東京佼成ウインドオーケストラ「第162回定期演奏会」

■曲目
01.アスファルト・カクテル(J.マッキー)
02.マンハッタンの情景(J.ヴァンデルロースト)
03.イーストコーストの風景(N.ヘス)
04.交響曲第2番「江戸の情景」(F.チェザリーニ)


アスファルト・カクテル(J.マッキー)
非常にハイテンションな幕開け。マッキーの曲は打ち込み感が強くキャッチーであるがこの曲も多分に漏れずで、楔を打ち込むようなリズミカルな遊びが多い。そういう意味ではホールに耳が慣れていないオープニングだと細かいところがぼやけて聴き取りづらかったりもするのだなと感じた。

 

■マンハッタンの情景(J.ヴァンデルロースト)
ヴァンデルローストの4楽章からなる曲。各楽章は短く、ころころと表情を変えながら情景を描写していくが飯森の指揮ははっきりとしておりスマート。なのだが平日夜ということもあり疲れからちょっと意識がとびそうになる瞬間も…。

 

イーストコーストの風景(N.ヘス)
最高の演奏。特に2楽章のコルネットソロは素晴らしかった。楽曲の持つオシャレなサウンドを鳴らしきり、煽るところは煽りまくる飯森らしい熱さがよく出ていたと思う。主和音を気持ちよく鳴らしきる快感はこれぞ吹奏楽のコンサートというもので、純粋な楽しさを味わうことができた。サイレンは波をつけた長めの演奏で、場面転換っぽさが強調されていた。

 

休憩の前では飯盛によるクラウドファンディングの案内。ニューサウンズだけでなく近年の定期の録音がリリースされずストックされていることにも触れる内容で、やはりリリースには資金が不足していたことがわかる。応援したい。

 

交響曲第2番「江戸の情景」(F.チェザリーニ)
これも素晴らしい演奏。チェザリーニの絢爛豪華なサウンドをクリアに提示し曲の核をしっかり提示。場面ごとの表情変化や繊細なニュアンスもたっぷり感じ取ることができた。実演を聴いて感じたのは想像以上に空間的な表現が多いということで、効果音的に鳴らす打楽器やフレーズの端々が断片として聴こえてくるのは現地で聴いてこそ。

 

日本のメロディを西洋的な装いで吹奏楽曲に、というコンセプトはどうしても真島俊夫による「3つのジャポニスム」をはじめとする作品群が思い浮かぶが、あちらはドビュッシーラヴェルのようなフランス的、あるいはジャズ的な味付けであったのに対しチェザリーニはレスピーギ的というか、イタリアっぽい壮麗なサウンドが印象的だった。


また、日本風メロディの取り扱いも見事なもので、日本を題材にとりつつも中華的なメロディであったりする楽曲も見かけることがあるのに対し、非常に精度の高い和風が展開されていたように思うし、雅楽的な響きのなかでベルキス的なオーケストレーションが聴こえてくるのも面白い体験だった。