東京佼成ウインドオーケストラ「第154回定期演奏会」

4月の定期が中止になってしまったため、第153回はとばして今回、第154回。

 

01.フローレンティナー・マーチ(J.フチーク/M.L.レイク 編/F.フェネル 校訂)
02.吹奏楽のための抒情的「祭」(伊藤康英)
03.「指輪物語」よりⅠ・Ⅲ(J.デ・メイ)
04.ブルー・シェイズ(F.ティケリ)
05.古いアメリカ舞曲による組曲(R.R.ベネット)
06.ウェディング・ダンス(J. プレス/H. ジョンストン 編/F. フェネル 校訂)
07.美しきドゥーン川の堤よ土手よ(P.グレインジャー)
08.行進曲「ローリング・サンダー」(H.フィルモア/F.フェネル 校訂)
09.行進曲「ヒズ・オナー」(H.フィルモア/F.フェネル 校訂)
10.シェナンドー(F.ティケリ)

 

 今回のTKWO定期はF.フェネルの弟子でもある原田氏による指揮で、フェネルゆかりの楽曲が多く取り上げられた企画。特に後半はフェネルがよくアンコールとして取り上げた楽曲をメインプログラムとして取り上げており、熱い演奏会でした。原田氏の棒はたしかにフェネルを感じさせるもので、感情に強く重点を置いたような派手な印象。

 

 フローレンティナー・マーチはフェネルが初めてTKWOを振った際の楽曲とのこと。整った響きを見せつつ、中間部ではガラッと印象を変え、たっぷりと歌わせていました。行進曲といえどコンサートとして再解釈を行っているような感触で、確かにこの辺はフェネルの弟子という印象を受けました。抒情的「祭」は青森の海上自衛隊大湊音楽隊に書かれた作品で、ねぶたなどを題材に祭りの情景を描いたもの。大太鼓が用意され、後半でのtutti部ではかなり大きく鳴らしていました。前半の静けさからの対比と最後のまくり具合がすさまじかったです。中間部のユーフォニアムも最高。

 

 指輪物語は1,3楽章のみの演奏。ガンダルフスメアゴルについての楽章ですが今回の見どころはなんといってもスメアゴルでのソプラノサックスのソロ。田中氏はおそらくグロー、フラッター、さらにはポルタメントといった特殊奏法をてんこ盛りで味付けを行っており、スメアゴルのえぐみがより強烈に表現されていました。中間部でのトロンボーンとのユニゾンも正確無比。tuttiでのキメがすこしふわっとした場面もありましたが熱のこもった名演でした。

 

 休憩をはさんでティケリのブルー・シェイズ。ブルースの影響を受けたという楽曲だけあり、クラシック以外からの要素を強く感じる楽曲。実演として聴くと想像以上に見て楽しい楽曲だったのだなと分かりました。特徴的なのは後半での長いクラリネットソロで、今回のTKWOでも立奏にて演奏。この曲も終盤のあおり具合が圧倒的でした。

 

 ベネットの古いアメリカ舞曲による組曲は様々な踊りを模したものでフェネルにより世界初録音されたもの。各スタイルをコンパクトにまとめたひとくちサイズの楽章が楽しめました。

 

 ここからはアンコールピース的な楽曲を連続で披露。グレインジャー以外はサーカスマーチ的な曲芸要素を含んだもので、純情ではないハイテンションによる演奏が繰り広げられました。美しきドゥーン川の堤よ土手よ、ヒズ・オナーはミッドウェストクリニックにてフェネルとTKWOが演奏した楽曲でもあり、どの曲も楽団員の思い入れが伝わってくるような好演。アンコールではティケリのシェナンドーでしっとりと終演となりました。特に静かな楽曲では演奏後に聴衆もしっとりと聴き入り、一呼吸おいてから拍手となって美しい時間が流れました。

 

 今回も楽しい演奏会でした。次は9月下旬。そのころ社会状況がどうなっているかといったところですが…。