アーバンギャルド「昭和九十年」

アーバンギャルド渾身の一作。
ガスマスクと水玉のジャケットに象徴されるように内容は前作よりさらに社会的。
それでいて中途半端でなく真っ向勝負であることやアレンジの妙で社会性が聞きづらさにならないところは流石といったところか。

ほとんどの楽曲が「昭和九十年」(≠平成二十七年)を舞台に書かれており、そういった意味ではコンセプトアルバムとも言える。
昭和九十年の世界はどうやら非常に物騒なようだが、それもまた「可能性」というパラレルワールドのひとつ、ということだろうか。

松永天馬による歌詞も相変わらず冴え渡っている。
名文へのオマージュを混ぜつつ聴き心地のよく韻を踏んだ詩は楽曲のポップさと相まって時に暴力的なほど快楽的に響く。

サウンド面では正式メンバーとして加入したキーボードのおおくぼけいの貢献が非常に大きいように感じる。
松永や浜崎の求める世界観を増幅して表現しており、ピアノのプレイはもちろんアレンジでの華やかさがグッと向上した印象だ。
クラシックの下地からもたらされる安定感がとても心地よい。
HMV特典のアコースティックCDにはピアノ主体でのアレンジが数曲収録されていたが、そちらも素晴らしい内容だった。

これは来春のツアーを見に行かねば。