高い曲が多いですが、これからも演奏し継がれていって欲しい曲たちですね。