第3回吹奏楽カフェに行った話

TKWOの吹奏楽カフェも第3回。今のところ皆勤賞。

 

今回は9月の定期演奏会に関する会。
指揮者の大井剛史さん、作曲家の中橋愛生さんによるトークはいつも通りだが、9月定期は大井さんが振るのでその意味でも注目だ。

 

この9月定期のテーマは「オストウォルド賞の系譜」で、アメリカで1950年代から続く吹奏楽の作曲賞であるオストウォルド賞を受賞した作品群を並べたプログラムとなっている。


比較的近年の受賞作では「ハリソンの夢」「レッドライン・タンゴ」「シンフォニア」などは日本でも頻繁に取り上げられているが、そもそもこの賞の成立や歴史についてはあまり知られていないということから、中橋さんが調べた資料を軸にレクチャーが行われた。

 

今回も動画版がアップロードされると思われるので、詳細はそちらで確認いただくとして、賞の成り立ちや歴史だけでなく、選考の意図や応募する作曲家の傾向などにも触れつつ説明されるのがとても面白かった。中でも初回と2回目の受賞曲がいずれもクリフトン・ウィリアムズによる曲であることは想像以上に重要で、賞としての方向性を決定づけたと同時にクリフトンの吹奏楽に対する熱意が弟子たちの応募をうながし、賞を活性化させたという読みはなるほどと納得させられた。ジェイガーが賞金稼ぎ的に多数応募していたと思われたのも面白かった。

 

ある程度、賞の概要を説明した後は作曲年代順に演奏曲の説明。
交響組曲では譜例を見つつ、主題労作としての出来のよさについて言及。
朝鮮民謡の主題による変奏曲ではアリラン自体の説明(そもそも映画で使われた版のアリランを主題として採譜されたことによる西洋的なメロディ)からはじまり、チャンスの譜面とのフレージングの違い(スラーの開始位置により、フレーズの開始点が異なり、西洋風=アウフタクトに改変されている)などの説明も。

 

休憩を挟んで、バーンズの交響曲第1番ではそもそもバーンズの交響曲は形式としてはとても伝統的であるという話や、彼の改訂に関するスタンスの話など。
最後に周天のシンフォニアでは彼の生い立ちに触れながら、吹奏楽と他ジャンルとの融合などについても言及され、作曲家本人からのビデオメッセージも上映された。

 

情報量が大変多く、質疑応答の時間もとれないほど時間が押したのだが、そのぶん満足感たっぷりの内容だった。
これを受けて、大井さんが9月にどのような解釈で演奏を行うのかが今から楽しみだ。