東京佼成ウインドオーケストラ「第158回定期演奏会」

一般社団法人となってから初の定期演奏会
仕事も有給休暇をとり万難を排して行ってきました。
行ってよかったです。

 

01.希望の彼方へ(P.スパーク)
02.Sparkling for Wind Orchestra(冷水乃栄流)
03.交響曲 第4番(A.リード)
04.交響曲「ワインダーク・シー」(J.マッキー)

 

会場も慣れた東京芸術劇場からなかのZEROホールに。
キャパとしては以前より小さくなったようですが、演奏者との距離感が近く感じられ、むしろ吹奏楽にはあっているかも。

 

指揮は正指揮者の大井さんで、着任当時からほぼ全て実演を観てきていたので、今回も逃すわけにはいきません。


大井さんの選曲は毎回コンセプトがはっきりしていて、なかなかコンクールでは取り上げられないタイプの大作をよく取り上げていた印象ですが、今回もリードの4番のようにコアな曲をとりいれつつもメインはコンクールでも大人気だった「ワインダーク・シー」を持ってくるというバランス感覚を発揮。そのかいあってか、客席にも学生が多く入っていたように思います。

 

スパークの「希望の彼方へ」は委嘱団体らしい確信に満ち溢れた好演でメリハリの付け方が巧み。
スパークらしいアップテンポで明るいセクションではTKWOならではの分離の良いサウンドを堪能できましたし、中間部では大いに歌わせて楽団のポテンシャルを感じさせてくれました。
ホールが今までより小さくなったこともありこれまでの上品なサウンドからホールを鳴らしきった豪快なサウンドに印象が変化したのも面白いところで、強奏であってもいささかも細やかさが失われないところがやはり巧いと思わせられました。ファゴットのソロも絶品。

 

冷水の「Sparkling」は現代音楽らしい音響とホールの空間を活かした空気をつくりつつも全体としてはキャッチーの範疇に収まっており、ビート感を打ち出したピアノや高速パッセージ(しかも吹奏楽でありながらも高速パッセージの細部をうまく隠して音響的に扱う)からはどことなく吉松隆のような響きも感じ取れました。プログレ風味。
こちらも各奏者の技量が光り、特にコントラバス、打楽器の活躍が目を引きました。

 

リードの「交響曲 第4番」は名演!
一楽章の高音木管からはじまるエレジーはリードの音楽の中でもシリアス度がかなり高いもので、高度なアンサンブルが要求され弱奏での緊張感が持続します。大井さんの指揮はさすがの一言で、大きな流れを紡ぐような自然さで7分を感じさせない演奏。
二楽章はキャッチーなワルツでありリードらしい歌わせるメロディが心地よく印象的。三楽章は高速のタランテラで圧巻の出来でした。鳴らしきってもまだ余裕を感じさせるトゥッティ。久しぶりに味わう感覚に高揚しました。

 

メインプログラムの「ワインダーク・シー」も最高の演奏!
わが人生においてこれ以上の実演に接することはないだろうと確信するレベルの名演でした。
全体を通して緊張感を持続させつつも場面転換を丁寧にこなす指揮と、音響効果を十二分に活かしたスコアリング、そして奏者たちのたぐいまれなるバランス感覚。
豪快無比なトゥッティのサウンドはホールのキャパシティが小さくなったこととあいまってより攻撃力を増し、鼓膜だけでなくビリビリと座席にも振動が伝わる威力でした。
マッキーはコンピュータでの作曲を初期から行っているとのことで、確かに打ち込みのようなリズム遊びが多く感じられました。
これは聴くにはいいのですが実演しろと言われたら唸るるレベルの難易度と思いますが、キメどころをバシバシと決めていくTKWOの面々を見ているとさながらDream Theaterのようなプログレッシブ・メタルのライブを観ているような心境に。
最後のトゥッティも、遥か上をいくトランペットのハイノートがかすかに突き抜けてくる爽快な聴き心地でした。
これはもうCDにするしかないと思いますのでよろしくお願いします本当に。

 

全体を通して「実演」の良さをビシビシと伝えてくれる内容で、純粋に吹奏楽の奥深さ、カッコよさを再認識させてくれた演奏会でした。
次回は9月、これも平日なので、がんばって有給とらなくては…(チケットは通し券で確保済みです!)