TKWOでした。 pic.twitter.com/EcIR06YSGg
— tk (@tk_saxo) January 16, 2021
01.「グレの歌」のモチーフによるファンファーレ(A.シェーンベルク)
02.吹奏楽のための「幻想曲」ーアルノルト・シェーンベルク讃ー(尾方凛斗)
03.映画の一場面への伴奏音楽(A.シェーンベルク/大橋晃一)
04.ミス・サイゴン(シンフォニック・ポートレイト)(C.M.シェーンベルク/J.デ・メイ)
05.ラ・マルセイエーズ(C.J.R.ド・リール/大橋晃一)
06.「レ・ミゼラブル」セレクション(C.M.シェーンベルク/大橋晃一)
今回のTKWO定期はシェーンベルク姓を持つ2人の作曲家にスポットを当てた企画。
かたや現代音楽、かたやミュージカルというかなり振れ幅の大きくなりそうな企画ですが、A.シェーンベルクが映画を想定して書いた楽曲を入れてみるなど統一感もあり面白かったです。
前半はA.シェーンベルク。ファンファーレは2分ないくらいの短い作品ですが3つのモチーフが登場。TKWOの金管セクションはいつも通りの上品な響きで、コンサートの開幕にふさわしい演奏でした。特に冒頭のホルンはバッチリきまっていて痺れました。
次はA.シェーンベルクのOp.47を下敷きに作曲された2020年(および2021年)の吹奏楽コンクール課題曲5番。こういった現代音楽の作品は現場で聴いてこそわかるものが多く、不協和音のヴェールの中から印象的な旋律が浮かび上がってくるような様はとても綺麗でした。川瀬氏の棒は情熱的ながらも非常に明快で、場面の展開があざやか。後半のテンポが速くなった箇所はとくに見事でした。
映画の一場面への伴奏音楽は「迫りくる危機」「破局」「不安」のシーンを想定して書かれたものらしく、確かにそれらの緊張感あるシーンはA.シェーンベルク向きかもしれません。メロディらしいメロディはないとはいえ十分に和声的で、身構えていたよりすんなり聴けました。劇伴ということもあり弱奏でこまやかな表現が求められる箇所が多かったですがTKWOはさすがの集中力。
ミス・サイゴンは7分程度の宍倉版がよく吹奏楽コンクールで演奏されていましたが、今回はデ・メイ版の20分程度のアレンジ。使われるモチーフは近いもののこちらは1曲に割かれる時間が多く、よりたっぷりと原曲のメロディを楽しむことができました。
ラ・マルセイエーズはフランス国家。今回はレ・ミゼラブルの前奏曲として3分程度にアレンジされたものでそのままレ・ミゼラブルに入る演出。薄めのサウンドから始まって盛り上がるさまは単品で聴いたとしてもかなりよさそうな感触でした。
そしてメインのレ・ミゼラブル。吹奏楽シーンではオペラやミュージカルを取り上げられることは多いですが、今回のように1つの作品に40分も割ける企画は初めて見たかもしれません。もとが歌の曲を管楽器向けにアレンジするので、その過程で「歌詞」は失われることになります。その結果、歌詞が変わる、いわゆる「2番」のような箇所が管楽器だと「繰り返し」になってしまい、メドレーにする際などは省略されることがよくありますし、確かに理屈はわかります。しかし、実際にたっぷり時間を使った編曲として聴いてみてわかりましたが、たとえ歌詞がなくともメロディが繰り返されることにはやはり意味があるし、長い時間をかけるということは実は大事なのだな、と感じました。もちろん編曲もただ繰り返すわけではなくメロディの担当が変わったりと趣向が凝らしてあるので飽きるというわけではありません。オペラやミュージカルの編曲ものは今までパフォーマンス重視の少し軽めなもの、という認識でしたが、こういった取り組みであればもっと聴いてみたいと思わされました。
演奏も素晴らしく、特に各ソロは最高でした。ソプラノサックス、トロンボーンは特に印象的でしたね。ここでも川瀬氏は情熱的かつスタイリッシュな演奏。特にトゥッティでの強奏でのあおりっぷりはものすごく、TKWOがここまで音量を出しているのは久しぶりに聴いたかもしれません。
期待していたよりさらに濃厚なよい演奏会でした。
次回の定期は4月末の予定。こちらも楽しみです。