広島ウインドオーケストラ「第54回定期演奏会 20201024」

広島WOの配信を観ました!

 

■セットリスト

01.シンフォニア・ノビリッシマ

02.第3組曲

03.交響曲第3番「神のかがやき」

04.ジュビラーテ

 

今回の演奏会では間をあけた客席配置に合わせて後日配信を行うという形での開催。広島WOは以前より意欲的な選曲と安定した演奏で好きなオーケストラのひとつでしたが、さすがに現地にいくほどの余力はなくライブ演奏は見たことがありませんでした。今まではハードルが高かった遠方のオーケストラの配信を観られるのはとてもうれしいですね。また、今回は合わせてこの演奏会と以前の演奏会からの録音を収録したCDも付属するという太っ腹っぷり。2000円で配信もCDも入手出来てしまうというのは少し心配になる価格設定です。この形態はとても助かるので、続けてほしいですね。(現実的な値段にUPしてもらっても、吹奏楽おたくは買うと思います!)

 

配信を観て驚いたのは映像のクオリティの高さ。画質もよいですがカメラワークがとても巧みで、このままDVDソフトなどとしてパッケージングできそうなもの。この演奏会にかける思いが伝わってくるようでした。

 

まずは定番中の定番、「シンフォニア・ノビリッシマ」。TKWOやシエナをはじめとした見事な録音が多い楽曲ですが、広島WOは全体にまろやかなサウンドで心地よい響きを堪能しました。打楽器の演奏、特にクラッシュシンバルの音は極上でしたね。弱奏部での美しい歌いこみも見事。よい演奏でした。

 

「第3組曲」ははじめて聴きました。マーチ、ワルツ、ロンドという構成ですがところどころでマーチの2拍子、ワルツの3拍子を逸脱するというトリッキーな楽曲。ただし一聴すると違和感が全くないのが面白いところで、ジェイガーがこういった音楽の形式を拍子でなくリズムパターンやオーケストレーションのみで表現しようとした感触があります。「マーチといえば2拍子、だけどこれもマーチに聞こえるよね?」というユーモアが面白いですね。演奏も素晴らしく、各ソリストの格調高い演奏が特に印象的でした。

 

メインは数年前に作曲された「交響曲第3番」。第1番ほどわかりやすくはないですが第2番ほど難解ではない、という感触。ホプキンズの詩に基づいているとのことで、神の偉大さと人間を対比させつつ壮大な世界観が繰り広げられてゆきます。演奏は素晴らしく、全編通してすさまじい集中力を感じさせる内容。2楽章の戦争あるいは破壊を思わせるパートでは弱奏ながらも不穏で攻撃的な印象で人間に対する批判的な視線も感じさせますが、それでも4楽章に向かってポジティブな響きが構築されてゆくのはただただ感動的。ジェイガーの辿ってきた年月を思わせる名作でした。

 

アンコールはかつての課題曲「ジュビラーテ」。きらびやかで明るい楽曲にオーケストラものびのびと演奏しているように感じられました。オールジェイガープログラムということでしたがシリアスな楽曲からキャッチーな楽曲まで幅広く、とても満足度の高い演奏会でした。CDも楽しみです。

cali≠gari「プライベート♥エロチカ2020 10月25日大阪バナナホール公演」

大阪公演も「自称関係者席」配信で観ました。

 

■セットリスト

01.エロトピア

02.ミルクセヰキ

03.トカゲのロミオ

04.トレーションデモンス

05.淫美まるでカオスな

06.ポラロイド遊戯

07.わずらい

08.僕は子宮

09.デリヘルボーイズ!デリヘルガールズ!

10.スクールゾーン

11.真空回廊

12.原色エレガント

13.さかしま

14.青春狂騒曲

15.ブルーフィルム

16.Sex on the beach

 

カリガリの東名阪ツアーもついに2日目。と言っても2回まわしをしているのでステージとしては4回目になるだろうか。新アレンジや新曲もだいぶ馴染んできた感がある。

 

名古屋と同様に「エロトピア」からスタート。「ミルクセヰキ」はバンドアンサンブルがさらにタイトになり飛び道具的な曲にとどまらない攻撃力を持ち始めているように思えた。「トカゲのロミオ」「トレーションデモンス」は名古屋では演奏されなかった曲。しかしカリガリのライブはいわゆる“定番”になりうるポテンシャルをもつ曲が非常に多いことを思い知らされる。定番曲だけでも数回分のセットリストが組めそうだ。

 

MCでは「僕は子宮」で着席してはどうか?と村井が発案し、イントロに合わせて座るリハーサルを行うという場面も。こういうのを打ち合わせするようなバンドではないのでおそらく本当に全部アドリブでやっているのだと思われるが、近年の彼らのライブの中でもひときわ印象的なMCとなった。続く「ポラロイド遊戯」ではギターソロにちょっとしたアクシデントがあったが、持ちなおしとそこからのテンションの持っていき具合に気合を見た。

 

この日の白眉は「さかしま」。アルバムではギターとボーカルの二重奏だったが、今回はドラムとベースがだんだんと重なり、スケールの大きなクレッシェンドが形成されていてたいへん感動的だった。「青春狂騒曲」「ブルーフィルム」といった人気曲の後に今回も「Sex on the beach」で終演。

 

今回も充実した内容だった。次回はいよいよ東京でのツアーファイナルだ。

聖飢魔II「特別給付悪魔 20201020 昼の部」

聖飢魔IIのヴィデオ黒ミサに参列してきた。

 

今回は感染症対策の意味もありヴィデオ黒ミサという形態となっていたが、単なる映像の上映とは一線を画すものに仕上がっていた。サウンドとしては各楽器で個別に録ったものをそのまま各ヴィデオ黒ミサ会場でミックスしているらしく、出音としては本物の黒ミサになんの遜色もないものだった。いや、録音されている音が確定していることにより理論的には本物の黒ミサよりも理想的な音質になっていたとも言えるのではなかろうか。

 

平日だったこともあり直前まで有給休暇の使いどころとにらめっこしながら散々悩んだのだが、行ってよかった。

筋肉少女帯「2020筋少1stライブ 20201018」

■セットリスト

01.孤島の鬼

02.暴いておやりよドルバッキー

03.日本印度化計画

04.枕投げ営業

05.モコモコボンボン

06.君よ!俺で変われ!

07.ムツオさん

08.ゾンビリバー

09.山と渓谷

10.猫のおなかはバラでいっぱい

11.サイコキラーズ・ラブ

12.イワンのばか

13.カーネーション・リインカネーション

14.ボーン・イン・うぐいす谷

15.ディオネア・フューチャー

 16.喝采よ!喝采よ!

17.サンフランシスコ

 

配信フェスには参加していたもののワンマンとしては今年初となる筋肉少女帯のライブは観客あり、配信ありのスタイルでの開催となった。

 

何より驚かされたのはいきなりの「孤島の鬼」。初期筋肉少女帯アンダーグラウンドな魅力が詰まったヘヴィな楽曲だ。「ドルバッキー」が終わるとMCタイム。観客の発声などを制限してのライブであることなどに触れ、自分では「あわあわ」しているという大槻だが喋りのキレは全くそのような印象とは真逆で絶好調。どのような状況においても自分たちのフィールドで面白おかしくネタにするというワザを堪能できた。

 

「モコモコボンボン」なども定番のひとつではあるが歌に入る際の内田の煽りもいつになく嬉しそうだったのが印象的。やはりメンバー全員ライブを楽しんでいるというのがよく伝わってきた。この日の配信のサウンドは本城のギターが大きめにミックスされていたのもポイントで、特にゾンビリバーなどではいままで隠れがちだった細かいフレーズを細部まで聴き取ることができ非常によかった。カッティングのキレ、センスともに職人技でシビれた。アルバムでもこれくらい分離よくミックスしてもよいのでは…などと。

 

あまりライブでは聴かない「山と渓谷」「猫のおなかはバラでいっぱい」といった楽曲も演奏され、よいアクセントになっていた。猫〜は大槻のnoteでもこれから演奏していきたい風の触れ方をしていた曲なので、今後のアコースティック枠に入ってくるのかもしれない。ちなみに大槻はこの自粛期間以降の期間を使って過去の作品群からいくつかのアルバムの全曲解説音声を行っている。過去の作品と腰を据えて向き合ったことで今後の作品にも影響が及ぼされるのでは…とリスナーとして楽しみだ。

 

最後は「サンフランシスコ」で締め。やはりこの楽曲を聴くと筋肉少女帯を聴いているという実感が湧く。この日の演奏はいつもに増してテンションが高く、ギターとピアノのソロバトルも最高のテイクだった。筋肉少女帯は来月にもライブがあるのでそちらも配信があれば観ようと思う。

 

clammbon「『2020』 20201002」

クラムボンの配信ライブを観た。

 

■セットリスト

01.タイムライン

02.サラウンド

03.はなれ ばなれ

04.ウイスキーが、お好きでしょ

05.ミラーボール

06.恋わずらい

07.君は僕のもの

08.便箋歌

09.Re-雨

10.ララバイ サラバイ

11.Long Song

12.yet

13.KANADE Dance

14.波よせて

15.シカゴ

16.Lush Life!

17.夜見人知らず

18.Bass,Bass,Bass

19.Slight Slight

20.あかり from HERE

 

クラムボンの今年の初ワンマンとなるライブ。モメントシリーズの中でも印象的な「タイムライン」で噛みしめるように幕開け、定番の「サラウンド」で一気に空気感をもっていくあたりはさすが。ウイスキーではブレイクに入るタイミングを間違えひとこまも。MCも演奏もライブの喜びにあふれており、楽曲のスタイルによらず全体的に多幸感にあふれたステージだった。

 

配信ライブならではの取り組みということで、のちのMCでも触れていたが「恋わずらい」「君は僕のもの」「便箋歌」といった近いテンポ感の曲を続けざまに披露してみたり、「雨」〜「ララバイ」〜「Long song」といった即興的で長尺の曲を続けてみたりという工夫の凝らされたセットリストだった。特に後者の長尺パートは物凄い集中力で、このバンドのアンサンブル力をあらためて思い知らされた。

 

アンコールでは自粛期間中にリリースされた新曲「夜見人知らず」が披露され、続く「Bass,Bass,Bass」では全員がステージを降りてパーティーを始めるパフォーマンス。シリアスな本編からシームレスにこうしたおちゃらけた遊びに入っても違和感がないのはこのバンドのキャラクターの強みだ。最後の「あかり from HERE」まで暖かさにあふれたよいライブだった。クラムボンのライブは映像ソフトや配信でしか見たことがないが、次は現地で見てみたいと強く思わされた。

 

 

波多野裕文「継承されるありふれたトラの水浴び」

01.継承されるありふれたトラの水浴び

02.あえなく継承されたありふれたトラの水浴び(outro)

03.やがては統合されるありふれたトラの水浴び(outrotro)

 

代官山 晴れたら空に豆まいてクラウドファンディングのリターンとしてリリースされたPeople In The Box波多野のソロ曲。イラストレーター三好愛とのコラボレーション作品で、イラストカードと楽曲がセットになっていた。三好はこれまでもPITBの物販で「箱」のイラストを担当しており、あたたかみのあるイラストが印象的だった。

 

当初は「継承されるありふれたトラの水浴び」のみがリターン対象の予定だったが、楽曲にインスパイアされてイラストが描かれ、イラストにインスパイアされて楽曲が追加され…という相乗効果により結果として3トラックが完成、リリースされることになった。

 

「継承されるありふれたトラの水浴び」は今年頭のライブでも披露されたことがある楽曲のようだ。優しい音色のキーボードと歌声に乗せてややきびしめの歌詞が紡がれてゆく。途中で入ってくるピアノ、ストリングスやかすかに鳴るコーラスが加わり静かな印象を保ちながらクライマックスに向かってゆく流れは包み込まれるようで心地よい。

 

「あえなく継承されたありふれたトラの水浴び(outro)」はWether Report期の楽曲にやや近く、より生らしい楽器の音がパズルのように配置される。繰り返されるギターのフレーズの上で響くトランペットやコーラスが印象的だ。後半突然始まるビートが存在感を引き立たせる。

 

「やがては統合されるありふれたトラの水浴び(outrotro)」はスキャットで繰り返されるメロディの裏でピアノなどの楽曲が鳴り響いたかと思うと一旦のリセット。ピアノフレーズが核となり新しいボーカルフレーズが始まる。ここでも後半にビートが導入される。前半と後半のボーカルメロディが同時に鳴り響き統合を象徴して楽曲を閉じる。

 

3曲を通じて明確に継承されるテーマメロディがあるわけではないようだ(あえていうなら、outroおよびoutrotroに使用されているアルペジオ音型はやや共通点が感じられる)が、サウンドの方向性は通底しており、あわせて一つの作品となっている。

DGM「Tragic Separation」

トラジック・セパレーション

トラジック・セパレーション

  • アーティスト:DGM
  • 発売日: 2020/10/07
  • メディア: CD
 

  

01.Flesh And Blood

02.Surrender

03.Fate

04.Hope

05.Tragic Separation

06.Stranded

07.Land Of Sorrow

08.Silence

09.Turn Back Time

10.Curtain

 

イタリアのプログレメタルバンドDGMの新作が出た。結成当初にメンバーの頭文字をとって名付けられたバンドだが現在は全員入れ替わっている。メンバーチェンジのたびに音楽性を洗練させ、今ではDream TheaterSymphony Xを混ぜ合わせたようなハイクオリティな作品を産み出すバンドになっている。

 

当然メンバーの演奏技量も非常に高いのだが、特にギターのシモーネ・ムラローニは近年のイタリアンメタル界になくてはならない存在で、ファビオ・リオーネとアレッサンドロ・コンティのコラボでの楽曲提供やギター演奏、Secret sphereでのエンジニアとしての参加など枚挙に暇がない。しかし彼のギターの真骨頂はやはりDGMだ

 

今回も音楽性は前作までを踏襲しており、ハードなリフとメジャーなサビを持つ明るいサウンドの楽曲が並ぶ。サビでのフックが更に強化されている印象を受け、今までのアルバムだともう一声欲しくなっていたような箇所がかゆいところに手が届くメロディになっていて痛快だ。マーク・バジルの歌も素晴らしく、イタリアンメタルらしい高音の延びと骨太なサウンドが聴ける。

 

明確なコンセプトがあるわけではないと思われるが、全体を通して精神的な旅のようなものを感じさせるようなつくりになっており、最後の「カーテン」が映画のエンドロールのように響いてくる壮大な世界観だ。このスケールのサウンドをぜひ生でも聴いてみたいものだ。