2022年ベストアルバム

2022年によく聴いたアルバムを整理しました。

 

■ベスト10
01. 明日の叙景「アイランド」
02. Porcupine Tree「CLOSURE / CONTINUATION」
03. 寺尾沙穂「余白のメロディ」
04. SIGH「SHIKI」
05. Amorphis「Halo」
06. THOUSAND EYES「BETRAYER」
07. The Halo Effect「Days Of The Lost」
08. KAMIJO「OSCAR」
09. VOIVOD「Synchro Anarchy」
10. DIR EN GREYPHALARIS

 

■次点
MEGADETH「The Sick, The Dying... And The Dead!」
black midi「Hellfire」
Michael Romeo「War On The Worlds, Pt.2」
deadman「I am here」
THE SPELLBOUND「THE SPELLBOUND」
Nonus「WHILE OF UNSOUND MIND」
Bloodywood「Rakshak」
Boris「Heavy Rocks」
Madmans Esprit「나는 나를 통해 우리를 보는 너를 통해 나를 본다」
Stratovarius「Survive」
聖飢魔Ⅱ「BLOODIEST」
ほか、プレイリスト参照

 

 

■コメント
01. 明日の叙景「アイランド」
日本のポストブラックメタルバンド。トレモロリフや発声などはブラックメタルを踏襲しつつも邦楽由来と思われるエモーショナルなコードやアレンジなど、様々な場所からの影響をごった煮にした音です。前作「すべてか弱い願い」も基本としては同じ路線の良い作品だったのですが、今作ではややダーク寄りだったこれまでとはうってかわって開放的でポジティブなサウンドに。シューゲイザー的な浮遊感がより強調され、ブラックメタルを普段聞かないような層にも強くアピールできる音像に仕上がっていると感じました。楽曲構成の巧みさも素晴らしいのですが、やはりこの聴いているだけで心地よいというサウンドを作れた時点で勝利という感じですね。ライブも行きましたがとても良かったです。


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02. Porcupine Tree「CLOSURE / CONTINUATION」
ソロでキャリアを確立させた感のあるプログレ界の重要人物、スティーブン・ウィルソンによるバンド。ドラムであるギャヴィンのキング・クリムゾン参加などもありバンドとしての活動はもうないのかな、と思っていたところでしたのでアルバム発売は嬉しい衝撃でした。スティーブンらしいひねりと展開のある楽曲が並びますが、ソロとの違いはやはり固定メンバーがいることでの身体性でしょう。メタリックなリフでの切れ味などはまさに聴きたかった味という感じ。音圧をあまり上げずにダイナミクスレンジを広くとっているサウンドも興味深く、空気感の演出を重要視するプログレらしい(プログレらしいという表現は不本意かもしれませんが)音だなと思いました。


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03. 寺尾沙穂「余白のメロディ」
コロナが流行りだしてから知ったミュージシャンのなかでも一番の収穫は寺尾さんでした。自宅にいることが増えたタイミングと語り口の心地よさが絶妙にハマり、音源を集め始めたところ。前作の「北へ向かう」も寂寥感を感じる名盤でしたが今作はもう少し明るい感じ。特に弾き語りによるキーボードが絶妙で、弾き語りのよさ…自分だけで構築するゆえにテンポの揺らしが自由自在(実際はベースなどもあり一人きりというわけではないのですが)…というところが存分に楽しめる内容になっていると感じました。メタルや今どきのダンスミュージック的なものばかりを聴いているとどうしても耳がクリックに合った音楽に慣れてしまうのですが、こうした揺らぎのある音楽の良さを再発見するきっかけにもなりました。個人的にはこれをきっかけにクラシック再訪もはじめました。


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04. SIGH「SHIKI」
日本の老舗ブラックメタルバンドの新作。近作ではブラックメタルというよりもプログレの味が強めになっていましたが、今作もその質感は変わらず。ただし、サポートメンバーに腕利きのメタルミュージシャンを起用したことにより攻撃力は格段にアップ。さらに歌詞も全編日本語で、しかも「死ぬのが怖い」というテーマをかなりストレートに扱っていることで非常にわかりやすい内容となっています。ベテランならではの凄みを感じるとともに、人間の根源的な恐怖を見つめ直すきっかけにもなりますね。


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05. Amorphis「Halo」
フィンランドデスメタルバンド。クリーンボイスのメロディも多く、攻撃性より抒情性を大切にした音楽性なのは近作の流れに沿っていますが、今作ではより曲への没入感を感じられました。特に鍵となるのは「The Moon」で、7拍子なのに耳について離れないメインリフとサビでのメロディのエモーショナルさはかなり中毒性が高くめちゃくちゃリピートしました。


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06. THOUSAND EYES「BETRAYER」
日本のデスメタルバンド。Thousand Leavesの頃から音源買っていましたが、毎回高品質なメロデスを届けてくれます。しかし今回は特に素晴らしい!テクニカルさ、メロディアスさはそのまま、どの曲もキャッチーで覚えやすく、ギターリフのメロディを何度でも聴きたくなるアルバムになっています。影響元を感じさせつつも日本人好みのメロディになっているあたり、日本人が一番楽しめるメロデスがこれだ、という感じがありますね。


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07. The Halo Effect「Days Of The Lost」
メロデスの大御所、IN FLAMESDARK TRANQUILLITYなどのメンバー経験者が集まったいわゆるスーパーバンド。中でもギターのイエスパーが真正面からメロデスをやるというのはインパクト大でした。内容はメンバーから想像できるものを期待通りのクオリティで仕上げてくれたなという感じ。初期IN FLAMES的な疾走曲あり、DARK TRANQUILLITY的なスケール感の大きい曲ありで、いずれもギターメロディが曲をリードしつつもバンドとしての力強さも確かに感じます。本家IN FLAMESも影響されてかクサメロ増量の新作を製作中の雰囲気ですが、こちらもできるだけ継続してクサメロメロデス疾走曲を作り続けてほしいものです。クサメロメロデス疾走曲はどれくらいあってもいいですからね。


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08. KAMIJO「OSCAR」
すっかりソロでの活動が定着した感のあるKAMIJOの新作ですが、既発売のシングルからの曲も多め…かと思いきや、しっかり作り直されていて驚きました。特に「Symbol of Dragon」など、こんなに来る曲だったか…と思わされました。全体としてはいつものKAMIJO節で、壮大なオーケストレーションにテクニカルなバンド、クサいメロディという黄金パターン。なかでも特筆は最後の「NOBLESS OBLIGE」で、彼の過去作などとメロディや歌詞を関連付けつつクライマックスを描く手法が見事に提示されています。ここにたどり着くためのアルバム。


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09. VOIVOD「Synchro Anarchy」
カナダのプログレメタルバンド。私が聴き始めたのは現ギタリストによる新体制になってからですが、今作も安心の「奇妙なメタル」が聴けます。オリジナルギタリストのピギーはピンクフロイドやクリムゾンなどのプログレからの影響が強かったのだと思いますが、現ギタリストのチューウィは加えてクラシックにも造詣が深い様子。前作でもバルトークのフレーズを引用していましたしね。今作では引用というよりは楽曲のアレンジにそのクラシック由来成分を強く感じました。同時に複数の主題が展開していく対位法的な楽曲はメタルでやるとこうなるのか、と面白く聴けましたね。


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10. DIR EN GREYPHALARIS
日本のバンド。ヴィジュアル系の中でも別格といった知名度と影響力を誇りますが、毎回アルバムは挑戦的で、正直なところ近作2枚くらいはちょっと理解しきれない面があり聴き込めていなかったのも事実でした。しかし今作は痛快!近作で培った即効性や振れ幅、テクニックを用いてUROBOROSのときのような現時点での集大成のようなアルバムに仕上がっているのかなと感じました。それでいて一筋縄ではいかない聴き込みを要求される感もあり、面白いですね。各メンバーのこのバンド以外での活動も少しずつ増えてきていますが、うまく棲み分けができているようだなと感じます。日本の土着系怪談を思わせる空気感は印象的ですね。


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