東京佼成ウインドオーケストラ「第156回定期演奏会」

TKWOの2021年内の定期もこれで最後。いろいろあったとはいえ今年も1年早かったですね。

 

01.ローマの謝肉祭(H.ベルリオーズ/仲田 守 編)
02.クラリネットのための軍隊協奏曲(C.ベールマン/大橋晃一 編)
03.クラリネットのための第1狂詩曲(C.ドビュッシー/稲垣卓三 編)
04.交響曲 第3番 オルガン付き(C.サン・サーンス/大橋晃一 編)

 

 本日は2010~2012年にTKWOの首席指揮者をつとめたポール・メイエ氏による演奏。スケジュール発表のときは来日できるか心配しましたが、問題なく東京、大阪ともに演奏会は成功したようで本当によかったです。クラリネット奏者でもあるメイエの技巧を活かした「吹き振り」を含む充実したプログラムでした。

 

 まずはベルリオーズ「ローマの謝肉祭」。曲想にあったエッジのある派手なサウンドでした。メイエのクラリネット演奏にも通じるところのある、はっきりとした語り口で強弱やアクセントの付け方もわかりやすかったです。これは序曲のような表情がコロコロと変わるスタイルの楽曲に非常に適しているように思われ、飽きの来ない演奏だなと感じました。最後の和音の絢爛さも見事でした。

 

 指揮棒をクラリネットに持ち替え、吹き振りパート。ベールマンの「軍隊協奏曲」です。これは事前に調べても音源が全く見つからなかった曲。オーソドックスな古典的クラリネット協奏曲スタイルかなとは思いましたが、軍隊とつくように行進曲的なテンポと楽想が特徴的。クラリネットの名手が書いただけあり技工的で、更にそれを高速タンギングで演奏していくメイエは圧倒的でした。絢爛なベルリオーズのあとにこうしたまとまった響きに移行する楽団のサウンドの切り替えもすばらしかったです。

 

 吹き振りはソロの時はブレスなどのアクションでテンポを見せ、吹いていないところは軽く指揮をふってリードしていくという感じ。ヴィルトゥオーゾ系の独奏者らしい、テンポをぐいぐい前に引っ張っていく攻めたソロ演奏と全体をまとめる指揮が同居(というよりスイッチング?)しており、興味深かったです。

 

 「狂詩曲」はドビュッシーらしい、揺蕩うようなサウンドが印象的ですが、独奏を伴うこともあり比較的メロディがしっかり見える楽曲です。メイエはフランスらしく歌いすぎないお洒落さを常に漂わせており、過度に感情移入することがないような演奏に感じました。それでいて曲の集結部に向かっての躍動感はプレイヤーならではの感覚で熱が入っており、とても面白く聴くことができました。

 

 メインのサン・サーンス「オルガン付き」。まず特筆すべきは弱奏部の表現でしょう。今回のための編曲となっており、弦楽器の細かい同音連打を逃げずそのまま同音連打で表現。これはやろうと思っても演奏者全員の実力が高くないとなかなかできるものではなく、冒頭から圧倒されました。この細かい動きが表に裏にとあらわれてはヴェールのようにサウンドを覆う様は面白い響きでした。バランスコントロールも素晴らしく、弱奏でのパイプオルガンと管のコントラストもしっかり聴き取れました。

 

 そしてなんと言っても2部後半。パイプオルガンの主和音に導かれ奏される金管楽器のファンファーレの輝かしいこと!これぞ管楽器の専門たる吹奏楽の面目躍如であり、パイプオルガンがステージ上に2台出現したような感覚に襲われました。メイエの棒は勢い重視でやや振り切りかけるところもあったように感じましたが、最後の大団円まで緊張感を切らすことなく駆け抜けた名演でした。これはぜひとも音源化してほしいものです。

 

今期の定期演奏会もあと1回。次は2月です。
運営体制の変更など、なかなか厳しい状況とは推察しますが、演奏自体は毎回素晴らしいものを聴かせてくれています。今後も応援していきたいですね。