東京佼成ウィンドオーケストラ「第150回定期演奏会」

TKWOの定期演奏会に行ってきた!

 

f:id:tk_saxo:20201003210719j:plain

01.吹奏楽のための「クロス・バイ マーチ」(三善 晃)

02.われ死者の復活を待ち望む(O.メシアン)

03.カルメン・ラプソディ~サクソフォン クヮルテットと吹奏楽のための~(長生 淳)

04.三つのジャポニスム(真島俊夫)

 

奏者が舞台に上がると大きな拍手があがった。コンサートホールでの吹奏楽を待ちわびた聴衆と奏者たちによるあたたかい空気感だ。

 

クロス・バイ・マーチは先日リリースされたセッションレコーディング版に比べて音楽的な揺らしが多く、三善の弟子としての沼尻の説得力ある解釈が聴けた。全体的なサウンドには多少の力みがあったように感じるが、多幸感にあふれたよい演奏だった。

 

メシアンではサクソフォン類が退場し様々な金属打楽器(大小多数の銅鑼など)が追加。音響的にとても面白い演奏だった。金管によるモノフォニックな動き(グレゴリオ聖歌的)に導かれて複雑な響きと銅鑼の根色が溶け合い、とても神秘的なサウンドがつくられてゆく。左右に配置された銅鑼の強烈なクレッシェンドにより空気が銅鑼に支配される感覚はやはり現場にいないと味わえないものだ。大きなスケールと緊迫感の両立した面白い演奏だった。

 

カルメン・ラプソディはかつて長生がトルヴェール・クヮルテットのために書いたメドレーを吹奏楽用に再構成したもの。ただし吹奏楽編成を活かすため長大なクレッシェンドを用いたものやポップス的奏法を用いたものなどのいわゆる飛び道具的な引用がかなり追加されており、感覚としてはもはや別物に仕上がっていた。サクソフォンパートの演奏はさすがで、トルヴェール的な遊びを踏まえつつも歌い方などに個性が見え面白く聴いた。中でもジプシーの歌での栃尾さんは素晴らしかった。

 

ただ、トルヴェール版のバランスが良すぎたからこそ気になった面だとは思うが今回はギミックがややわざとらしすぎたように感じた。気づかない人は気づかなくても楽しめる、というバランスがこういった冗談では好みなのだが、今回はギミックごとに「ジャン!」と大見得をきっていたのでその冗談に乗り切れないと寒く感じてしまう瞬間があった(あ、何かギャグを言ったんだな、ということだけはわかるがギャグが理解できなかったとき、のような空気感を感じてしまった)。

 

三つのジャポニスムは全編とても素晴らしかった。速めのテンポ設定で進んでいき、鶴の羽ばたきなどの効果音がかなりクローズアップされ映像的な効果を呼んでいた。2楽章の各ソロも素敵で、ソプラノサックスの難所もばっちり決まっていた(この難所、作曲者もあまりに難しいと思ったのか、のちの「鳳凰が舞う」では同じパッセージをフルートに担当させていた)。

祭りでのパーカッションも好演。特にティンパニは場面によってマレットを持ち替え、ティンパニ的な音程を出すシーンと和太鼓的なアタックを出すシーンを演じ分けていて見事だった。本当に和太鼓の音がしてびっくりした。

全体的に映像的、色彩豊かな解釈になっていてかなり新鮮で面白い演奏だった。

 

久しぶりの実演だったが、やはり生で演奏を聴くと気付くことが沢山ある。ライブっていいなとしみじみと感じた。