ピアニスト森下唯さんがプロデュースした連作演奏会の第3夜に行ってきました。
たいへん楽しかった。あと2日あるので、行ける方はぜひ行った方がよいです。
見てきました。面白すぎ。
— tk (@tk_saxo) June 13, 2024
これだけ濃い曲を並べておいて最後にラ・ヴァルスが持っていくのも凄すぎ。#IMAGINARC pic.twitter.com/3BFbON5sbw
■曲目
01.龍ノ経 ~二台のピアノに依る異類功徳譚~(平野一郎)
序:訪問、破:論議、間:絶語、急:乱舞、頂:歓喜、式:回向、結:祈願
02.ゲゲゲの鬼太郎(いずみたく/編曲:森下唯)
03.『もののけ姫』による2台のピアノのための幻想曲(久石譲/編曲:高橋ドレミ)
04.SF交響ファンタジー 第3番(伊福部昭/編曲:森下唯)
05.野蛮人の踊り(レオ・オルンスタイン)
06.Final Fantasy Crystal Chronicles(谷岡久美/編曲:森下唯・谷岡久美)
カゼノネ~約束のうるおい~怪物の輪舞~哀しい怪物~融合、降臨
07.SF交響ファンタジー 第1番(伊福部昭/編曲:森下唯)
08.ラ・ヴァルス(モーリス・ラヴェル)
・龍ノ経 ~二台のピアノに依る異類功徳譚~
Piano1:森下唯 Piano2:江﨑昭汰
同音のオクターブによる連なりからだんだんとフレーズが見え隠れし、しだいに大きな濁流となって何度も押し寄せ、そして去ってゆく。30分に渡る大音楽絵巻を堪能しました。ピアノという西洋の楽器からここまで日本的などろりとした感触を描けるとは。初演の曲なのでもちろんどんな内容かははじめて知るわけですが、楽章の切れ目と思われる箇所でのライトの色の変更などもうまく作用し、より曲に入り込みやすかった気がします。
・ゲゲゲの鬼太郎
Piano1:高橋ドレミ Piano2:森下唯
よく知られるあのメロディが様々なスタイルで展開される楽しい曲。といいつつもバロックであったりロマン派であったりテクニカルでもあり、終盤にはジャズ風も飛び出し…とても面白く聴きました。ラフマニノフっぽいところなどかなり好みでした。
・『もののけ姫』による2台のピアノのための幻想曲
Piano1:高橋ドレミ Piano2:榎政則
アシタカせっ記、もののけ姫、アシタカとサンというメドレー形式で、それぞれのメロディをとても大切にしたつくり。2台のピアノを響きの補強として使ったり、あるいは抜いたりと繊細なコントロールが美しかったです。
・SF交響ファンタジー 第3番
Piano1:高橋ドレミ Piano2:江﨑昭汰
2台ピアノの面目躍如。クラスターなどを駆使した大スペクタクル音響が繰り広げられました。伊福部の音楽はこうして聞いてみると力強いオスティナートなどに支えられつつも和声的には素直で、そのぶん現代的な曲よりもすっきりと響くのだなという発見もありました。
・野蛮人の踊り
Piano Solo:江﨑昭汰
短いながらも濃い楽曲。予測不可能なフレーズがあれよあれよと飛び出し、打弦楽器であるピアノらしいリズミカルな面がよく出ていました。
・Final Fantasy Crystal Chronicles
Piano Duet:江﨑昭汰&榎政則、高橋ドレミ&森下唯
ピアノコレクションの中から連弾曲を4曲。主題歌であるカゼノネとバトル曲という組み合わせでした。このゲームは本当にサントラが良くて、当時何度も何度も聴いていたのでこうして聴くことができ感無量です。特に後半のボス曲での森下さんのタイム感にはゾクゾクさせられました。
・SF交響ファンタジー 第1番
Piano1:榎政則 Piano2:森下唯
ゴジラを含む最も有名なSF交響ファンタジー。ここでも森下さんのテンポ感がとにかく素晴らしく、楔を打ち込むようなタイトな刻みに乗せて有名メロディやオスティナートが展開されていく様は圧巻でした。
・ラ・ヴァルス
Piano1:森下唯 Piano2:高橋ドレミ
ここまでほぼ日本人作曲家の、しかも土俗的な味わいを含む作品ばかりを並べておいて、最後はフランスもの。しかしそのラヴェルがある意味で一番暴力的かも?とさえ思わせる大熱演でした。ワルツの情景が見えてきてからのメロディの美しさに酔いしれたかと思えば終盤にかけての崩壊、終結へのスパートっぷりときたら。完全に参りました。
期待以上の楽しさでした。選曲のユニークさもさることながら、いい意味で部活のように演奏者たちがチャレンジングな姿勢で楽しんでいるように見えたのも良く、こちらも面白く見ていることができました。ステージ上に配置されたキューブへのライティングなども含め、演奏だけでなくステージ全体で演出しようとしていたのも好印象で、「エンタメを振り切るまでやればアートになる」という感覚を得ました。
マイクも立っていましたし、これはコンプリートセットで音源化、ぜひ期待したいですね。私は仕事の都合などもありこの第3夜しか見られないので…。
公演は土曜まで、あと2日あるので、もし行ける方はぜひおすすめします。ピアノって面白いんだなと思えること請け合いです。