森下唯「星はうたう @ 海老名市文化会館 小ホール」

日本のアルカン弾きといったらこの方という森下さんのコンサートを聴いてきました。

 

■セットリスト
01.3つの情景の夜想曲より「星はまたたく」(パルムグレン)
02.NOCTIS(下村陽子/亀岡夏海
03.夜想曲 op.9-2(ショパン
04.別れのワルツ op.69-1(ショパン
05.子犬のワルツ op.64-1(ショパン
06.ワルツ op.38(スクリャービン
07.ピアノソナタ第3番 op.23(スクリャービン
08.12月「オペラ座」 op.74-12(アルカン)
09.12月「クリスマス」op.37bis(チャイコフスキー
10.歴史は語る(佐橋俊彦/ピアニート公爵)
11.Valse di Fantastica(下村陽子/宮野幸子)
12.綺羅星円舞曲(下村陽子/亀岡夏海
13.ガンバスター幻想曲(田中公平/ピアニート公爵)

 

En.
14.小夜想曲(アルカン)
15.美女と野獣(メンケン/森下唯)

 

高音のフレーズがまさにきらめきを表しているかのような静かできれいなパルムグレンの作品で幕開け。続くFF15のNOCTISやショパンノクターンと、夜をテーマにした楽曲が続きます。森下さんはアルカンなどの超絶技巧楽曲も得意とされていますが、こういった静かで歌わせるような楽曲も非常に魅力的です。特に聞かせたいフレーズのバランス感覚がとても上品で、聴いていて心地よくなりますね。

 

ワルツが続くセクションではショパンらしい揺れを持たせた演奏。やはりアルカンだとカッチリとした曲が多いので、こういったテンポの揺らしを含む楽曲は新鮮です。ここでも絶妙なタメで素敵な流れを演出していました。

 

前半最後はスクリャービンソナタスクリャービンの中でも演奏を聴く機会が比較的多い曲ですね。テクニカルなところはバシっときめつつ3楽章などでは息の長い歌心も聴くことができ、堪能しました。

 

後半はアルカンから。短いながらもアルカンらしい描写的な音楽で、引き続き12月集つながりでのチャイコフスキー。彼らしい綺麗なメロディが印象的でした。シムーンFF15といった劇伴の曲を挟んで最後はガンバスター幻想曲。この日の私の最大の目当てです。

 

ガンバスター幻想曲は原作のストーリーを追体験するような形でまとめられた楽曲ですが、アルカンも想起させるような非常にテクニカルなアレンジが施されており一瞬たりとも目を離せません。過去の演奏動画がアップロードされていますので、ぜひ視聴をお勧めします。私はその動画をきっかけに「トップをねらえ!」を観ました…。演奏は期待通り素晴らしく、舞台照明による効果も最大限に活用されていました。劇中での1万2千年の経過が表現されるパートがあるのですが、そこでのスポットライトの使い方と静寂、最後に向けてのミラーボール的な照明は感動的でした。このアレンジの素晴らしいところはやはりその「静寂」の箇所だと思っていて、この楽曲のいちばんのクライマックスがここに設定されていると考えています。無音がクライマックスになる曲なんてそうそうありません。私の周りの方もここでは目頭をおさえていらっしゃいました。非常に感動的な演奏でした。聴けてよかった…。

 

アンコールはおとくいのアルカンと自身の編曲による美女と野獣(これも超絶的な編曲)。一見すると軽そうなプログラミングですが、とても満足感のある演奏会となりました。またこういうの、やってほしいですね。

 


GUNBUSTER FANTASY for piano (Kohei Tanaka / Pianeet)