DGM「Italian Metal Carnival @ Holiday Shinjuku 2024/11/04」

DGMの来日を観てきました。
最新作が素晴らしかった彼らですが、2Daysのうちこの日は前作「LIFE」多めのセトリとのこと。
同じくイタリアの初来日組であるNekomataとLunaseaも一緒に見ることができるお得なライブでした。

 

■Nekomata
イタリアのメタルコアバンド。歌メロとシャウトを器用に使いわけ、飽きさせないステージングでした。バンド名も日本語からですが、楽曲も日本語バージョンがあるようで、親しみやすいですね。

 

■Lunasea
イタリアのメロディックデスメタルバンド。
北欧のメロデスとはやや方向性が違い、歌唱も含めてのメロディアスさや展開のプログレさでエモーショナルさを組み立てていく形でした。メリハリのきいたドラムも好印象で、とても気に入りました。

 

■DGM
01.The Secret (Part I)
02.The Secret (Part II)
03.To The Core
04.Hope
05.Repay
06.Eve
07.Surrender
08.Unravel The Sorrow
09.Land Of Sorrow
10.Ghosts Of Insanity
11.Neuromancer
En.
12.Reason
13.You Wa Shock

 

イタリアのプログレメタルバンド。
初期メンバーの頭文字からとられたバンド名ですが、メンバーチェンジを繰り返し、DGMの由来となった3名は既に入れ替わっています。
ヴォーカルが現在のマーク・バジルになってからは不動のラインナップで、特にギターのシモーネ・ムラローニはプログレメタル界の中でもトップクラスの実力者、かつほかのイタリアンメタルのバンドのレコーディングもサポートしている重要人物です。

 

彼らの音楽性はDream TheaterやSymphony Xの影響を強く感じさせつつもイタリアらしいポジティブかつメロディアスなサウンドを特徴としており、演奏力、曲の良さどちらも好みだったので一度は見ておきたいと思っていました。ついに叶って感無量です。

 

セットリストは2013年の「Momentum」以降から選曲。まず演奏がはじまってすぐに感じられたのはマーク・バジルの圧倒的歌唱力。イヤモニが多少不調っぽい仕草を見せる瞬間もあったものの、まったく揺るがない声量とピッチに驚かされっぱなしでした。また、ギターのシモーネとキーボードのエマニュエルのソロバトルもスリリングかつ安定感抜群で、このスタイルのプログレメタルに求める聴きたいものがばっちり聴ける、とても満足度の高い演奏でした。

 

多めに選曲された前作、前々作はそこまでがっつりと聴き込んだわけではなかったのですが、ライブで聴く「Surrender」にはたいへん感動しました。2016年の「The Passage」はとても好きなアルバムだったので、「Ghosts Of Insanity」はとても嬉しかったです。この曲はシモーネもヴォーカルを取るのですが、歌もめちゃくちゃ上手いんすね…。

 

アンコールの「Reason」では中間部でマイケル・ロメオを思わせるテクニカルフレーズのキーボードとの高速ツインがあり、これが特に観たかったので実演に触れられてラッキーでした。バランス的にはややギターソロ小さめで聴こえづらい箇所はあったものの、流麗なピッキングとタッピングに惚れ惚れしました。そしてライブだととにかく速い速い。ドラムのファビオも楽しそうにえげつないフレーズを叩いており、あらためてバンド全体の実力を感じました。

 

最後は日本での人気に火が付くもととなった北斗の拳カバー。メンバーが入れ替わってからもやってくれているのは嬉しいですね。当時の音源とは違いヴォーカルは全編マークがとるのですが、ハイトーンが伸びる伸びる。聴きたいものが全て聴けたという感じで大満足でした。できるなら最新作からの曲も見たいところではありましたが、2日目は仕事などの都合で断念。最新作も最高の出来だったことですし、ライブ作品とか出ないかな…とか期待しちゃいますね。今回は8年ぶりの来日だったようですが、ぜひまたそんなに遠くない日に来日してほしいものです。

 

ZAZEN BOYS「ZAZEN BOYS MATSURI SESSION @ 日本武道館 2024/10/27」

ZAZEN BOYSを初めて生で観てきました。しかも武道館。凄まじかった。

 

■セットリスト
01.You make me feel so bad
02.SUGAR MAN
03.MABOROSHI IN MY BLOOD
04.IKASAMA LOVE
05.HIMITSU GIRL'S TOP SECRET
06.RIFF MAN
07.Weekend
08.バラクーダ
09.八方美人
10.This is NORANEKO
11.杉並の少年
12.チャイコフスキーでよろしく
13.ブルーサンダー
14.サンドペーパーざらざら
15.ポテトサラダ
16.はあとぶれいく
17.ブッカツ帰りのハイスクールボーイ
18.破裂音の朝
19.I Don't Wanna Be With You
20.Sabaku

21.公園には誰もいない(休憩)

22.DANBIRA
23.USODARAKE TAKE2
24.安眠棒
25.黄泉の国
26.COLD BEAT
27.HENTAI TERMINATED
28.HARD LIQUOR
29.HARAHETTA(Intro)
30.6本の狂ったハガネの振動
31.Honnoji
32.半透明少女関係
33.CRAZY DAYS CRAZY FEELING
34.YAKIIMO
35.永遠少女
36.乱土
37.胸焼けうどんの作り方

En.
38.KIMOCHI

 

休憩を挟んでいるとはいえ30曲以上の超ロングセット。かっこよさもさることながらスタミナにも脱帽です。

 

私は西スタンド2階席のかなり後方。とはいえ武道館は毎回ステージまでの距離が思ったより近く感じるので鑑賞には全く問題ありませんでした。

 

セットリストは最新作「らんど」を網羅しつつすべての作品から満遍なくピックアップ。私がZAZEN BOYSをリアルタイムで効き始めたのは「すとーりーず」からなので、初期曲はそこまで熱心に聴き込んだわけではないのですが、ライブで聴くと想像以上に曲ごとの個性が際立ち唸りました。

 

武道館はこれまでも数回訪れたことがありますが、基本的には音像がぼやけがちで細部まで聞きたいときには向かない会場だと思っていました。今回も冒頭こそその傾向は感じたものの、終盤に近づくにつれどんどんと音の切れ味が増していき、良い意味で武道館らしくなく驚かされました。さすがにベースなど中低域はもわっとしていたのですが、スラップの切れ味やギターのストロークはバッチリ聞き取ることができ、嬉しかったです。広いステージの中央にぎゅっと4人がまとまった配置も良い意味で武道館らしくなく、普段のライブ空間をそのまま拡張した感じなのかなと思いました。

 

比較的初期の曲が続いたあとに「バラクーダ」から最新作が出現し始め、「らんど」メインのゾーンへ。「チャイコフスキーでよろしく」に代表されるように、このアルバムは歌メロの際立ちとZAZENのヒリヒリ感のバランスがよく、純粋に心地よく浸ることができました。「サンドペーパーざらざら」~「破裂音の朝」の「すとーりーず」ゾーンは思い入れのあるアルバムだったので特に楽しく、ポテトサラダではスクリーンに向井を映す演出も。

 

休憩時間は写真のスライドショーが流れつつ「公園には誰もいない」がBGMとしてかかり、それが終わると第二部へ。なので休憩時間は想像よりずっと短かったですね。休憩に出た周りの観客が急いで戻っているのが見えました。

 

後半は残りの「らんど」曲と共に「ZAZEN BOYSⅡ」多めゾーン。「COLD BEAT」はやるだろうと思っていましたし最高でしたが、「安眠棒」「6本の狂ったハガネの振動」などは聴けたら嬉しいな…と思っていたのでとてもテンションが上がりました。後半でのサウンドは前半よりさらに切れ味鋭く、安眠棒の冒頭のキメがカッコ良すぎて痺れました。

 

おなじみ「Honnoji」から、まさかの「半透明少女関係」にはたまげました。明らかに他とはモードが違う曲ですし、ほぼ期待していなかっただけに実演で聴けるとはという幸福感があり、中盤での祭囃子の楽しさも言い表せないほどでした。そして「らんど」終盤曲をまとめて披露して本編終演。やはり「永遠少女」は壮絶で、演奏前後に三方に礼をしたりと向井の思い入れも強かったように感じました。この日は全体的に酒を飲み続けていたのはいつも通りとしても、特に観客への感謝の言葉や礼、あと名乗り「MATSURI STUDIOから来ました、ZAZEN BOYSです」が多かった印象で、はちゃめちゃに見せつつも丁寧に作っているのだなというのも感じられたポイントでした。


「永遠少女」は直接的に第二次世界大戦を想起させる内容で、どこか直球をかわすイメージの彼らには珍しいタイプの曲だと思っていたのですが、だからこそ鳴らされる響きへの説得力を感じ、いろいろ考えさせられるアルバムだな、とあらためて思いました。

 

アンコールでは「深刻なお知らせがあります」と会場を一瞬ではりつめた雰囲気にしておきながら「MATSURI STUDIOから来ました、ZAZEN BOYSです」からの「KIMOCHI」で終演。すぱっと終わるのもらしくて良いですね。


開演時に立ち上がりかけるアリーナの観客を向井がまあまあ…というジェスチャーで着席させる場面があったのですが、確かにこの長丁場、立っていたらもたなかった可能性もあります。武道館を出ると配布のチラシでこの日の公演がBD+CDとして発売する旨の告知。そのへんも含め完璧な公演でした。見事です。

 

Destrage「Destrage Farewell Japan Tour 2024 @ 渋谷CYCLONE 2024/10/12」

Destrageの解散ツアーを観てきました。
2ndの頃に知ったバンドですが、ライブを観るのは初めて。
ジブリのメタルカバーアルバム「Princess Ghibli」でポニョを担当したことでも有名です。

Nimbus, Heart Of A Cowardの熱いパフォーマンスの後に2時間のロングセットでDestrageの演奏となりました。

 

■セットリスト
01.Twice the Price
02.Silent Consent
03.Symphony of the Ego
04.Back Door Epoque
05.Art for Free
06.Rimashi
07.Neverending Mary
08.Destroy Create Transform Sublimate
09.Purania
10.My Green Neighbour
11.Hosts, Rifles & Coke
12.G.O.D.
13.Where the Things Have No Colour
14.Waterpark Bachelorette
15.Before, After and All Around
16.- (Obedience)
17.Are You Kidding Me? No.
18.Breakdown Medley
   Everything Sucks and I Think I'm a Big Part of It
   Wayout
   Smell You Later Fishy Bitch
   Home Made Chili Delicious Italian Beef
   To Be Tolerated
   Hey, Stranger!
   Trash for Sale
   The Flight
19.Italian Boi
20.Panda vs. Koala
21.Jade's Place

 

中盤に3rd「Are You Kidding Me? No.」の再現パート(08~17)を挟み、全アルバムからも少しずつ取り上げた大満足セットリスト。人気のある2ndからも多めに選曲されていたのも嬉しいところでした。

 

どの曲でも彼らの魅力であるハチャメチャな展開とテクニック、そしてキャッチーなメロディが詰め込まれており、フロアの盛り上がりも半端ではなかったです。会場も満員で、特に後半は明らかに酸素が足りない感じになっていてなかなかの環境でした。

 

サウンドバランスはドラムが大き目で(安定したテクニックを堪能できたのでそれはそれでよくはあるのですが)ギターはやや小さめ。ただその中でもソロでのスウィープなどは飛び抜けて聞こえてきたりとツボはつかめる感じで楽しく聴けました。また、たまに配置されるアコースティックギターの音色もよいアクセントとして機能していてメリハリがついていました。

 

しかしやはり最高だったのは3rd再現パート。個人的にこのバンドで1,2を争う好きな曲「My Green Neighbour」も含まれ、終始ハイテンションで楽曲が並べられていく様は圧巻。演奏のタイトさ、ギターソロの見事さも期待以上で、まさに見たかったものが見られたという感動がありました。

 

ブレイクダウンメドレーでは曲を圧縮してたくさん詰め込んだとのこと。ほとんど1つの音(開放弦)だけで演奏できると言っていたように思いますが、確かにその通りで笑いました。

 

最後は2ndの大人気曲「Panda vs. Koala」「Jade's Place」で終演。
特にJade's Placeでは大合唱の渦で、物凄い一体感が生まれていました。

これで解散になってしまうのは正直惜しいですが、とてもよい体験をさせてもらいました。感謝です。

 

 

東京佼成ウインドオーケストラ「第166回定期演奏会」

東京佼成ウインドオーケストラ定期演奏会に行ってきました。
今回の指揮は常任指揮者の大井剛史さん。
今のTKWOの明晰なサウンドを築いた立役者だと思います。

 

今回はアメリカの作曲賞「オストウォルド賞」に着目した選曲。
マニアックでありつつも、有名曲や最新曲も取り入れた意欲的なプログラムです。

 

■曲目
01.朝鮮民謡の主題による変奏曲(J.B.チャンス)
02.交響曲第1番(J.バーンズ)
03.交響組曲(C.ウィリアムズ)
04.シンフォニア(周天)

 

・朝鮮民謡の主題による変奏曲
たいへん有名な楽曲。大井さんとTKWOの組み合わせでも2017年発売の「ザノーニ」にてセッション録音で取り上げられています。アリランの旋律をもとにわかりやすい変奏が続きます。今回も演奏としては比較的オーソドックスで、各奏者のソロによる名人芸が楽しめつつコンサートのオープナーとして爽やかな聞き心地となりました。とくにガルシア安藤さんのトランペットソロが印象的でした。今回の配置はアメリカ式で、ファゴットが2列目の端に来ていたりサクソフォンセクションが真ん中に位置していたりと普段とかなり違う味わい。ダブルリードが舞台の前の方に来ていて、パワーのあるサクソフォンが奥に行くことでバランスのいい聴こえ方とも言える配置だと感じました。

 

交響曲第1番
長らく出版されておらず幻となっていたバーンズの1番。昨年のオオサカシオンにて交響曲チクルス(全曲演奏)が行われ、それに合わせて改訂され日の目を見ることとなりました。バーンズは有名な交響曲第3番からもわかるとおり、形式としてはかなり伝統的な交響曲スタイルに則っているのですが、この1番は最初の交響曲だけあって、伝統とバーンズの意欲がせめぎあった尖った内容になっています。今回の演奏もかなりの気合の入りようで、特に切れ味鋭い1楽章は素晴らしく、バーンスタインを思わせるような瞬間もありました。ハープ、ピアノ、チェレスタといった楽器がふんだんに使われ、なおかつそれらの音色が埋もれないサウンドが構築されていて唸りました。2楽章のユーフォニアム、3楽章から4楽章にかけてのティンパニなどソロも多く、特にティンパニカデンツァは非常に長大で、坂本さんの迫力ある演奏を存分に堪能できました。4楽章のパッサカリアは一聴しただけでは理解しきれないほど複雑に入り組んで構築されていて、それでいながら最後はわかりやすく終わってくれるところにもバーンズのサービス精神を感じましたね。

 

・交響組曲
最初に提示される動機が最後まで形を変えながら現れ続ける、ホルストの第一組曲のような主題労作の楽曲です。曲としての出来のよさもさることながら演奏がとても素晴らしく、終始一体化してドライブし続けるさまは痛快でした。オーケストレーションがすっきりしていることもあるのだと思いますが、ホールの最後列で聴いているにもかかわらずスコアが目の前に見えてくるような快演。大井さんの煽りも絶妙で、綺麗なだけでない熱量を感じました。ひとつだけ残念なのは、客席から何度も携帯電話の着信音が鳴らされてしまったことでしょうか…。

 

シンフォニア
2022年に発表されたばかりの新曲がTKWOの定期でメインとして取り上げられるのは珍しいのではないでしょうか。周天の曲は良く鳴り、わかりやすさを備えつつも高度で、これは人気が出るのも頷けるというものです。1楽章の林田さんのサクソフォンソロは特に見事で、時にグロウし時に全体に混ざりと変幻自在。2楽章はジャズ的な語法も使われているようですがビートとしてはかなりスクエアなためそこまで異物感は感じられませんでした。どちらかというとパートを切り替えつつ行われたハンドクラップの視覚効果が面白かったですね。3楽章はアジア的で静かな雰囲気で前田さんのフルートソロが奏でられ、これも素晴らしかったです。4楽章はモールス信号を動機としたフィナーレで一気呵成に終幕。

 

今回はオストウォルド賞という作曲賞の受賞作品のみで固められたコンセプトのはっきりした演奏会でしたが、各時代における作曲家たちの吹奏楽への挑戦が感じられとても面白く聴きました。

 

今シーズンの定期演奏会も早いものであと1回。来年1月の次回も楽しみですね。

名取さな「サナトリック・ウェーブ 夜の部 @ EX THEATER ROPPONGI 2024/09/19」

■セットリスト
01.ファンタスティック・エボリューション
02.惑星ループ(ナユタン星人 Cover)
03.ライアーダンサー(マサラダ Cover)
04.私論理(花譜 Cover)
05.夜を待つよ(Midnight Grand Orchestra Cover)
06.オドループ(フレデリック Cover)
07.弱酸性ラジオブレイク
08.おしりぷり音頭
09.ノーゲスト、イン、ザ、テアトロ。
10.アマカミサマ
11.パラレルサーチライト
12.面影ワープnano.RIPE Cover)
13.オヒトリサマ
14.ソラの果てまで
En.
15.さなのおうた。
16.足跡

 

 

いやー楽しかった。
名取さなさんは個人勢のVtuberで、2018年から活動しています。
私は比較的初期から見ているのですが、ネットミームやかつてのニコニコに詳しく、モットーである「ていねいなインターネット生活」のライン引きに共感しつつ応援しています。

 

今までも毎年3月の生誕祭イベントはあったものの、音楽だけにフォーカスした「ライブ」は初。しかも全編生バンドとあって、期待値はとても高かったです。

 

名取さんの強みとしては明瞭な発声と強靭な喉が挙げられますが、ライブ会場でもその特性が生きていました。EX THEATER ROPPONGIはかつて筋肉少女帯でも来たことがあったのですが、空間の広さもあり音像がやや飽和しがちな印象があり、今回もベースとドラムが強くでて強力なバンドサウンドが響いていました。その中でも埋もれることなく突き抜けてくるボーカルは声量もさることながら声質、発声の素晴らしさが大きく、「はじめて聴く新曲なのに歌詞がバッチリ聞き取れる」というのは稀有な体験でした。

 

ステージは通常の舞台にバンドメンバーが陣取り、名取さんは上部に設置されたスクリーン部分にて歌う形式。この配置はVtuberならではの強みだなとうならされました。スクリーン部もレイヤーが2枚あったように見え、背景との奥行まで感じられて「そこにいる」感が強く、かなり良かったです。

 

セットリストは今回のライブに合わせて制作された「Sanatric Waves」収録の新曲5曲を軸に、過去曲のバンドアレンジやカバー曲を追加したもの。特にカバー曲群は名取のこれまでの活動でも取り上げられたものであったり、これまでに関わりのあったVtuberの楽曲だったりと文脈が感じられる曲が多めでした。

 

中でも印象的だったのはやはり「惑星ループ」で、最初の歌ってみた動画曲でもありました。ニコニコのイベントに出演したときにも取り上げられた楽曲で、その時は左右に動く「アイドルステップ」で乗り切ったことがしばらく語り草になっていましたが、今回もそのステップを軸にしたパフォーマンスで、かなりエモを感じられました。

 

中盤のハイライトは「弱酸性ラジオブレイク」。楽曲の中盤で強引に「おしりぷり音頭」が接続され、和太鼓まで登場するというカオスっぷりは思わずにやけてしまいました。X JAPANのライブでドラマーがピアノに移動するのは観たことあるけど、ドラマーが和太鼓に移動しておしりぷり音頭が始まることってあるんだ…。

 

ここまでもかなり満足度が高かったのですが、続く新曲「ノーゲスト、イン、ザ、テアトロ。」からさらにギアが一段上がった感。スクリーンの映像表現が増し、先日のMETA=KNOTも思い起こさせるような没入感のある、空間全体を支配するような視覚表現に圧倒されました。楽曲自体も素晴らしく、場面転換しつつしっとりと歌い上げるさまに感動しました。

 

過去楽曲のバンドアレンジ版も面白く、「パラレルサーチライト」は「Sanatric Waves」にもバンド版として収録。原曲から高音がすごいイメージがありましたが見事に再現できておりスゲエ…となりました。本編最後の新曲「ソラの果てまで」もかなり印象的で、「鈍色」という単語がここまで印象的に響くというのもなかなかないな…などと思いながら聴いていました。そこはかとなく薫るシューゲイザー感。

 

アンコールは「さなのおうた。」で、MVを後ろに流しつつ、時にMVと同じポーズをちりばめつつのステージングでさすがに感動的。コールアンドレスポンスも最高潮でしたね。なお、コーレスは全編通して絶好調で、よく見るライブではバンドからの問いかけに対しファンが「群」として答える(イエーイとか、わーとか)タイプが多いのですが、名取のライブではファンがそれぞれ「個」として答えようとしており、名取も面白いコメントを拾って答えようとしている感があってここも配信っぽさを感じさせとても良かったです。だからこそ、楽曲のなかで「群」として掛け合いをするところが心地よいのかもしれませんね。

 

最後は「足跡」。ぼざろ的リードギターやDjent的オシャレアレンジが印象的な曲です。これをやったら終わってしまう、と名残惜しそうでしたが新曲群の中でも特にエモーショナルなこの曲で締めるのは最高に決まっており、今後への希望も持たせた最高の1stライブだったと思います。

 

昼公演、夜公演ともに配信チケットも買っているので、このあとじっくりと噛みしめながら見直したいと思います。

 

全体的に、「名取さな」のこれまでの総括でありつつも今後への期待を感じさせる内容だったと思いますし、さらにはVtuber文化を追ってきた人にも様々なことを思い出しつつ見ることができる多層的なライブだったと思います(ライブで新曲を多数放り込んでくるところなんかも、花譜さんのファーストライブを思い出したりしました)。さまざま告知もありましたし、これからの活動にも期待です。

 

cali≠gari「cali≠gari 30th Caliversary”1993-2024″ cali≠gari TOUR 17 -FINAL- @ LINE CUBE SHIBUYA 2024/09/07」

17ツアーのファイナル公演に行ってきました!

 

■セットリスト
01.サタデーナイトスペシャ
02.反ッ吐
03.化ヶ楽ッ多
04.トカゲのロミオ
05.白い黒
06.恣
07.トゥナイトゥナイ ヤヤヤ
08.暗い空、雨音
09.香る終焉に3のアーキタイプ
10.そのまんま、KISS
11.隠されたもの
12.ダバダ
13.ミッドナイト! ミッドナイト! ミッドナイト!
14.ナイナイ!セブンティーン!
15.マッキーナ
16.乱調
17.東京アーバン夜光虫
18.月に吼えるまでもなく
19.沈む夕陽は誰かを照らす

 

En.
20.龍動輪舞曲
21.十七歳の地図
22.バカ!バカ!バカ!バカ!
23.クソバカゴミゲロ

 

アルバム「17」が各所で好評の中行われたツアー。その最中にも楽曲のアップデートが行われ、ツアーファイナルであったこの日には新曲を含む、パートの再録音などで更新された「17.5」も先行販売されました。他、野音でのライブを収録したブルーレイも発売され、物販もたいへん盛況でした。種類が多すぎたのか、なかなか列が進まず、2時間近く並ぶ羽目になりましたが…(コミケとかの物販みたいに、並んでいるうちに購入品を記載できる用紙とか、あれば助かるのですけど…)。

 

会場に入るとステージを広く使ったファイナルらしいセットが。中央のソファーと多数の照明が組まれ期待感を煽ります。開演するとさらにスモークの多用や降りてきた巨大な「17」看板が舞台を彩っていました。 

 

セットリストはツアー中と基本は変わらず、17の楽曲群を軸に17.5の新曲を足したもの。ただしゲストのyukarieさん、秦野猛行さんが参加したことにより一層ゴージャスなサウンドとなっていました。いつもより会場が広めなこともあってか、音像はライブハウスよりもややボヤッとはしていましたが、ミドルテンポがおいしい曲の多い今回のアルバムには合っていたとも思います。

 

ツアー前半に複数回行っていたので楽曲の成長度合いを感じられたのも面白かったですね。「恣」「龍動輪舞曲」などはツアーを経て更に化けてきたと思います。新曲の「香る終焉に3のアーキタイプ」「ダバダ」もカッコよく、特にダバダは短いながらも多くの展開を見せて印象的でした。「東京アーバン夜光虫」も生のサックスとキーボードが加わるとぐっとエモーショナルになりますね。

 

中でもやはり印象的だったのは本編最後の2曲「月に吼えるまでもなく」「沈む夕陽は誰かを照らす」でしょう。前者はとにかく石井さんの歌が壮絶の一言でしたし、後者は秦野さんのピアノが広い会場に染み渡るように響いていました。そういえばこの日は青さんの髪が赤かったり、全体的な衣装や証明もなんとなくあの先輩バンドをリスペクトしている感がありましたね。

 

アンコール前には今後のライブ情報も発表され、中には活動休止前の作品を多分に匂わせるものも。アルバムツアーが終わったばかりですがまだまだいろいろ仕込みがあるようで、今後も楽しみですね。

 

狂信席特典。ラインキューブだからルービックキューブ

 

 

 

第3回吹奏楽カフェに行った話

TKWOの吹奏楽カフェも第3回。今のところ皆勤賞。

 

今回は9月の定期演奏会に関する会。
指揮者の大井剛史さん、作曲家の中橋愛生さんによるトークはいつも通りだが、9月定期は大井さんが振るのでその意味でも注目だ。

 

この9月定期のテーマは「オストウォルド賞の系譜」で、アメリカで1950年代から続く吹奏楽の作曲賞であるオストウォルド賞を受賞した作品群を並べたプログラムとなっている。


比較的近年の受賞作では「ハリソンの夢」「レッドライン・タンゴ」「シンフォニア」などは日本でも頻繁に取り上げられているが、そもそもこの賞の成立や歴史についてはあまり知られていないということから、中橋さんが調べた資料を軸にレクチャーが行われた。

 

今回も動画版がアップロードされると思われるので、詳細はそちらで確認いただくとして、賞の成り立ちや歴史だけでなく、選考の意図や応募する作曲家の傾向などにも触れつつ説明されるのがとても面白かった。中でも初回と2回目の受賞曲がいずれもクリフトン・ウィリアムズによる曲であることは想像以上に重要で、賞としての方向性を決定づけたと同時にクリフトンの吹奏楽に対する熱意が弟子たちの応募をうながし、賞を活性化させたという読みはなるほどと納得させられた。ジェイガーが賞金稼ぎ的に多数応募していたと思われたのも面白かった。

 

ある程度、賞の概要を説明した後は作曲年代順に演奏曲の説明。
交響組曲では譜例を見つつ、主題労作としての出来のよさについて言及。
朝鮮民謡の主題による変奏曲ではアリラン自体の説明(そもそも映画で使われた版のアリランを主題として採譜されたことによる西洋的なメロディ)からはじまり、チャンスの譜面とのフレージングの違い(スラーの開始位置により、フレーズの開始点が異なり、西洋風=アウフタクトに改変されている)などの説明も。

 

休憩を挟んで、バーンズの交響曲第1番ではそもそもバーンズの交響曲は形式としてはとても伝統的であるという話や、彼の改訂に関するスタンスの話など。
最後に周天のシンフォニアでは彼の生い立ちに触れながら、吹奏楽と他ジャンルとの融合などについても言及され、作曲家本人からのビデオメッセージも上映された。

 

情報量が大変多く、質疑応答の時間もとれないほど時間が押したのだが、そのぶん満足感たっぷりの内容だった。
これを受けて、大井さんが9月にどのような解釈で演奏を行うのかが今から楽しみだ。