エンダーケンメント[ブラック・メタルとグラインドコアの暴虐性を掛け合わせたサウンドと美しすぎるメロディ|CD(日本語解説書封入/歌詞対訳付)]
- アーティスト:アナール・ナスラック
- 発売日: 2020/10/02
- メディア: CD
01.Endarkenment
02.Thus, Always, to Tyrants
03.The Age of Starlight Ends
04.Libidinous (A Pig with Cocks in Its Eyes)
05.Beyond Words
06.Feeding the Death Machine
07.Create Art, Though the World May Perish
08.Singularity
09.Punish Them
10.Requiem
毎回素晴らしいクオリティの狂気を届けてくれるAnaal Nathrakhの新作がリリースされた。イギリスの2人組バンドで、ドラムなどは音源では打ち込み、ライブではサポートメンバーを入れている。ジェットコースターのように激しく展開する楽曲が特徴で、ブラックメタルやグラインドコア的なエクストリームメタル由来の暴力性とメロディアスな抒情性(高らかに歌い上げられるクリーンヴォーカル)の対比が心地よい。来日も3回ほどしており、私も1回目、3回目の公演は観に行った。
今作だが、まず冒頭の「Endarkenment」からキラーチューンだ。キメのきいたリフももちろんだがキャッチーに展開するサビの破壊力が凄まじい、今までも歌メロは覚えやすいものが多かったが今作はワンランク上という印象だ。「The Age of Starlight Ends」でも抒情的なサビメロがあり、さらに続いてのギターソロが素晴らしい。ここでもメロディが大切にされておりクライマックスへの盛り上がりを演出している。
今作では歌詞(の一部)と楽曲に対するコメントが付記されているのも特徴のひとつだ(今までは歌詞は記載されないのが通例だった)。英語が母国語でない私にとっては「記載されていないエクストリームメタルの歌詞を耳だけで聴きとる」のはまったく不可能だったのでこれはうれしい。「Libidinous (A Pig with Cocks in Its Eyes)」は裏ジャケット(流通ジャケをはがすと衝撃的な本来のジャケットが出現する)の絵を表したタイトルになっており、本作の核のひとつと言えるだろう。現代社会への痛烈な批判になっている。
「Beyond Words」ではVoヴィトリオールの表現力に圧倒される。低音から高音まで幅広い音域でのシャウトを使い分けており発声もブラックメタル的であったりと多彩だ。続く「Feeding the Death Machine」ではクリーンでのサビが非常に印象的。メロディだけでなく裏のギターも耳に残るメロディを奏でており、サウンドはエクストリームだがさながらオーケストラを聴いているような感覚にさせてくれる。今作は音もとても良く、混沌になりがちなサウンドがしっかり整理されていると感じる。各楽器がどういったメロディを奏でているかがよくわかるので楽曲の理解もしやすい。
ヴェルディのレクイエムを大胆に引用した「Requiem」でアルバムは幕を閉じる。ここまで現代社会に対しての批判を浴びせてきた作品の最後がレクイエムというのも一貫していて素晴らしい。過去最高に「多くのリスナーに届きやすいサウンド」で固めてきたうえでのこのメッセージ性は非常に効果的だ。ちなみに、日本版ボーナストラックには1曲目の「Total Necro Version」なるものが収録されており、ノイズまみれでめちゃくちゃうるさい仕上がりになっていてカッコいい。これは日本版がおすすめだ。
今作も素晴らしいアルバムだった。落ち着いたらぜひまた来日してほしいものだ。