東京佼成ウインドオーケストラ「第161回定期演奏会」

TKWOの161回定期に行ってきました!

 

■曲目

01.幻想(A.コスミッキ)

02.プスタ(J.ヴァンデルロースト)

03.ブリュッセル・レクイエム(B.アッペルモント)

04.交響曲第6番「コッツウォルド・シンフォニー」(D.ブルジョワ

En.ロンドンデリーの歌(P.グレインジャー編)

 

■幻想(A.コスミッキ)

Fantasmagorieという原題で、特定のひとつの情景というよりは様々な幻想が切り替わるのを見せられるような楽しい曲。各楽器のソロや見せ場が多く、おどけた役者たちの掛け合いを見るようで楽しめました。後半ではリズミックな仕掛も多く、ガーシュウィンバーンスタイン的なダンスの情景が描写されました。演奏は端正かつ熱く、奇をてらわず誠実な盛り上がりを見せてくれる指揮者なのだなという印象を受けました。

 

■プスタ(J.ヴァンデルロースト)

非常にキャッチーであり、昔からのおなじみの人気曲であるので今回の曲目の中でも知名度が最も高かったと思われる楽曲です。演奏はわかりやすさをそのまま美味しくどうぞという感じ。快速な踊りの部分の中でも和音の美しさを決めていくのはさすがでした。相応に難曲ではあるのですが、この日の濃厚な楽曲群の中にあっては箸休め的な位置づけでしたね。

 

ブリュッセル・レクイエム(B.アッペルモント)

完全に本日の白眉、名演であり爆演でした。冒頭のクラリネットソロの緊張感が保たれたまま最後まで一気呵成に駆け抜ける16分であり、すべての瞬間が素晴らしかったです。特筆すべきはやはりトランペットの超絶ソロとユーフォニアムのメロディと高速パッセージ。危なげのない見事なテクニックでありつつ緊迫感がものすごく、非常に心を打たれました。後半にかけてのトゥッテイでの音が塊となる感触やそれをドライブするティンパニとスネアドラムも最高。また、弱奏での表現力も素晴らしく、特にクラリネットセクションの息の合った和音は心地よく響いていました。

 

定期演奏会が中野に移ってからのTKWOはこういった現代風な難曲を多く取り上げているようにも見え、数回前のワインダーク・シーでも同様の感触を得たのですが、こういったいわゆるコンクール受けのする曲をこれまでの定期で培ってきた地力でブーストしているように見えてとても痛快です。正指揮者の大井さんが以前、管弦楽からの編曲ものを取り上げる意義として楽団としての語彙を増やせるということを挙げていたと思うのですが、それがしっかり出ていたと思います。また聴きたくなる演奏でした。

 

交響曲第6番「コッツウォルド・シンフォニー」(D.ブルジョワ

曲名はちょっといかつそうなのかな?と思っていたのですが実際はコッツウォルドという地域を描写したとてもわかりやすい楽曲。冒頭の夜明けなどは以前CDなどで聴いたときはもろにラヴェルの夜明けだなと思っていたのですが、実演で聴くと思いのほか印象が異なり驚きました。これは和音の手触りによるもので、やはりイギリス的というか、同じような曲想を描いても少しゴリゴリとした雰囲気が出てしまうのだなと。

 

メイポールやローマ軍の行進など、副題に沿った楽想が展開されていきますがここでも横山さんの棒は端正で、楽曲そのものの良さがしっかりわかる感じ。全体的にテンポの揺らしを少な目にしてぐんぐん進んでいく感じは現代的とも思いました。しかし5楽章の古い町のパートではアンサンブルの難所が連続。リズム遊びが入ったり、かと思えば息の長いメロディーが飛び出したりとどこかグレインジャーの雰囲気も感じましたね(あちらはもう少し多層的ですが)。

 

終楽章は各楽章を引用しつつ壮大に。吹奏楽のうまみとして強奏での爽快感は確実にあるので、そこを真正面から演奏しきってくれるとこちらもすっきりしますね。いい演奏でした。

 

■ロンドンデリーの歌(P.グレインジャー編)

横山さんによる短いスピーチのあとアンコール。

難曲ばかりだった演奏会のクールダウンとして最適な選曲でした。

グレインジャーによる楽器が複雑に絡み合うアレンジも面白く、TKWOの良さが出ていたと思います。

 

今回も気合十分の充実した演奏会でした。

横山さんとTKWOの相性の良さも感じましたし、今回からコンサートマスターとなった林田さんも合奏体を牽引していこうという勢いが感じられ、今後のサウンドの変化も楽しみにしてくれる会であったと思います。次回は9月。楽しみです。