2022年ベストアルバム(クラシックの部)

今年はそこそこクラシックも聴いたと思うので、その中から今年発売のうち特に印象に残ったアルバムを紹介します。

※私の興味はおもにピアノと管楽器なので、そちらに偏り気味です。

 

01. Irina Mejoueva「ノスタルジア
02. Leif Ove Andsnes「ドヴォルザーク:詩的な音画集」
03. バイエルン放送交響楽団マーラー交響曲第9番
04. フィルハーモニック・ウインズ大阪「アルメニアン・ダンス -アルフレッド・リード作品集 I-」
05. ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団「John Williams The Berlin Concert」
06. Michel Dalberto「Once Upon a Time」
07. シエナ・ウインド・オーケストラ「バーンズ:交響曲第3番」
08. 名古屋アカデミックウインズ「ドナウの伝説~スーザとフチーク」


01. Irina Mejoueva「ノスタルジア
メトネルの技巧的な作品などで有名なメジューエワの最新作。タイトルの通り、どこかノスタルジアを感じる作品を集めた曲集になっていますが、ドヴォルザークのユモレスクのような馴染みのある曲があったかと思えば平野の2つの海景のようななかなか見ない曲まで幅広く収録されています。メジューエワの演奏はテクニックが素晴らしいのはもちろん、適度な感情の入れ方がとても心地よく、何度も聴きたくなる魅力がありますね。中でも2つの海景は静謐な空気感が伝わってきてよい驚きがありました。

 

02. Leif Ove Andsnes「ドヴォルザーク:詩的な音画集」
交響曲弦楽四重奏のイメージの強いドヴォルザークにこんなピアノ曲の大作があったとは知りませんでした。様々な情景を描いた十数曲からなる曲集でいずれもドヴォルザークらしいメロディに溢れていますが、中でも演奏者も思い入れが強いという第一曲「夜の道」が白眉。きらきらと星の光る描写やアップテンポでの疾走感など、物語性が強く感じられ面白いです。

 

03. バイエルン放送交響楽団マーラー交響曲第9番
個人的な今年の収穫は交響曲を腰を据えて聴く習慣ができ始めたこと。年始にショスタコーヴィチにハマったことから始まったのですが、下半期ではマーラー交響曲を漁りました。なかでもこの9番は死の香りの強い曲(終わり方が終の呼吸を想像させる)でありつつも技巧的で、とても完成度の高い曲と思いました。名盤もたくさんあるようですがラトルの今回の演奏は切れ味もよくお気に入りです。

 

04. フィルハーモニック・ウインズ大阪「アルメニアン・ダンス -アルフレッド・リード作品集 I-」
リードの生誕100年が2021年だったので、それに合わせ各地で演奏が行われました。大阪(オオサカン)はこれを含めた3枚のリード作品集を一挙リリース。いずれの演奏もクオリティが高く、これからリード作品を聴いてみたいという向きには自信を持っておすすめできます。本盤はTKWO正指揮者の大井氏を迎えたアルメニアンダンス全曲演奏が目玉。録音もとても良いです。

 

05. ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団「John Williams The Berlin Concert」
映画音楽といえばこの人というジョン・ウィリアムズが世界最高峰のオーケストラと共演。ウィーンフィルとも同様の企画を行っていましたが個人的にはこのベルリンフィル盤により強い感銘を受けました。精度の高いアンサンブルはかっちり組まれたジョン・ウィリアムズのスコアによく合っていたように思います。スターウォーズや遥かなる大地への広がり感や切れ味も良いですし、チェロのためのエレジーが収録されているのも珍しくてよいですね。

 

06. Michel Dalberto「Once Upon a Time」
昔、NHKのピアノレッスン番組でシューベルトソナタ21番を取り上げているのを見たときからのファンです。ダルベルト氏の演奏は一言でいうとスタイリッシュ。他ではもっとためて歌わせるような箇所でも過度にテンポを揺らさずにスタスタと歩いていく感じ。なのですが表情が弱いというわけではなく、その客観性が逆に作品としての姿をよく見えるようにしてくれているようにも感じるのですよね。リストの作品を集めた本盤でもその印象は変わらず。大曲であるソナタでもあっという間に感じるほどの面白い演奏でした。

 

07. シエナ・ウインド・オーケストラ「バーンズ:交響曲第3番」
シエナ佐渡裕によるコンビはブラスの祭典シリーズが有名ですが、今回はバーンズの交響曲をがっつり。佐渡氏は情熱的なイメージがありますが実際の組み立てはとても端正で、ここでもあまり聞かれない対旋律を浮かび上がらせながら納得感の高い演奏を聴かせてくれました。全体的なサウンドがややコンプ感強くダイナミクスレンジが狭めに感じましたが、演奏としては素晴らしくおすすめです。

 

08. 名古屋アカデミックウインズ「ドナウの伝説~スーザとフチーク」
その名の通り、吹奏楽をアカデミックに…というコンセプトで、普段コンクールなどではまず取り上げられないような楽曲たちを掘り下げ、テーマに沿って提示してくれる団体の、今回はスーザとフチーク特集。彼らはマーチで有名ですが、どちらかというと「それ以外」に焦点をあてています。スーザバンドの演奏会のスタイルだったとされる、ファンファーレ→ワルツ→マーチの繰り返しという短いコンサートを一度の演奏会で繰り返すスタイルでこれも面白い。アカデミックといいつつコミカルな演出含みの曲もあり好印象です。指揮の仲田によるフェネルを継承した「フローレンティナー」も素晴らしい演奏。