2020ベストアルバム

今年も選びました。

Anaal Nathrakh「Endarkenment」

BUCK-TICK「ABRACADABRA」

BORISNO

GEZAN「狂(KLUE)」

DGM「Tragic Separation」

Phew「Vertigo KO」

アーバンギャルド「アバンデミック」

須川展也「バッハ・シークェンス」

米津玄師「STRAY SHEEP」

SLAVE.V-V-R「EDEN of SLAVE」

 

 

Anaal Nathrakh「Endarkenment」

 

毎回奇怪なブラックメタルを届けてくれるAN。ハイテンションで狂ったような激しいパートとサビでのクリーンボイスによるエモーショナルな歌い上げが持ち味ですが、今回は激しいところはさらに激しく歌い上げはさらに泣きのメロディを入れてきています。歌詞や楽曲の説明がブックレットに明記されているのも今までと異なる点で、これまでは総合的なサウンドとしての主張だった社会への批判的な目線がよりわかりやすく提示されているように感じました。

 

 

BUCK-TICK「ABRACADABRA」

 

制作の終盤からCovid-19が猛威を振るい始め、どうなるかわからない空気の中で完成されたアルバム。この状況になってから作られたのは「ユリイカ」のみですが偶然にもアルバム全体のテーマが「逃避」であり、今年の空気感をパッケージした作品にしあがりました。ここ数作での彼らの作品に比べ、歌詞もより現実世界に近い描写がされており、より幅広い層に共感しやすい内容になっています。B-Tに興味はありつつもハマりきれていなかった私にもこのアルバムは強く刺さりました。

 

 

BORISNO 

NO

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  • アーティスト:Boris
  • 発売日: 2020/11/11
  • メディア: CD
 

 

ノイズにまみれた強烈なサウンドのイメージであったBORISの新作はこの情勢を受け、より肉体的というか直感的なサウンドに。

いろいろな実験的要素を経過してきたうえでの直感的でメタリックなサウンドはただひたすらにカッコよく痺れました。

 

 

GEZAN「狂(KLUE)」

 

奇しくもCovid-19以前までの閉塞感のようなものを切り取ったスナップショットとしての見え方もできるアルバムになりました。ほぼ一定のテンポで進みつつ「今」に最大限にフォーカスした詩をつづっていく様はヒリヒリとリアルです。

 

 

DGM「Tragic Separation」

 

イタリアのプログレメタルの最新作。もともとDream TheaterSymphony Xのいいとこどりをしたようなテクニカルさ、ヘヴィさが好きなバンドでしたが、今までよりアルバム全体としてのクオリティがさらにグッと上がってきたなという印象。シモーネのギターメロディもよりオリジナリティが増し、サウンドもアリーナを思わせる壮大なものに。これからも楽しみなバンドです。

 

 

Phew「Vertigo KO」

 

かつてアーント・サリーVoをつとめたPhewの新作は朝から夜への一日を思わせるアルバム。楽曲自体はいろいろな時期につくったものをまとめたもののようですが、近年のPhew電子音楽や声だけのアルバムのような挑戦的な表現のうちの濃い部分がうまく切り取られているように思いました。テレワーク期間ではこういったアンビエント的な音像を聴くとなぜか落ち着いたんですよね。

 

 

アーバンギャルド「アバンデミック」

 

なんと今年2枚目のアルバム。前作はメンバー脱退を受けての現状把握的なアルバムでしたがこちらは世情を受けての非常にハイテンションな楽曲群が並びます。2011年のガイガーカウンターカルチャーしかり、世間への批評的な目線が必要になるときに彼らは真価を発揮するのかもしれません。状況に怒るのでもなく諦めるのでもなくポジティブにネタとして昇華していく姿勢は素晴らしいと思います。

 

 

須川展也「バッハ・シークェンス」

 

サクソフォンでやる必然性が見つかるまでは…と今まで手を出していなかったバッハに須川がついに挑戦。無伴奏のサックス一本によるアルバムであり、これもCovid-19時代のひとつの回答といえるでしょう。須川の音色はもちろん今まで通りの「須川の音」なのですが、こう歌うのだという確信を持った音楽の推進力が耳を奪います。

 

 

米津玄師「STRAY SHEEP」

 

やはりこれを外すわけにはいきませんでした。そこまで熱心なリスナーというわけではないのですが、パプリカをはじめ海の幽霊、Lemon、感電といったここ数年を代表する名曲が複数収録。ミドルテンポの曲が多くなっていてかつての高速な楽曲群が恋しい気持ちもありますが、これらの不思議なコード感を無意識に聴きながら育った世代がどうなるのかという点にも期待がふくらみます。

 

 

SLAVE.V-V-R「EDEN of SLAVE」

 

楽曲を発表するたびに引退するのでおなじみのボーカロイドPによるサブスクリプション形式のアルバム。月額支援を行うとアルバムを聴くことができるのですが、毎月数曲が追加されるため理論上は永遠に完成しないアルバムになっています。月額支援のリターンとして楽曲をリリースするだけであればありがちなのですが、あくまでもアルバムの一部が拡張するという扱いにしたところに個性が光ります。楽曲間での世界観は共有されており、架空の惑星に生息するキャラクターたちを描いたコンセプトアルバム的な聴き方が可能です。さらにブックレットにもこだわりが詰められており、自身で作成した3Dモデルのキャラクターを使用した一枚絵や地図なども存在。キャラクターがだいぶ増えてきたのでここからキャラクター間の絡みなどにも発展できそうでとても可能性を感じます。月間少年漫画雑誌として聴ける音楽アルバムとしておすすめ。楽曲としてはジャズやロックを素地にしたポップソングで、ジャズからのオシャレコードとロックからの攻撃力、ボカロ文化からのキメやポップネスが融合している感じ。特に語感を最大限に生かしたキメの作りこみは独特の中毒性を生んでいます。