東京佼成ウインドオーケストラ「第155回定期演奏会」

前回の定期を聴いた際は次が結構先だなと思ったものですが、いつの間にやら今日を迎えていました。

 

01.主題と変奏(A.シェーンベルク
02.交響曲第3番(V.ジャンニーニ)
03.パッサカリア(A.リード)
04.交響曲第3番(A.リード)

 

 本日は正指揮者の大井氏による演奏。シェーンベルク、ジャンニーニ、リードといった吹奏楽の伝統的な楽曲が取り上げられました。ジャンニーニはリードの師でもあり、リード関連の楽曲が3/4を占める演奏会だったといえます。ちなみに今年はアルフレッド・リードの生誕100年であり、広島ウインドなどもリードにフォーカスした演奏会を行っていました。

 

 前半はまずシェーンベルクの「主題と変奏」。シェーンベルクが学生向けに書いた曲で、提示される主題がアレンジされて繰り返される変奏曲というフォーマットは確かに学生に取っつきやすいスタイルとも言えます。しかし実際の内容はかなり硬派で、シェーンベルクらしい複雑なメロディと凝った変奏で難易度はかなり高く仕上がっています。 

 

 TKWOの演奏はそんな難解に見える楽曲をかなり解きほぐして提示するような端正なもので、特に楽器間での音量バランスのとり方が絶妙だったように感じました。ともすれば見失いがちな主題を追いやすく、なるほどこういう曲だったのだな、とあらためて魅力に気づくことができました。

 

 続くジャンニーニ「交響曲第3番」は非常に快活な楽曲で、TKWOも今までに何度も取り上げたことのあるもの。私もフェネル指揮の音源を所持しています。かっちりとした構成の楽曲でありながら、そのテンションの高さから後半にかけ一気呵成に駆け抜けるイメージも強い曲ですが、ここでも大井氏はメリハリのきいた見事な演奏を披露。特に四楽章での木管の速いパッセージのしなやかさと金管のファンファーレ音型の対比など鮮やかで聴き惚れました。二楽章のオーボエのソロも素晴らしく、あらためて何回も演奏されるだけある名曲と思いました。

 

 休憩を挟んでリードの「パッサカリア」。これは今日の白眉でしょう。冒頭に提示される短いテーマが低音部で繰り返し演奏され、その上で様々な展開が繰り広げられる曲です。これも変奏曲スタイルとも言えますが、シェーンベルクとは全く異なる響きが引き出されます。前半はバッハのシャコンヌのような厳かな響きではじまり、中間部でハープが加わってからのロマンティックな響きはとてもアメリカ的。終結部に向かって巨大建築を建てていくような盛り上げも圧倒的でしたし、連続性を保ちながらも場面ごとのキャラクターをしっかり描き分けた演奏力にも感服です。

 

 最後はリードの「交響曲第3番」。シリアスにがっちり構成されたパッサカリアに比べ、こちらはいわゆるリードらしさにあふれた作風の楽曲で、三楽章構成です。一、三楽章でのこれぞ吹奏楽という鳴らしっぷりは感動的でしたし、二楽章の綺麗な組み上げも素敵でした。大井氏の正指揮者就任時のアルメニアン・ダンスでも感じたことですが、大井氏とTKWOの組み合わせでのリード作品はそれまで聴いた響きよりもあきらかに解像度が高く、よりくっきりと細かいところまで見えるように感じます。リード作品はゴージャスな響きがする反面、よほどうまくやらないと厚ぼったく聴こえる瞬間ができてしまうことがあると思うのですが毎回素晴らしい演奏を聴かせてくれありがたい限りですね。

 

 大井氏が取り上げる吹奏楽オリジナル作品は毎回楽しみにしているので、来期はどのような選曲で来るのか今から楽しみです。