People In The Box「15th anniversary – People In The Boxの大団円 〜『Camera Obscura』release tour〜 @ ヒューリックホール東京 2023/05/21」

久しぶりのPITBのリリースツアー。初日に行ってきました。

 

■セットリスト

01.螺旋をほどく話

02.スマート製品

03.聖者たち

04.自家製ベーコンの作り方

05.町A

06.あなたのなかの忘れた海

07.戦争がはじまる

08.DPPLGNGR

09.旧市街

10.石化する経済

11.机上の空軍

12.カセットテープ

13.中央競人場

14.水晶体に漂う世界

15.スルツェイ

16.ヨーロッパ

 

最新作「Camera Obscura」は前のブログでも触れたとおり過去最高に練りこまれたアルバムで、Vo波多野もギターとキーボードを使い分けていましたが、なんとこの日のライブでは全編通してギターのみ使用。スリーピースのシンプルな編成で各楽曲が演奏されました。

 

冒頭3曲で感じたのは会場の音の良さと演奏のタイトさ。

もともと演奏力には定評のあるバンドですが、より一層引き締まった、なおかつ自由度のある演奏に感じました。各楽器のサウンドもさすがで、「螺旋をほどく話」などの綺麗なサウンドから「聖者たち」でのメタリックなサウンドまで幅広く、かつ各パートがしっかり聞き分けられたのも嬉しいところでした。

 

MCではみんな話したいことがたまっている雰囲気で、いろんな話題にとびながらもそれぞれのおちゃめさがよくでていてPITBの心地よい空気を感じました。配信で聞いた人は?という質問にはほぼ全員が挙手したのに対し、CDを買った人というところでは少な目だったので、ライブに足を運ぶような熱量のファンでもCD購入層は減っているのだな…とひしひしと感じました(ライブ後物販で買う予定だったのかもしれませんが…)。

 

そういう意味では「自家製ベーコンの作り方」の最後のCD版だけのパートは初めて聴いた人も多かったのでしょう。おっ!という空気を感じました。「あなたの中の忘れた海」は今まさに聴きたかった楽曲で嬉しかったです。

 

DPPLGNGR」はやはりドッペルゲンガーと呼称するよう。ここらへんから演奏がより一層凄みを増したと思います。まず冒頭のベースフレーズ(音源だとベースシンセっぽくも聞こえる機械的なフレーズ)を人力で繰り返し続けたり、その後のヘヴィなリフの攻撃力の高さは特筆で、音源そのまま(現場では音の圧があるので体感はそれ以上)のサウンドでした。鍵となっているように感じたのはDr山口で、すべての打音が確信に満ち、なおかつすばらしくタイト。音源でも感じたカッチリしたビートとゴーストの使い分けが存分に堪能できました。そのサウンドで鳴らされる「旧市街」も圧巻のひとことで、例の変拍子のキメも自然体で呼吸するかのようにバシバシと合っていくのは凄すぎて笑えてくるほどでした。

 

過去曲の中でも「机上の空軍」はかなり音源と違う印象に。少しテンポが抑え気味になって、広がり感が強く出ていたようにも思います。「カセットテープ」は最後のドッペルゲンガーパートなしで爽やかに終了。やっぱりいい曲ですね…。純粋にアルバム後半の曲は感動します。

 

物販MCでも話が広がる広がる。シャツの「ネイチャー」に対し、「光なき漆黒の黒が自然という人もいるかもしれない」などといつもの中二ネタも絶好調。Dr山口は40歳ということでMCでも体調の話が増えてきていてなるほど…という感じですね。トートバッグの話から地元のスーパーの雑談をしたりと楽しそうでこちらも沢山笑いました。フライトタグや缶バッジをコンプした人~、という呼びかけにはほぼ手は上がらず、そうだよね、結構ハードルあるよね…などと。缶バッジは恒常の通販にしませんか…?ちょっとずつ集めたいので…。

 

「中央競人場」は音源では飛び道具的サウンドが多かったですが実演でのシンプルな編成だとまた味わいが違う感じ。Ba福井のコーラスがよく効いていました。「水晶体に漂う世界」では冒頭はギターのかき鳴らしの裏でベースのリフが断片的に演奏され、少しの間それを繰り返してから楽曲に突入。ライブでもベースの活躍の印象は変わらずで、繰り返しのフレーズの裏でベースとドラムの味付けがだんだんかわっていくのは絶品としか言えませんね。Camera Obscura曲がすべて披露された後はなんと「スルツェイ」。この曲では「まだまだ君は生きなさいって」の後のドラムが凄かった!まるでドラムソロのように激しく叩きまくりつつもリズムは超タイト。めちゃくちゃしびれました。

 

最後はいつもの「ヨーロッパ」。ドラムのリズムパターンを繰り返す間にギターとベースのチューニングなどが行われ、準備ができたら曲に入るという流れでしたが、ドラムのみのパートがこれも絶品で、シンプルなパターンを続けつつ拍を抜いたり、裏にずらしたりというDJプレイ的な遊びを人力でやるのは恐れ入りました。ここでもタイトな演奏が効いていて、止まった瞬間の緊張感がすさまじかったです。ベースが入ると同時にスネアのゴーストが入り始め、繊細なコントロールも心地よかったですね。ポエトリーの「やあ、みんなどこから来たんだ」は何度聴いてもライブでは染み入ります。「君の胸騒ぎが本当になるといいな」の後の轟音パートではかつてのようなハードな轟音も感じさせつつ、余裕もある演奏で、これまで聴いたヨーロッパの中でもトップレベルの名演だったと思います。

 

全編通してただただ心地よい演奏に酔いしれているうちに終わってしまったという感じで、大満足でありつつももっともっと聴きたいという感覚になりました。7月の最終公演も同じ会場で行われるので、ぜひ見にきたいですね。チケット…当たってくれ…。