東京佼成ウインドオーケストラ「第157回定期演奏会」

随分と久しぶりに演奏会に来た気がする。
前回の定期演奏会は昨年の11月末であったので無理もない。

 

01.献呈序曲(C.ウィリムズ)
02.アルメニアン・ダンス(A.リード)
03.喜色満海(長生淳
04.交響曲第1番「アークエンジェルズ」(F.チェザリーニ)

 

個人的には年末年始にかけ、また今も仕事が加熱気味であり、あっという間のような長かったような3ヶ月だったし、その間に感染者数や社会情勢も大きな変化を見せていた。

 

そうした状況だからこそ、コンサートホールに足を運び、他のことから一切遮断された状態で音楽に身を任せるという体験は得難いものであるとも感じている。

 

本日の定期演奏会は前シーズンに開催されるはずであった飯森氏によるリベンジ公演で、曲目も中止となった当該公演を引き継いでいる。序曲により幕開け、委嘱作品とチェザリーニの交響曲というだけでも骨太であるのに、前半にリードのアルメニアン・ダンス全曲というてんこ盛りっぷりだ。これを演奏しろと言われたらまず体力づくりから始めるような並びである。

 

クリフトン・ウィリアムズの献呈序曲は華やかながらも落ち着いた作品で手堅い演奏。どうしてもこのあとのメインディッシュ連発の準備運動的側面として見てしまうが、吹奏楽オリジナルのシリアスな序曲で始まるところにも好感触だ。

 

アルメニアン・ダンスは期待通りの演奏。1、4楽章での疾走感は今までも華麗なる舞曲などで発揮してきた飯森ならではのサウンド。しかしここで特に良かったのは2、3楽章で、落ち着いた歌の表現や可愛らしい踊りの表現が生き生きとしていたのがとても印象的だった。

 

長生の委嘱新作は効果音的なブラシと鍵盤打楽器に導かれ、寄せては返しながら長生らしい重厚なサウンドのクライマックスへ。いつもの彼の作品のようなかっこよさもありつつ、慈しみのようなものが感じられたのは良かった。また聴きたい作品だ。

 

チェザリーニの交響曲は大天使の名前を冠した四楽章からなるもので、レスピーギの教会のステンドグラスを思わせる。もともとチェザリーニはアルプスの詩など、元ネタありつつの自分ならではのアプローチというものが得意な人だと思っているのでおそらくこの読みは合っているはずだ。チェザリーニらしいアプローチとは何かというと個人的には純粋さ、素直さだと思っている。参照した楽曲ではネガティブな表現が目を引くようなものであったとしても、チェザリーニが描くときはハッピーエンドに導かれる。信仰心のようなものを強く感じるのも特徴だろうか。これはこと吹奏楽において特に良い方向に作用していると思う。管楽器による主和音が鳴らされたときのパイプオルガンのような荘厳な響きを今日も感じ取ることができた。全体的なオリジナリティや挑戦性という面では少し引いてしまうのかもしれないが、演奏効果は抜群でありまた聴きたい曲のひとつとなった。

 

TKWOが独立する次シーズンからは定期演奏会の会場がなかのZEROホールになるため、今回が東京芸術劇場での定期演奏会の一区切りであり、それもあってか比較的集客もよかったように感じた。

 

次シーズンも定期演奏会の数こそ減るが魅力的な選曲になっているので、楽しみだ。