トベコンチヌエド。

CDやコンサートの感想を主に書いています。

2025年10月に聴いた音楽

今月も早すぎるよ~。

 

King CrimsonLizard (50th Anniversary Edition)」
我々は何枚同じアルバムを買わなければいけないのか。アニバーサリーごとに新規ミックスやらお蔵出しマテリアルやらを追加してあの手この手で買わせてくるキングクリムゾンだが、今の50周年のターンでの目玉はデヴィッド・シングルトンによるエレメンタルミックス。本編のミックスがスティーブン・ウィルソンによる原曲を尊重したミックスであるのに対し、シングルトンはあまりにも大胆にお蔵出しマテリアルなどを混ぜたり削除したりして新しい見え方を引き出すことに成功。50年積み上げてきたからこその崩しがある意味快感であり、ファンとしてはやはり買うしかないのだった。

 

ザ・クロマニヨンズ「JAMBO JAPAN」
今作のクロマニヨンズは一味違う。なんかすごいやる気がある。いや、毎回アルバムは安心クオリティではあるのだけれど。久しぶりに真島がメインボーカルをとる曲があったり、やたらとメディア露出(しかもナタリーのようなネット記事や山田玲司youtubeなど、今の媒体)も多い。ミックスがモノラルからステレオに戻っているのも印象的だ。とにかく何か“違う”のである。
内容も素晴らしく、クロマニヨンズ以降の削ぎ落とされたパンクロックをベースにしつつも展開は自由で、それでいてメロディはどこをとっても印象に残る。個人的に特に好きなのは「顔ネズミ」で、マジでなんじゃそりゃと思いつつも聴いているとなんとなくわかった感が出てくるのも不思議。

 

NHK交響楽団「スッペ: 「軽騎兵」「詩人と農夫」序曲、オッフェンバック: 「パリの喜び」抜粋」
下野竜也が指揮を振った定期演奏会の録音。私も現地に聴きに行った。メインであるパリの喜びカラヤンも録音を残している有名曲で、天国と地獄のカンカンなど、オッフェンバックの有名なメロディをローザンタールという人が編曲したもの。成立の経緯からしてリミックス感があるからか、吹奏楽での抜粋演奏も人気があり、かつては吹奏楽コンクールの自由曲として取り上げられることも多かった。下野は日本を代表するオーケストラであるN響にポジションを持ちつつも広島ウインドをはじめ吹奏楽にも積極的な指揮者であり、個人的にも応援している指揮者の一人だ。ここでも下野らしい地に足のついた演奏で、こんなに明るいN響を聴くのも珍しい。

 

Acacia魔法少女魔女裁判 コンプリートオリジナルサウンドトラック」
クラウドファンディングで3000%超えという物凄い達成を経て制作されたADVゲーム。
PC用というフォーマットでありつつも若年層に特に広く受け入れられているように見え、販売も20万本を達成。
こう数字のことばかり書くのもどうなのという感じもあるのだが、この作品を語るにあたり作品そのものにとどまらずそのプロデュース力や全体としてのまとめる力に言及したくなるのは仕方ないかと。
クラファンの成功は期待の裏返しと思うが、実際にゲームの内容もたいへん素晴らしく、私もとてものめりこんでプレイすることができた。
これはそのサントラ盤で、主題歌であるSLAVE.V-V-Rの楽曲および劇中で使用された音楽が3枚組で収録されている。BGMの特徴としては「声」を使ったものが多いということと、ピアノ、ストリングス、ティンパニといったクラシカルな楽器が主軸ということ。通常、こういった声が入るBGMは主張が強くなりすぎてしまうことがあると思うのだが、本作では「フィクスマージ語」なる劇中言語を使用することでこれを回避。「何かを歌っているけどなんだかわからない」という絶妙な塩梅を演出することでBGMに耳を奪われすぎないようにできている。それでいてプレイ後にサントラを聞き直すと「あ、あのシーンで流れていたな」というものばかりで、作品世界に浸れてとてもよい。
このメーカーはもともとシナリオ制作を主軸にしていたところ、ゲーム制作に乗り出したという経緯のようで、ストーリーも凝っていて大変良かった。今後の作品にも期待。

 

Arturo Benedetti Michelangeli「ショパン・リサイタル」
ミケランジェリの名盤の再発。録音レパートリーはそんなに多くないピアニストだが残った正式録音はどれも評価が高い。中でもこのショパン作品は前半の軽いマズルカ集から後半のバラードに至るまで流れも含め素晴らしく、高音質での再発に伴いしっかり聴くことができた。個人的にもショパンのバラードに興味が出ていたということもあるがバラードの演奏が特に素晴らしく、ともすればとりとめなく難解な印象を残してしまうこの曲を自在に操り、最後まで耳を惹きつけ続ける魅力的な演奏だ。

tower.jp

 

Andrew Latimer「War Stories」
プログレバンド、CAMELの中心人物であるアンドリュー・ラティマーのソロ名義の新作。キャメルとしての来日が体調面の問題から中止になったことが記憶に新しいが、ソロ作品がリリースされる程度には元気と見え、その意味でも安心。ラティマーは泣きのギターが印象的なミュージシャンだが、フルートも演奏できたりと多彩であり、ソロとはいえかなりキャメル感の強い出来。メランコリックなしっとりした音楽性で1トラック40分強の大作で、コンセプトアルバムというかとても長いシングルというか、という感じ。個人的に好きなハーバーオブディアーズの頃の雰囲気もあり、このスタイルのプログレ好きにはたまらない作品。

andrewlatimer.bandcamp.com