01.シンフォニア・ノビリッシマ
02.呪文と踊り
03.イギリス民謡組曲 第1曲 行進曲《日曜日には17歳》
04.イギリス民謡組曲 第2曲 間奏曲《私の素敵な人》
05.イギリス民謡組曲 第3曲 行進曲《サマセット地方の民謡》
06.行進曲《海の歌》
07.吹奏楽のための《クロス・バイ マーチ》
08.シンフォニック・バンドのためのパッサカリア
10.復興
11.ブラジル
12.宝島
年に正指揮者に就任してから常にクオリティの高い演奏を提供し続けてくれている大井剛史。これまでのリリースはライブ録音のものが多かったが今回はセッション録音でのフルアルバムとなる。
「シンフォニア・ノビリッシマ」はジェイガーの代表作で祝祭的な雰囲気に包まれた名曲。きらびやかさを出しつつも落ち着きのある上品な演奏。「呪文と踊り」はチャンスの代表作のひとつで、以前のアルバムでも「朝鮮民謡の主題による変奏曲」が取り上げられていた。美しいソロとキレのあるリズミカルな部分の対比が印象的。
「イギリス民謡組曲」および「海の歌」はヴォーン=ウィリアムズの古典名曲。比較的平易な技術で演奏可能だが充実したメロディとオーケストレーションで非常に演奏効果が高い。3楽章ラストの解釈は演奏者によって様々なバリエーションがあるが、大井の解釈は楽譜に忠実に素材の良さを引き出しており好印象。各パートの素晴らしいソロもあいまってこの楽曲の決定版のひとつになったと思う。
三善晃の「クロス・バイ・マーチ」はうってかわって現代的で複雑だが、持ち前のきめ細やかなサウンドで楽曲の面白さがクリアーに伝わってくる。兼田敏の「パッサカリア」やヒルの「セントアンソニー」もかつて吹奏楽コンクールで流行した楽曲たち。ただしここでは派手さに頼るのでなく楽曲本来の姿が味わえるような調理をされている。「復興」は東日本大震災の後に大人気となった(作曲されたのはそれ以前)楽曲で、プロ団体での腰を据えた録音が出たのは嬉しい。不穏な冒頭から光明がさすクライマックスまでのストーリーの描きかたは圧巻だ。アンコール枠としてはニューサウンズ・イン・ブラスの2曲も収録。ここでも上品なサウンドを聴かせてくれた。
いずれもよく知られた楽曲であり、東京佼成としての録音が2回目以上のものもあって目新しさという点ではやや地味なアルバムであるが、そのぶんこのオーケストラ自体の個性をトータルで味わうことができる作品になっていると思うし、時代とともにレパートリーを拡張だけでなく更新もしていく姿勢は好感が持てる。
まだまだこのオーケストラで聴いてみたい曲は沢山あるので、このシリーズの今後にはさらに期待したい。