東京佼成ウインドオーケストラ「第159回定期演奏会」

相変わらず仕事がなかなか厳しく、行けるか微妙だったのですがどうにか聴いてくることができました!

 

01.青い水平線(F.チェザリーニ)
02.ダンス・ムーブメント(P.スパーク)
03.交響曲 第3番(J.バーンズ)

 

指揮は主席客演指揮者の飯森範親さん。ちょうどコロナの波が来ている時に演奏会がぶつかることが多く、何回かの演奏会が流れた経緯があり、そのときに予定されていた楽曲群をリベンジしつつほかの曲も取り上げている状況です。

 

今回は「青い水平線」がリベンジ曲でしたが、さらにスパーク、バーンズの有名曲を組み合わせるという超重量級のプログラムが完成。いずれも吹奏楽コンクールでもしばしば目にする楽曲ということもあって盛況でした。

 

なかのZEROホールでの響きは今までより細かいところまで聞こえるということが前回の演奏会でもわかっていましたが、今回はなんとチケット完売とのことで、人間に響きが吸われたさらに生っぽい音を楽しめたのではないかと思われます。

 

まずは「青い水平線」。弱奏からはじまり、吹奏楽の強みである機動力を伴う強奏部、エモーショナルなトゥッティを経て静かに終わるというダイナミクスレンジが広い楽曲のため、現地での体験が映えること。

 

とくに冒頭でのクラリネットなど木管群が奏でる繊細な響きの移ろいは面白かったですね。第二楽章ではコントラバスバルトークピチカートとムチの応酬がリヴァイアサン対クラーケンのバトル感をより強めているように感じましたし、終盤の盛り上がりは情熱的な指揮ぶりの印象のある飯森さんの強みが良く出ていたと思いました。コントラバスとチューバを芯とした低音群の活躍も印象的で、かなりゴリゴリとしたサウンドの瞬間もありとてもかっこよかったです。演奏後の静寂が十分に保たれたのちの喝采も心地よい瞬間でした。

 

「ダンス・ムーブメント」も印象的で、スパークらしい明るくハッキリしたサウンドが楽しめました。木管楽器による合奏体、金管楽器による合奏体それぞれの音の違いに加え、トゥッティの場面であってもところどころで顔を出す各パートのソロをきっかけにサウンドのテクスチャーがうつろっていくさまも面白く聴けたのではないかと思います。

 

メインの「第3交響曲」は快演!
1楽章のティンパニの空間支配とチューバの長い独奏(たいへん素晴らしかった)の緊張感を保ったまま楽章の最後まで。スケールの大きな表現で、かなりシリアスな表現でした。

 

2楽章はチェロのピッチカートが加わりまさにショスタコーヴィチ的なサウンドに。バスクラリネットバリトンサクソフォンのソロも非常に見事で、とくに最後の低音を暴れさせずに上品にまとめるあたりに栃尾さんの凄みを感じました。トゥッティのキレのよい厳しいサウンドは特にショスタコーヴィチの戦争描写を思わせ、社会情勢への目線もうっすらと感じました。

 

3楽章はホルンソロも美しく、チェロも十分に歌わせていました。弱奏はたっぷりと時間をかけ、強奏では一転速めのテンポで流すあたりにメリハリの妙が見えました。同じメロディが2回繰り返され、それぞれ担当するソロ楽器が入れ替わる構成なのですが、どのソロも本当に素晴らしかったです。

 

4楽章は豪快!とくに冒頭のトランペットからしてもう派手で、こんなに気合の入った4楽章冒頭は聴いたことがないと思うほど。未来への希望を強く感じさせた非常にポジティブな表現でした。最後に向かっての盛り上げも見事で、心地よい演奏でした。数年前に大井さんが振ったときは上品な天上の音楽という感じでしたが、今回はかなり力強い印象で、面白さを感じるとともに、やはりこの交響曲吹奏楽でも屈指の名曲だなとあらためて思いました。

 

前回に続き今回も非常にテンションの高い素晴らしい演奏会でした。今シーズンはあと1回、1月末ですね。これも今から楽しみです。来シーズンでも攻めた選曲と演奏を期待したいですね!